IN/OUT1998/9/26


Light Rail(簡易鉄道)"MAX"の路線がポートランド・ダウンタウンから西に延長されたので、乗りに行ってきました。もっとも、ダウンタウンから南にあたる私の住まいとは無関係な路線ではあるのですが。

MAXは、路面電車と普通の鉄道の中間のような乗り物で、ダウンタウン圏内では自動車と同じ道路をゆっくりと走っていますが、郊外では、道路とは独立した線路をそれなりのスピードで走ります。車両自体も小さいし、三両編成。まさに"Light Rail"という言葉がぴったりです。

スピードの出る郊外では、駅間の距離もあるので、普通の鉄道っぽさが増すのですが、駅自体は路面電車のままです。駅舎がありません。改札口もありません。地面より15cmほど高くなったホームがあるだけです。駅の周囲には駐車場があるぐらいで、駅前商店街どころか、人家も無いようなところばかりです。ホーム上には自動券売機が置いてあり、1ドル40セントで全区間乗り放題の切符が買えるのですが、駅員がいないし、車内で検札もありません。切符を買うかどうかは乗客の良心にかかっているのです。見ていると、半数ぐらいの人はちゃんと買っているように思えますが。色んな意味で"Light"だなぁ、と感じてしまいます。

久しぶりに往復二時間近くの電車の旅をしたのですが、電車の座席に座っていると条件反射的に雑誌が読みたくなる、雑誌が無いと眠たくなる、というのは、すっかり体に染み付いてしまっているものだと再認識させられました。


in最近のIN

There's Something About Mary  (98.9.20)
この夏米国で、並み居る大予算映画を蹴落としてNo.1ヒットした映画を、話のタネにと観に行ってきた。

いわゆる「ラブ・コメディ」という奴で、ストーリー自体は、まったく他愛もない。中途半端な波乱万丈と、ラスト近くの強引過ぎる展開、驚くほどの予定調和。少なくとも「ラブ」に関しては、観るところの無い映画である。

じゃあ、「コメディ」の部分はと言うと、これまたひどい。観ているこっちが心配になるような、身障者差別ネタ、動物虐待ネタ、下ネタのオンパレードである。かなりお下品なギャグばかりで、こういうのが"PC (Politically Correct)"の本場、米国の観客に受け入れられるのか心配になるほどだが、明るくカラッと描かれているせいか、館内の善男善女達にはおおうけしていた。

と、客観的に考えれば"OUT"とせざるを得ないような映画ではあったのだが、こういう能天気な映画を欲する精神状態であったことと、お馬鹿なエンディング→クレジット・ロールにはまってしまったので、"IN"。Maryを演じるCameron Diaz嬢が、とてもチャーミングに撮られていた事も、高ポイント(結局、製作者の思う壺なのである.....)。


手紙  (98.9.22)
思いがけない手紙が届く。差出人も、そのていねいな内容も、とても嬉しい。

電子化された記号ではなく、インクののった紙という物資が届くというのは、やはり良いものだ。


紙屋とペン屋  (98.9.26)
ということで、「手紙を書こう」と思い立ち、ダウンタウンへ買出しに出かける。高速道路を使わないという情けない行程ながら、どうやらダウンタウンまで運転できるようになった今日この頃なのである。

まずは、The Paper Stationという店。何度か前を通りかかったことはあったのだが、入ったのは初めてである。置いてあるのは、レターセット、カード等。米国ではカードのやり取りが盛んなので、どこのスーパーマーケットにも、かなり広いカード売り場があるのだが、そういうところに並んでいるのは「キャラクター物」や「ファンシー物」など、自分では使う気になれないものばかりである。しかし、ここはさすがに専門店。地元のアーティストが製作したオリジナルのカードや、上品なレターセットが揃っていて、見ているだけで楽しい。好印象の店だった。

続いて、COLORADO PEN COMPANY,INC.。ペンの専門店である。今まで知らなかった店なのだが、「良いペンも欲しい」と思いながら歩いていたところ、運良く出くわしたのだ。「自分で使う、値段が手頃で書き味の良い万年筆」とリクエストして店員が出してくれたのは、TOMBOWの万年筆。Made in Japan。米国で日本製の万年筆を購入ねぇ.....。そもそもトンボ鉛筆って万年筆も出してたっけ?と思ったけど、確かに「値段が手頃で書き味が良かった」ので、購入してしまった。小さいながら、品揃えも豊富だし、店員の応対も気持ちの良い、ここもまた好印象の店であった。



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モネ展  (98.9.26)
Portland Art Museumで開催されている"MONET, Late Paintings of Giverny"を観てきた。

以前観たエジプト展と同様、ヘッドフォン・ステレオを付けてオーディオ・ツアーができるのだが、前回のキャスリン・ターナーと違い、今回は最後まで館長氏のナレーション。でも、この人、かなり語りが上手い。

不勉強ながら、今日初めて、「睡蓮」を含むモネの作品のほとんどが、彼自身が作り上げた庭園を描いたものだということを知ることができた。しかしながら、展示そのものは、全体的にやや物足りない。綺麗な絵だとは思うが、それ以上の感動は受けなかった。私は、印象派とはあまり相性が良くないらしい。その割に、オーディオ・ツアーのナレーションは、一枚一枚、丁寧に解説しているので、中々、前に進めないのが辛い。早回しせず、全部聞いてしまおうと思うところが貧乏性である。

個人的には、Portland Art Museumで一番の問題は、二階の特別展を観終って階段を降りてくると、そこには常設の「東洋の仏教美術」コーナーがある、ということである。西洋絵画を見た直後に、仏像や和ダンス、屏風(日本人には、古道具にしか見えないものも置いてあったりする...)を見せられるというのは、なんか調子が狂ってしまうのである。



今週は、他にも、予期せぬ人から丁寧な電子メールをもらって恐縮したり、手紙を通した意外な出会いがあったり、「言葉」を巡るちょっとした行き違いを目撃したり(ネットの日常茶飯事と言えますが)と、「コミュニケーション」について考えさせられる出来事がいくつかありました。とにかく「伝えなければ、何も起こらない」ということを改めて感じた1週間でした。

ということで、当人の知らないところで、その人のことをあれこれ話題にするのは良い事じゃないよなぁ、と自戒するのですが、「共通の知人の噂話」は日本人/米国人を問わず盛り上がる話題だと、やっぱり実感したりもする今日この頃です。


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