アイルランドの舞踊を中心にしたパフォーマンス。Singapore Indoor Stadiumにて鑑賞。
クレジットされている出演者は
- The Riverdance Irish Dance Troupe(アイリッシュ舞踊)39人
- The Riverdance Orchestra(バンド)12人
- The Riverdance Singers(歌手)10人
- Firedance / Andalucia(スパニッシュ舞踊)1人
- Mocow Folk Ballet Company(ロシア民族舞踊)8人
- Trading Taps(タップダンス)3人
- Heal Their Hearts / Freedom(独唱)1人
- The Riverdance Drummers(太鼓)4人
- Understudies(控え)6人
という大がかりな舞台である。
アイリッシュダンスと言えば、The Chieftainsの来日公演を見たし、Michael Flatleyの「Lord of the Dance」のDVDだって持ってるんだから、俺様はその辺のトーシローとは違うぜ、と鼻息荒く出かけたのだが、すいません。私が未熟でした。いやはや、もう、すっかり打ちのめされるほど、素晴らしいエンターテインメントだった。
太古、大自然と共生していた時代から、アメリカへの移民、異文化との交流、そして故郷に帰るという、アイルランド民族の魂の歴史のようなものが一応の筋立てとしてあるのだが、それを意識することはあまりなく、まずは、踊りに目を奪われてしまう。アイリッシュダンス独特の、背筋をピンと伸ばしたままタップを踏むのが基本スタイルなのだが、全ての動きが、こちらの予想を遥かに越える速さ、高さ。そして、時折混じる、どきっとするほど柔らかな動き。なぜか激しく気持ちを揺さぶられる。ダンス・パフォーマンスで涙腺を開かれてしまったのは、これが初めてだ。
さらに、アイリッシュダンス以外にも、スパニッシュ系やロシア系、黒人のタップ等も取り入れた懐の深さ。特に、サックスのソロをバックにタップを踏む黒人ダンサーと、フィドルのソロをバックにアイリッシュ風タップを踏むダンサーとの、お互い超絶技巧を繰り出しつつの絡みなど、なんだかもう、大変なことになっているのである。
ダンスだけでなく、音楽の方も素晴らしい。楽隊の皆さんは、フィドルやパイプなどのトラディショナルな楽器と、ドラムス二人にベースとギターと言うロックバンド編成が組み合わさったもの。アイルランドのトラッド音楽がロックサウンドと親和性が高いのは分かっていたが、これほどまでとは。ツイン・ドラムを従えたフィドル・ソロのかっこ良さなど、並のロックバンドのライヴ以上にエキサイティングである。
Principal Dancerの一人が負傷し代役が立っていたということもあり、テクニック的にはDVDで見たLord of the Danceの方が優れていたと思う。元々Riverdanceに参加していたMichael Flatleyが、よりダイナミックで分かりやすい舞台を目指して製作したのがLord of the Danceということのようなので、見た目の派手さということでも、Riverdanceは見劣りがすると言えるかもしれない。しかし、構成や音楽面も含めた総合的な感じでは、私にはRiverdanceの方がぐっとくる。もちろん、ライヴで観たということが大きいのだろうけれど。次は日本公演があるようなので、是非、多くの方に体験してもらいたいものである。
結局、Michael Flatleyみたいな通俗的すぎるアイリッシュダンスじゃ駄目だね、と、行くとき以上に、鼻息荒く帰ってきたのだった。