IN/OUT (2015.11.15)

近所の運河にユリカモメが帰ってきて、そろそろ冬支度の今日この頃です。


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"The Man from U.N.C.L.E."15.11.3

Guy Ritchie監督の新作を観てきた。オリジナルは1960年代の同名TVシリーズ。日本では「0011ナポレオン・ソロ」のタイトルでお馴染み、と言いたいところだが、「スパイ大作戦("Mission: Impossible")」や、「宇宙大作戦("Star Trek")」同様、今の若い人は知らないんだろうなぁ。で、今回の映画版の邦題は「コードネーム U.N.C.L.E.」。ただし、映画で描かれるのは、国際組織U.N.C.L.E.="United Network Command for Law and Enforcement"発足の前日譚である。

今年は、"Mission: Impossible - Rogue Nation""Kingsman: The Secret Service"と、いずれもレベルの高い作品が公開され、さらに年末には007の新作"Spectre"の公開も控えるというスパイ映画の当たり年だが、今のところ、私は、この作品が一番好きだ。というか、ここ数年で公開されたアクション系映画の中で、最高だと思う。(因みに、"Kingsman: The Secret Service"の監督、Matthew Vaughnは、TV版「0011ナポレオン・ソロ」の主役を演じたRobert Vaughnと縁のある人物なのだ

とにかく、オープニング・シーンからラストまで、途中で一切中だるみすることなく、スピード感を維持したままで物語を語りきるGuy Ritchie監督の演出手腕が冴えまくりだ。画面分割や、時間軸のずらしなど、凝った手法を使いながら、それらが全て、独りよがりにならず、画面の中で何が起こっているのか観客に十分に理解させるため、というのが素晴らしい。

役者陣も充実。主役のHenry Cavill、Armie Hammerのコンビの息もピッタリ。バディ・ムービーの王道だ。さらに、ヒロイン Alicia Vikanderはキュートだし、Hugh Grantの英国紳士らしい存在感も楽しい。

しかも、この映画は、オリジナルのTVドラマと同様、米ソ冷戦下の1960年代を舞台にしているところが素敵だ。同じく1960年代のTVドラマを原作にした"Mission: Impossible"や、1950~60年代に書かれた小説が原作の007は、舞台を現代にして、最新のハイテクを駆使したりもしているが、やはり、こういう小洒落たスパイ映画は、冷戦下が似合う。

ということで、今年の私的No.1映画の筆頭候補に躍り出た、快作だ。



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"The Monuments Men"15.11.9

George Clooneyが、自ら監督・脚本・主演を務めた映画を観てきた。邦題は「ミケランジェロ・プロジェクト」。この言葉、映画の中には一切出てこない。主人公達のチーム名は、あくまでも"Monuments Men"なのだ。さらに、邦題の元となったと思われる、ミケランジェロの聖母子像は、劇中では"Madonna of Bruges"という名前で呼ばれている訳で、何とも馬鹿な邦題だ。

第二次大戦末期、ナチスが略奪した美術品を保護・奪回する特殊チーム"Monuments Men"の活躍を描く映画。チームを構成するのは、美術の専門家7人。兵士としてはど素人の中高年というのが、面白いところ。演じるのは、George Clooneyの他、Matt Damon、Bill Murray、John Goodmanといった、芸達者で味のあるおじさん達。実話に基づいたという題材も、出演者も、期待できる映画だと思ったのだが…

小粋な笑いを挟み込むところは、George Clooneyのセンスの良さが垣間見えるし、個々のエピソードも面白いのだが、そういった良い要素がぶつ切れで挿入されるだけで、全体を通じた映画としてのリズムが悪すぎると感じた。

結局、George Clooneyは、映画好きの良い人、というのは伝わってきたんだけどなぁ…



街のあちこちに、イルミネーションも灯りはじめ、そろそろ年末感も漂いだしてきましたねぇ。