IN/OUT (2015.12.6)

町中、イルミネーションが賑やかな時期になりました。LED電球の普及で、消費電力が低くなったこと、さらに、発熱も減ったので樹木に与える悪影響も減ったことによって、ここ数年、益々、イルミの数は増えているようです。


in最近のIN

Tal Wilkenfeld @ billboard-LIVE 東京15.12.3

オーストラリア出身。現カリフォルニア在住のベーシスト、Tal Wilkenfeldの公演を観に、ビルボードライブ東京へ行ってきた。

1986年生まれの、29歳。Jeff Beckのバック・バンドのベーシストに抜擢され注目を集めたのが2007年。私は、その時の模様を映画館で鑑賞して以来、気になる存在だったのだ。因みに、彼女はその後も、Herbie Hancock、Lee Ritenour、Trevor Rabin、Steve Lukather、Jackson Browne、Totoなどなど、ジャズ、フュージョン、ロック、R&Bなど多岐にわたる分野の錚々たるミュージシャンのアルバムに参加している、超売れっ子ベーシストなのだ。

今回の公演は、バックに、ドラムス、ギター、キーボードの三人のメンバーを従え、彼女がベース(時折、アコースティックギターも披露)とヴォーカルという布陣。来年に発売される新アルバムからの曲中心のライヴ(彼女曰く、"sneak preview")だが、殆どが歌モノ。ベーシストのライヴということで、インスト中心かと思っていたので、ちょっと意外だった。

Jeff Beckのバックで初めて見たときに比べると、すっかり大物感も出た来た彼女。その歌声は、なかなかどうして、堂々たる物。歌唱に際立った個性が有るわけでは無いが、安定した声量と音程で、しっかり聴かせる。曲調は、カントリー・ロックにグランジ風味を交えたような感じ。バックのドラマーが、中々の曲者で、ドラムセットに毛布を被せて、その上からマレットで叩くなど、様々な手管を繰り出す。ギタリストは、少しDavid Gilmourを思わせる音色と泣きのフレーズで攻めてくる。

ベース・プレイの方は、比較的、おとなしめかと思っていたが、終盤の曲では、間奏で怒濤のソロ、さらにドラマーとの超絶掛け合いと、これまた、たっぷり魅せてくれた。

最後は、バンド・メンバーが、ギターやタンバリン、Talちゃんも黄色いマラカスを持って、歌いながら客席へ。私が座っていた二階席も隅々まで練り歩くサービスぶり。聴き所たっぷりで、かつ、楽しいライヴだった。

それにしても、Tal Wilkenfeld、演奏の迫力にもかかわらず、相変わらず、タルちゃんと呼びたくなるようなキュートさだ。美人というよりも、愛嬌たっぷり。悪く言えば、おじさんキラー。今回のライヴでも、男性三人のバックバンドと、しっかり、仲良し感が漂っていたし、観客席も、恐らく、Jeff Beck絡みで彼女を知って籠絡されてしまったと思しきおじさん達多数(私もだ)。まあ、最も籠絡されちゃったのが、Jeff Beckご本人かもしれない。


"O Estranho Caso de Angélica"15.12.5

ポルトガルの映画監督、Manoel de Oliveiraの作品を見てきた。邦題は「アンジェリカの微笑み」。

Oliveira監督は、残念ながら、今年の4月に亡くなられたのだが、享年106歳。最後まで現役監督として映画を撮り続けていた彼の、2010年、御年101歳の時の作品である。日本公開が中々されず、幻の作品とまで言われていたものだそうだ。因みに、100歳の時に撮った前作は、2010年、「ブロンド少女は過激に美しく」の邦題で日本公開され、私も観に行っている。

脚本は、監督が1952年に執筆しながら、映画化にこぎ着けずにいたものを、ついに完成させたものだそうだ。田舎町に住むカメラが趣味の青年の元に、ある夜、豪邸から使いの者が来、死んだ娘の写真撮影を依頼される。訪れた屋敷で、ベッドに横たわる美しい女性の死体にピントを合わせた時、彼女は突然目を開き、ファインダー越しに彼に微笑みかける。それ以来、青年は、彼女の幻影に取り憑かれ…、という幽霊譚である。

非常に、クラシックな怪談なのだが、展開は淡々としたもので、ショックシーンなどは皆無。彼が見る幻影の中で、二人、空中を漂うシーンなどは、敢えて、最新のCGなど使わず、モノクロ・サイレント映画のコマ落としのような特撮。監督が紡ぎ出す、悠然とした物語のテンポは、正直、私には眠い。

ということで、終始、睡魔との戦いを強いられる映画だったのだが、それでも、特筆すべきは、映像の美しさだ。死せる美女=アンジェリカの微笑みは、本当に現実離れした美しさだし、一つ一つのシーンが、計算され尽くした構図と光の加減で、実に綺麗。それだけで、十分に価値のある映画体験だった。



ただ、最近のイルミネーションは、あまりにもあちこちに有りすぎて、ちょっと過剰な気もします。

そんな中、タルちゃんの公演では、ドラムセットの色が緑。アンコールラストの曲では、タルちゃんが弾くベースも緑。一方、キーボードは赤いボディが目立つNord。さらに、ドラムの脇に立てかけられたギターも赤。ということで、見事にクリスマス・カラーになっていました(多分、狙った配色だと思う)。これぐらいの、さりげなさが良いですな。