IN/OUT (2013.3.24)

桜桜の季節になりました。

例年より早いペースに、やはり地球温暖化の影響なのか、という気もしますが、思い出してみたら今年の冬は十分に寒かった。大雪も降ったし。

単純な温暖化というより、気候の変化が荒っぽくなってきた、という感じがする今日この頃です。


in最近のIN

「ソフィ カル − 最後のとき/最初のとき」&「捉えられなかった死」特別展示13.3.20

原美術館原美術館で開催中の展覧会を観てきた。フランスの芸術家 Sophie Calleの作品展である。

まず、「捉えられなかった死」。これは、2007年制作のインスタレーションで、二日間限定、完全予約制で特別に展示されたものだ。原美術館に集合した10名の参加者は、美術館の裏、ホテル・ラフォーレ東京の庭園内にある茶室「有時庵」へ移動。小さな茶室だが、設計が磯崎新氏ということで、様々な木材の他に、ライムストーン、ステンレス、チタン、アルミ等を用いた凝った造りである。滅多に訪れる機会の無いこの茶室に入れただけでも、嬉しい。ここで鑑賞するのは、床の間に設置された液晶TVに映し出させる13分間の映像と、壁に掲げられたテキストから構成されたインスタレーションだ。

映像は、母親の死をテーマとし、彼女が息を引き取るまでの13分間を記録したものだ。ただし、映像自体は、静かにベッドに横たわる彼女の横顔を固定カメラで撮影した、ほとんど動きの無いもので、息を引き取った瞬間も定かではないほど安らかな最期だ。リアルな人の死が記録されているといっても、その映像だけでは、あまり伝わってくるものは無い。しかし、壁に掲げられたテキストを読み、さらに、茶室という独特の空間に集まった少人数で鑑賞するという状況に置かれることで、強い印象を得る。

美術館に戻って、今度は通常の展示「最後のとき/最初のとき」を鑑賞。こちらは、生まれて初めて海を見る人々(トルコ内陸部の出身者をイスタンブールに招いたらしい)の様子を映した映像と音響からなるインスタレーション「海を見る」と、視力を失った人々に、彼らが覚えている最後に見たものを説明してもらったという、写真・テキスト・額で構成された「最後に見たもの」が主な展示物である。

どちらも、その映像・写真だけではいまいち分かりづらく、背景説明やテキストを読むことで、ぐっと興味深く観られるというタイプの作品だ。「視覚」について深く追求している作品群とも言えそうだ。

自分の母の死の瞬間を撮影し、それを作品として公開するということからも推察される通り、ソフィ・カル自身、かなり個性的な人物のようだ。その生き方は、多くの芸術家に支持されているらしく、中でも、ポール・オースターは個人的な親交があり、彼女をモデルにした人物を、小説「リヴァイアサン」に登場させているとのこと。再読せねば。


上原ひろみ ソロ@ブルーノート東京13.3.23

上原ひろみのソロ公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。最近は、トリオ公演などが多く、日本でのソロ公演は2年ぶりとのこと。私にとっても、ソロは2009年のブルーノート公演以来だ。

ブルーノート名物の、出演アーティスト命名のオリジナルカクテルは「春爛漫」。メニューは、ひろみ嬢直筆のイラスト付き。ステージに登場した彼女は、しばらくピアノの前で神経を集中。そして演奏開始。一曲目の"The Tom and Jerry Show"からパワー全開。可愛らしい雰囲気のイラストとは正反対の迫力なのだ。二曲目 "Choux a la Creme"の演奏後に小さくガッツポーズを決めたところでは、私も心の中でガッツポーズ。

一方で、会場の手拍子と一体となって、ピアノの弦を直接弾く奏法をたっぷり見せてくれたりするところなどは、ソロだからこその楽しさ。緩急自在の演奏の迫力は、止まるところを知らず。本編ラストは、通常、オーケストラで演奏されることが多いGershwinの"Rhapsody in Blue"をピアノ一台でたっぷりと。そしてアンコールは"Time Out"。どちらも、驚愕するしかないほど凄いレベルの演奏。当然のスタンディング・オベイション。

これまで観た彼女のライヴの中でも出色の出来だったと思う。その圧倒的な音数には、情もたっぷり詰まっていると実感。私の大好きな"Haze"も聴けて、言うことなし。



毎年この時期は、忙しい上に、杉花粉も飛びまくっているので、お花見とは縁が無いんですけどね。