Guillermo del Toro監督の新作を観てきた。邦題「パンズ・ラビリンス」は、英語でのタイトル「Pan's Labyrinth」のカタカナ表記。
監督のこれまでの作品が、「Mimic」だの「Balde II」だの「Hellboy」といったB級ノリ・ホラー風味の作品だったし、この新作も「ダーク・ファンタジー」という前評判を聞いていたのだが、実際は、「物語」の存在理由を問いかける、ずっしりと重く心に残る素晴らしい作品だった。
妖精から、実は魔法の王国の王女だと告げられ、それを証すための三つの試練を課せられる少女が主人公、と表現すると、確かにファンタジーなのだが、この魔法の王国は、ディズニーが描くような殺菌処理済みプラスチック製の物ではない。泥と血にまみれ、異形の物が跋扈するおどろおどろしい所だ。時には、やり過ぎとも思えるグロい描写もあり、子供が見たら絶対トラウマになりそうだ(PG12指定)。
フランコ独裁政権下のスペインを舞台にした物語は重層的な構造を持つ。現実の世界では、フランコ政権軍とゲリラとが凄惨な戦いを続けており、ここでも残酷な描写が続く。ファンタジーと現実とが絡み合う中、少女には過酷な運命が待ち受ける。
劇中「現実は厳しいもので、おとぎ話なんかじゃない」という意味の台詞が語られる。しかし、それでも人々は生きていく上で「物語」を必要とする。残酷描写は、そのことを、観客に痛みを伴って突きつけるために必要だったのだと思う。
それにしてもラストは、これしかないような終わり方だと思うけど、かなりヘビーだった。