IN/OUT (2014.3.16)

玄関の蛍光灯が切れたり、掃除機の電源が入らなくなったり、なんだか急に身の回りの物が壊れ始めた今日この頃です。


in最近のIN

"All Is Lost"14.3.15

Robert Redfordの最新主演作を観てきた。

インド洋を単独航海するヨットが、漂流していたコンテナと衝突。船体に穴が空き、浸水。無線機なども壊れてしまう。そこに襲いかかる暴風雨。たった一人で海を渡っていた主人公は、生き延びるため懸命の努力をするが…、というストーリー。それ自体は、"Life of Pi"や"Gravity"などの傑作映画とも共通する、まあ、良くあるパターンだ。しかし、この映画は、かなり特殊な作品に仕上がっている。

まず、漂流する主人公がRedfordただ一人だということ。事故の前後の描写もなく、映画に登場する人物は、本当に一人だけなのだ。さらに、登場人物だけで無く、台詞も音楽も背景説明も、徹底的に削ぎ落とされている。登場人物が一人なのだから、会話が無いのは当然としても、彼は、独り言すらほとんど発しない。ナレーションや字幕も皆無。主人公が、どのような人物で、どういう経緯で航海に乗り出したのかなど、何の説明も無い。エンド・クレジットに映されるRedfordの役名は、"Our Man"。名前すら無いのである。そして、音楽。海の美しさや恐ろしさを表現する静かな環境音楽的なオーケストラの劇伴は流れるのだが、何かを盛り上げるような使われ方は一切されない。イベントやアクションが起こったときには、敢えて音楽を入れず、自然音を効果的に使っているようだ。

ほとんど無言のまま、生きるための奮闘を続ける"Our Man"。撮影時、76歳だったRedfordは、水の中に投げ出されるような過酷なシーンもこなし、台詞抜きで圧倒的な存在感の演技を見せつける。

このような演出の結果、途中、睡魔に襲われることは覚悟して観る必要がある映画だ。ただし、ラストに待つ、見事に構成された美しいシーンを観るだけで、睡魔との戦いは報われるのである。



それなりに年数が経ったので、取り替えるなり、修理を依頼するなり、買い換えるなりしないといけないと思いつつ、とりあえず、電源をガチャガチャやったりして、騙し騙し何とか使い続けようとするところが、我ながら、面倒くさがりというか、せこいというか…