砂漠のダイナーを舞台にした、ブラック・コメディ味もあるクライム・スリラー映画を観てきた。邦題は「ユマカウンティの行き止まり」
舞台は、1970年代、米国 アリゾナ州 ユマ郡の砂漠地帯にポツンとあるダイナー。隣のガソリンスタンドに給油車が到着しないため、1人のセールスマンが時間を潰している。そこに現れたのが、逃走中の2人組の銀行強盗。彼らも、ガソリン切れなのだ。セールスマンとウェイトレスの2人は人質となってしまうが、そうとは知らない人達が、次々と、給油車待ちでダイナーを訪れる。不穏な緊張感が高まる。
いかにも低予算でオフビートな犯罪映画。こういう映画のパターンとして、「この人は、早めに銀行強盗に殺されちゃいそうだ」、「彼女は、最後まで生き延びるよね」、などと思いながら観ていたのだが、途中で、とんでもないツイストが入る。これは、全くの予想外。映画館内に、唖然とした笑いが広がる…。
そこからは、想像の斜め上を行く展開。贅沢を言えば、最後のオチには、もう一工夫欲しいかな、という気もするが、これは快作!
冒頭に流れるのが、Paul Mauriatの「L'amour est bleu(恋はみずいろ)」、ラストには、The Grass Rootsの「Let's Live for Today」。音楽のセンスも好みだし、セールスマンが売り歩いている「オダチ・ナイフ」や、「Psycho」のAnthony Perkinsへの言及など、ちょっとした小ネタとして挟まれる笑いも好きなタイプだ。
監督は、これがデビュー作となるFrancis Galluppi。この映画を観たSam Raimiが、「Evil Dead」シリーズ(死霊のはらわた)の新作「Evil Dead Wrath」(2028年公開予定)の監督に抜擢したいう。覚えておいて損は無い監督だ。
ジャズ評論家・高木信哉が、今、最も聴くべきミュージシャンを紹介するという練馬文化センターのシリーズ企画「ねりぶんJAZZ」。その第23回、ピアニスト・作曲家の宮本貴奈を中心にした公演を観に行ってきた。
この企画は、これまで、「ザ・ジャズ・アベンジャーズ」と、「エリック・ミヤシロ・オールスター・ドリーム・バンド」を観たが、今回は、シリーズ初の大ホールでの公演。キャパは、小ホールの倍以上の1,332席。ゲストの知名度の高さもあって、満席だ。私の席は、やや右寄り。楽譜台のせいで表情は見えないが、川口千里のスティックさばきをしっかり視認できるポジションだ。
出演者は、
・宮本貴奈(ピアノ・ヴォーカル)
・竹中俊二((ギター)
・小川晋平(ベース / 出演予定のPat Glynnが体調不良で、急遽、交替)
・川口千里(ドラム)
・鈴木真明地 (アルトサックス、タップダンス)
・八神純子(ゲスト・ ヴォーカル)
この企画、事前にセットリストと高木信哉による解説文が渡される親切設計。本日のプログラムは
第一部~偉大なるピアニスト・作曲家たちへのオマージュ
・Summertime(作詞:DuBose Heyward / 作曲:George Gershwin)
・Waltz for Debby(作詞:Gene Lees / 作曲:Bill Evans)
・Memories of Tomorrow(作曲:Keith Jarrett)
・Georgia on My Mind(作詞:Stuart Gorrell / 作曲:Hoagy Carmichael)
・Rainbow(作曲:宮本貴奈)
・It's All Up to You(作曲:宮本貴奈)
・Cantaloupe Island ~ Tell Me a Bedtime Story(作曲:Herbie Hancock)
・Ginza Blues(作曲:Philippe Saisse)
第二部~ゲスト・八神純子さんをお迎えして
・Merry Christmas, Mr. Lawrence(作曲:坂本龍一)
・Fly High. Into the Sky(作詞:宮本貴奈 / 作曲:中川英二郎)
