IN/OUT (2016.1.17)

新譜の出来の良さに、これからの大復活を確信していた途端に、訃報に接するとは。David Bowie。早過ぎる…。


in最近のIN

"It Follows"16.1.11

米国製のホラー映画を観てきた。低予算で有名俳優も出演していない、一見、B級の作品だが、欧米では、多くのメディアで年間トップテンに選ばれるなど高評価、中でも、Quentin Tarantinoが絶賛した作品なのである。実際、そうした評判も納得の、傑作ホラー映画だった。

その呪い(のようなもの)は、性交渉によって感染する。感染した者は、人の形をした「邪悪な何か」に追いかけられ、捕まると殺されてしまう。ただし、「邪悪な何か」は歩いて近寄ってくるだけなので、走ったり、車で逃げれば、とりあえずの時間稼ぎは出来る。という設定。科学的あるいは論理的な説明は無しだ。

主人公の女性は、付きあって間もないボーイフレンドから、「それ」を引き継いでしまう。あるときは老女の姿で、別のあるときは巨漢の男性の姿で、「それ」は近寄ってくる。この、人の姿をした何かが歩いてくるだけ、というところがミソ。ぱっと見では、画面に映っているのが、本当にそこを通りかかっているだけの人なのか、あるいは「それ」なのか分からないのだ。これが、ジリジリと怖い。

また、その呪い(のようなもの)が、性交渉によって次の被害者に引き継がれていくという設定が、ティーンエイジャーである主人公たちの人間関係と絡み合うことで、ホラーストーリーに青春譚という要素が加わってくるところも憎い。

シンセを多用した音楽(低予算故に、オーケストラが雇えなかったのかも)、舞台となった(微妙にすさんだ感じの)デトロイトの町並み、粗っぽいように見えて緩急自在に計算されたカメラワーク、どれも効果的に作用して、一見、ありふれた都市伝説風の物語を、とてつもなく怖い映像体験に仕上げている。

個人的には、ゆっくりと、しかし、休むこと無く執拗に歩き続ける「何か」に後を追われ、追いつかれたときが死ぬ時、というのは、私がかなり小さい子供の頃に抱いていた想像上の怖い物、そのものだったりする。この歳になって、子供時代の不条理な妄想と、その恐怖の感覚をありありと思い出すとは…

スプラッター描写や、いきなり何かが飛び出してきてドッキリみたいな下品な怖がらせ方を使わず、新しい着眼点で恐怖を煽る、予算はB級でも、志の高いホラー映画だと思う。お勧め作だ。


「ワイン展 -ぶどうから生まれた奇跡-」 @ 国立科学博物館16.1.16

国立科学博物館国立科学博物館で開催中の、ワインをテーマにした展覧会を観てきた。

ブドウ栽培、ワインの製造過程、ワインの歴史、最古の日本産ワインや沈没船から発見された170年前のシャンパーニュの実物、デイヴィッド・リンチやピカソなど有名アーティストが手がけたラベルなどなど、多角的にワインを見せる、中々に充実した展覧会だった。ワイン醸造における乳酸菌や亜硫酸塩の働きなど、新たな知識を得ることもできた。

面白いと思ったのは、ワイン製造の過程を紹介するビデオの多くが、「撮影協力:国税庁」となっていたこと。酒税の確保のため、酒類業の発達などに携わることも国税庁のお仕事なのね。

こうした大規模な展覧会だと、会場の最後のミュージアム・ショップで大量のお土産が展示されているのが常ではあるが、この「ワイン展」は、その規模が尋常じゃなかった。ワインショップ・エノテカが出店。ほとんど、エノテカ上野店の趣で、大量のワイン、おつまみ、ワイングッズを販売。国立の博物館でここまで…、というのが、一番の驚きの展覧会ではあった。



最新にして最後のアルバム「★」は、自分の死期を悟った上で、製作されたという話を聞いて、いよいよBowieの凄さが伝わってきます。
溢れかえる追悼コメントを見ると、信頼できる音楽評論家と、自分とは合わない評論家がはっきり分かるな、ということも感じる、今日この頃です。