IN/OUT (2013.3.17)

今年の花粉症はきついっす。関東では、杉が今シーズン中に放出する花粉の60%が飛散済み=既に花粉シーズンは後半戦に突入というニュースがあり、少しは希望の火も見えてきましたが、先はまだまだ。


in最近のIN

"The Crimson ProjeKct - special guest Anglagard" @ CLUB CITTA'13.3.16

The Crimson ProjeKctのライヴを観に、クラブ・チッタに行ってきた。Robert Frippが音楽業界から引退したため、"King"抜きになった Crimsonである。来日メンバーは、Adrian BelewとTony Levinの二枚看板に、Pat Mastelotto、Markus Reuter、Julie Slick、Tobias Ralphを加えた6名。つまり、ギター、ドラムス、ベースがそれぞれ二人ずつのダブル・トリオである。

その前に、前座でスウェーデンのバンド、Anglagardが登場。ドラムス、ベース、ギター、キーボードに加え、フルート・サックス・メロトロンを操る女性で、計5名。ちゃんと聴くのは初めてだが、なんだか既視感を覚える見事なプログレ・サウンドだ。緩急を切り替える複雑な構成で、一曲あたりの演奏時間が長いという様式もプログレだが、それ以上に、ギター、ドラムス、キーボードの音色そのものが、まさにプログレ。初期の「宮殿」あたりのKing Crimsonにも通じるサウンドだ。前座とはいえ、一時間以上、たっぷり演奏。

20分の休憩の後、いよいよ、The Crimson ProjeKctが登場。一曲目がいきなり、"Red"。Crimsonの曲の中でも、私が最も偏愛するナンバーだ。それも、強力なダブル・トリオでの演奏。一気にテンションが上がった。その後は、1980年代の"Discipline"から続く三枚や、1990年代のダブル・トリオ期の作品が演奏されたが、どれも凄いプレイだ。Robert Frippという重しが無くなったせいか、Adrian Belewがやりたい放題、という感じなのも楽しい。Tony Levinのスティック演奏も、日頃目にする機会が少ないだけに興味深い。アレンジも先鋭的になっているようで、過去の遺産で食いつないでいるのでなく、現在進行形のバンドだと確信。個人的には、"Red"と並んで好きなCrimsonナンバー "Three of a Perfect Pair"を、Adrian、Tony、Patの三人で演奏してくれたのにも、感激。

アンコールは、"Frame by Frame"と"Thela Hun Ginjeet"の二曲。この辺は、実は Adrianのソロ公演と同じ構成だったりするが、たっぷりと楽しんだ。

ただ、2007年2010年のAdrian Belewの来日時に観て以来、お気に入りとなった女性ベーシスト Julie嬢が、すっかり貫禄のあるお姿になっていたことには、ちょとびっくりというか残念というか…


"Cloud Atlas"13.3.17

"The Matrix"の"Wachowskis duo"(ウォシャウスキー兄弟だったのが、Larryの方が性転換してLanaに改名。ウォショウスキー姉弟になっちゃった…)と、"Run Lola Run"や"Perfume"の監督Tom Tykwerが共同監督した映画を観てきた。

1849年、1931年、1973年、2012年、2144年、そして文明崩壊後の未来の6つの時代を舞台に、それぞれの物語が平行して語られる、非常に複雑な物語。上映時間は172分。そこだけ聞くと、ちょっと観るのを尻込みしそうな映画だが、それは全くの杞憂。見事にまとまった世界観を提示する、とても印象深い作品だった。

それぞれの時代で語られる物語は、SFだったり、奴隷貿易の冒険譚だったり、サスペンスだったり、スラップスティック風なコメディだったり、愛と芸術を描く作品だったりと様々だが、徐々に、それらがお互いに関わり合っていることが分かる展開が、本当に上手い。長い映画でも全く飽きないし、観ている側が混乱することもない。場面同士のつなぎ方も、憎たらしいほど巧みだ。

Wachowskis duoらしい映像美もたっぷり。特に 2144年のネオ・ソウルを舞台にしたパートは、彼らの面目躍如という感じだ。さらに、ハリウッド映画では絶対に犬は傷つかないというお約束を逆手に取ったり、あるパートでの「Soylent Green」への言及が別のパートの伏線になっていたりと、映画好きをくすぐるネタもたっぷり仕込まれている。

しかし、この映画の最大の山場は、エンディング・クレジットだ。ここで、役者陣が扮した役割が紹介されるのだが、Tom Hanks、Halle Berry、Hugo Weavingら、主な出演者は、ほとんどが一人六役。6つのパートで、それぞれ主演だったり脇に回ったりしているのだが、劇中ではまったく気がつかなかった特殊メイクが明かされ、びっくり。特に、Hugo Weavingの2012年パートでのあの役や、Hugh Grantが文明崩壊後の未来で扮していた役などは、本当に驚いた。誰が何の役をやっているかを頭に入れた上で、もう一度見返したくなること必至なのだ。

終盤、やや説教臭くなるのだが、真正面から輪廻転生を肯定するのではなく、つながりの可能性を示すにとどめているところも好印象。とても刺激的な映画だ。



駅の近くにあった成城石井が撤退し、紀ノ国屋に替わっていたことを発見。それで、最近、近所で紀ノ国屋のトートバッグを持っている人が増えたのかと合点がいった今日この頃です。