・パープルタウン(作詞:三浦徳子 / 作曲:八神純子)
・New York State of Mind(作詞・作曲:Billy Joel)
・Route 66(作詞・作曲:Bobby Troup)
・People(作詞:Bob Merrill / 作曲:Jule Styne)
・みずいろの雨(作詞:三浦徳子 / 作曲:八神純子)
アンコール
・What a Wonderful World(作詞・作曲:Bob Thiele, George David Weiss)
・Spain(作曲:Chick Corea)
丁寧なプログラムだけで無く、冒頭に、高木信哉による挨拶があって、いよいよ開演。まずは、ピアノ、ベース、ドラムスのトリオで3曲。「Waltz for Debby」のヴォーカル入りは初めて聴いた。3曲目「Memories of Tomorrow」は、今年、何かと話題になっている「Köln 75」のアンコール曲。数日前に、急遽、オファーされたという小川晋平も見事にハマっている。
4曲目「Georgia on My Mind」で、ギター登場。そして、宮本貴奈の作品 2曲「Rainbow」と、サックスが参加しての「It's All Up to You」。フル・メンバーで、Herbie Hancockメドレー。
本編最後は、川口千里のソロ・アルバム「CIDER ~Hard&Sweet~」収録曲、「Ginza Blues」。全員のソロ回しに、改めて本日のメンバーのレベルの高さを思い知る。演奏後、6月が誕生月の宮本貴奈をサプライズでお祝いし、20分間の休憩。
第2部、まずは、宮本貴奈のソロ・ピアノで教授の戦メリ。そして、トロンボーン奏者 中川英二郎の曲に彼女が詞を付けた「Fly High. Into the Sky」を、トリオで演奏。
ここで、本日のゲスト、八神純子登場。彼女のライヴ・シリーズ「キミの街へ」は、宮本貴奈と竹中俊二との3人(ドラムとベース無し)で、日本中を回っているのだが、今回は、そこに、超強力なリズム隊と若手サックスが加わる布陣となる。
まずは、挨拶代わりに代表曲「パープルタウン」。やはり、八神純子、声の説得力が桁違いだ。そこからも、Billy Joelの「New York State of Mind」、スタンダード曲「Route 66」、Barbra Streisandでお馴染み「People」と、歌唱力を見せつける。最若手の鈴木真明地が、サックスだけで無く、タップ・ダンスも披露して盛り上げるのも楽しい。
そして、本編ラストは大ヒット曲「みずいろの雨」。やはり、名曲は強いなと思う一方で、この超強力メンバーで演奏しても、どうしても歌謡曲臭が強くなってしまうなと感じたり(あと、サンバ・ホイッスルが無かったのが、寂しい)。
アンコール。1曲目は宮本貴奈と八神純子の2人で「What a Wonderful World」。声量など、ヴォーカリストとしての力量は八神純子が圧倒的なのだが、声の相性が良いのか、2人のハモりがとても綺麗なのが印象的(ピアニスト 宮本貴奈が歌うようになったのは、八神純子が勧めたからだそうだ)。
そして、最後に「Spain」。八神純子のヴォーカルを前面にフィーチャーしたヴァージョン。このフュージョンの超鉄板曲に歌詞を付けて歌いこなせるのは清水ミチコしかいないと思っていたのだが、八神純子、素晴らしい歌唱である。英語詞で歌ったのだが、いつか機会があれば、是非、清水ミチコによる日本語詞でも歌っていただきたい。演奏終盤には、川口千里のキレキレのドラムス・ソロも入って、全編終了。とても、満足度の高い公演だった。
そして、Qobuzのハイレゾ音源の方が、CDよりも高音質…。物理メディアへの愛着は持ち続けているつもりですが、アナログ・レコードの再生環境は無く、CDについても、収納問題が…。フラッシュ・ディスク・ランチのCDソフトケースを愛用しているのですが、最近のCDは、標準的なパッケージの物が少なく、圧縮保存しにくいのが、困ったところです。