IN/OUT (2010.10.10) |
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来年の杉花粉飛散量が、今年の5倍以上、関東では8倍、近畿では10倍となりそうで、過去最悪との報道が早くもありました。どうしたもんだか… 最近のIN"Singularidades de uma Rapariga Loura" (10.10.9)ポルトガル映画を観てきた。英語タイトルは"Eccentricities of a Blonde-haired Girl"。これに対して付けられた邦題が「ブロンド少女は過激に美しく」。内容を正確に表しているかどうかはともかく、オリジナルよりも良いタイトルだと思う。 列車で隣り合った女性に、自分の衝撃的な体験談を話す主人公。語られるのは、彼の陥った盲目的な恋の話。ポルトガルの小説家エサ・デ・ケイロスの短編小説を映画化したもので、上映時間は64分間。原作は未読だが、おそらく、忠実な映画化ではないだろうか? 観る者に行間を読むことを強いるような、余分なものを削ぎ落とした描写と、見終わった時に残る奇妙な余韻。まさに、良く出来た短編小説を読んだみたいな印象だ。小説の映画化というと、短編に過剰な装飾を施して水増ししたり、長編を無理矢理刈り込んだりしたものが多い中、割り切って64分間に収めたところに、Oliveira監督の良識を感じる。 ポルトガルの宝とまで評されるこの監督の作品を観るのは初めてだったのだが、人物の表情や台詞ではなく、画面の構図で多くを語るタイプのように思えた。実際、上映後のトークショーでの話によると、出演者への指導は、もっぱら動きと立ち位置についてであり、演技的な指導は無かったらしい。 そう、この映画、日本公開の初日・初回を日比谷まで観に行ったのだが、この回に限り、特別に本編上映後、「オリヴェイラ監督お祝いイベント」が設けられ、監督に密着したドキュメンタリー番組の上映とトークショーが開かれたのだ。新作が封切られたから言って「お祝い」と称したイベントを行うのは、この映画の撮影中(2008年)、監督が100歳(!)の誕生日を迎えたからだ。そして、この12月11日には102歳の誕生日を迎えられるのだが、今年も既に新作を発表しているのである。1908年生まれと言うことは、黒澤明よりも2年先に生まれたことになる。その歳で、いまだに毎年のように新作を発表し続けているのだ。10分ほど上映された密着ドキュメンタリーでは、100歳の誕生日パーティーの様子と、この映画の撮影風景が映っていたが、全く元気そのもの。せいぜい70歳代にしか見えない。トークショーではこのドキュメンタリー番組の演出を担当した小林三旅氏と日大芸術学部教授の古賀太氏が、監督について語るという趣向。 さらについでに、あまりに上映時間が短いと判断されたのか、本編前に(これは、初日・初回限定ではなく)Jean-Luc Godardが長編デビュー前に撮った短編映画 "Charlotte et son Jules"(14分。主演はJean-Paul BelmondoとAnne Collette)も併映。これ、あまり宣伝されていないが、かなりの豪華二本立てかも。 いずれにせよ、「100歳越えの人が撮った」という情報を抜きにしても、ユニークな映画だった。 "Knight and Day" (10.10.10)Tom CruiseとCameron Diaz主演の映画を観てきた。 超大物二人が主演ということから予想がつくとおりの、いわゆる能天気ハリウッド娯楽大作。中身は超薄っぺらだ。その存在がまことしやかに噂されている、ハリウッドのシナリオ自動作成ソフトウェアに、"Cruise"、"Diaz"、"Love Comedy"、"Action"の四つのキーワードを入力して出来上がったような脚本である。 ただし、その仕上げっぷりが、もはや職人仕事の域に達している。最近ではトークショーでの奇行など、プライベートでの変人ぶりが話題になることが多いTomのキャラクターの活かし方もツボを押さえているし、何より、この手のスケールの大きなスパイアクションにありがちなご都合主義=世界中をいとも簡単に飛び回り、どんな危機も切り抜けてしまうところを、画期的な手法で描くことで押し通すアイディアが秀逸(元のアイディアは、「特攻野郎Aチーム」で、飛行機嫌いのコングを無理矢理飛行機に乗せる毎度お馴染みのシーンか?)。 また、主演の二人は、超大物とはいえ、既に若者とは言えない年代になっており、アピールする観客層もある程度上の世代になっているのだろう。それを見越したかのような音楽の使い方=Hall & Oatesが、重要な所で使われるのも、巧みな戦略だと感じた。「ブロンド少女」とは対極にあるような作品だが、これはこれで楽しめたのである。 四季があること自体は風情があって良いのだけど、9ヶ月を秋にして、春・夏・冬は1ヶ月ずつで十分と思う今日この頃です。 |