IN/OUT (2026.5.17)

短かった春が終わり、早くも夏のような気候になってきています。結果、梅雨の存在を失念気味の、今日この頃です。


in最近のIN

”The Sheep Detectives”26.5.12

T-Joyプリンス品川羊たちが、大好きな飼い主を殺した犯人を見つけ出そうと奮闘するという映画を観てきた。監督は、”Minions”のKyle Balda。人間の主演(と言うか、殺人の被害者)はHugh Jackman。邦題は「ひつじ探偵団」。

アイディアだけ聞くと、ふざけた映画のように思えるが、なかなかどうして、至極真っ当なミステリーだ。羊たちによる捜査と推理の過程は、本格探偵小説さながらだが、過度に擬人化することなく、3秒カウントすれば、嫌なことは全て忘れ去ってしまうなど、羊らしさを残した設定が絶妙なライン。それぞれの羊たち個性の描き方も巧みで、しっかり感情移入できる。対する人間側も、登場時の印象が、物語が進むに連れてどんどん変化する人物が多く、見せ場は十分。

もちろん、モフモフした可愛らしさもたっぷり。それでいて、深いドラマ性も備えていて、ラスト近くの展開は、落涙必至。真犯人の意外性もお見事。

ということで、ウェルメイドなミステリであり、嫌みにならない程度の社会派メッセージも含んだ、大いにお勧め出来る快作だ。


CANDY DULFER "FUNKALICIOUS TOUR" IN JAPAN @ ブルーノート東京26.5.14

ブルーノート東京先週に続いてCandy Dulferのライヴ。今回は、5日間のブルーノート公演の最終日、2nd Show。

メンバーは
・Candy Dulfer(sax,vo
・Ivan Peroti(vo
・Camilo Rodriguez(vo
・Marc Mangin(sax
・Efe Erdem(tb
・Jordy Kalfsvel(key
・Ulco Bed(g
・Xander Buvelot(b
・Kick Woudstra(ds

席がステージ至近だったので、開演前に床に置かれたセットリストのメモを視認できた。初日から変化無しのようだ。ということで、今回も、バック・バンドが先に登場し、音を出し始めたところに、ラメラメの衣装でキメたCandy姐さん登場。「Sax-a-Go-Go」でド派手に始まる。展開は同じだが、そこは最終公演。初日でも凄いと思った熱量を、さらに超えてくるパフォーマンス。圧倒的なPositivenessが満ち満ちている。

「Discoball」、「YeahYeahYeah」と、アップテンポな曲で盛り上がり、バラード「Lily Was Here」の泣きのギターとの絡みで魂を揺さぶる。そして、5曲目のChuckii Bookerの曲で、会場を総立ちにさせるCandy姐さん。「Galaxy」の演奏では、途中、サックスを手放し、ドラムス演奏も披露するが、本人も、バンド・メンバーも、もちろん観客も、皆、思いっきり楽しんでいる、実に多幸感に溢れる会場だ。

ヴォーカリスト 2人をフィーチャーしたPrinceの曲の後、バラード「The Climb」。今回も、曲の歌詞を紹介しながら涙ぐむ姐さん。この曲でのUlco Bedのギター・ソロが、実にエモい。彼は、他の曲ではカッティング・ギターでバンド・サウンドを支え続け、本当に上手いギタリストだと思う。そういう意味では、このバンド、フロントの3管+2ヴォーカリストのステージを一杯に使ったパフォーマンスが目立つが、バックのリズム隊が分厚く支えているからこそだよなぁと、つくづく感心する。

いよいよラストは、「P-Funk The Pieces (Pick Up The Pieces)」。熱い! 恒例の、観客席を練り歩きながらの演奏も、今回は2階席(ブルーノート東京には、目立たないが2階席があるのだ)にも突撃!こんなの初めて観た。 いやはや楽しすぎる。場内、大興奮だ。

もうこれで完全燃焼だと思いつつも、アンコールの手拍子は止まらない。で、応えてくれました!アンコール曲は、バハマの1発屋バンド”The Beginning of the End”の「Funky Nassau」。本編で、あれだけ動き回り、歌い続け、サックスを吹き倒していたのに、疲れを感じさせず、サービス精神たっぷりの、まさにファンキーなパフォーマンス。これで、95分間の白熱のライヴ終了。あぁ、楽しかった。最後は、Ivan Perotiの煽りに乗って、会場全体で、”Dulfer~!!”と、Candy姐さんの名前を叫ぶ。いやぁ、燃えた! ここ数年間に観たライヴの中でも、楽しさという点では、飛び抜けて素晴らしいライヴだった!!


「クラフトワーク『放射能』50th Anniversary Edition Dolby Atmos試聴会」 @ 御茶ノ水 RITTOR Base26.5.15

御茶ノ水 RITTOR BaseKraftwerkの1975年の名盤「Radio-Activity」の発売50周年記念イベント
・ドイツ盤オリジナルLP
・50th Anniversary Picture Disc Vinyl
・50th Anniversary Edition Blu-ray Dolby Atmosミックス
を聴き比べるという企画を観に、御茶ノ水 RITTOR BASEに行ってきた。

メンバーのRalf HütterとFritz Hilpertがオリジナルの16トラック・マルチテープから新たに作成したDolby Atmosミックスを収録したBlu-ray版が発売されたのだ。

RITTOR BASEディレクターの國崎晋と、中野ブロードウェイにあるテクノレコード専門店、Shop Mecanoの店長 中野泰博がMCを務める。まずは、先日の来日公演の話(私は残念ながら参戦できず)。2人とも、東京の2 daysを、両日観てきたそうだ。会場のSGCホール有明が誇るイマーシブ音響の話から、PAの良いところ&悪いところをプロ目線で語る、他では聞けないような角度からのコンサート評が興味深い。サウンド&レコーディング・マガジン元編集長、國崎晋の機材オタクぶりが溢れるトークは、好感が持てる。

ドイツのオリジナル・アナログ盤から、A面1曲目「Geiger Counter」と2曲目「Radioactivity」を聴く。RITTOR BASEが誇るスピーカー:GENELEC S360Aと、サブ・ウーファー:GENELEC 7380Aが轟かす音が、つくづく素晴らしい。盤面状態も良く、50年前のLPとは思えない高音質。定位もバッチリ決まっていて、爆音で聴いてもバランスが一切崩れない。

続いて、Dolby Atmosミックスで、アルバムを通して聴く。一聴して驚いた。極めてクリアになった音が、明確に分離し、左右だけでなく、前後にも上方にも広がり、それぞれのポイントにピタッと定位している。A面6曲目の「News」など、2chで聴くと、ごちゃっとしたサウンド・コラージュだが、それが、要素毎に分解され、空間に再配置された結果、印象は一変。カッコ良さ3倍増。

全曲聴き終わり、MCの2人が声を揃えて「別物だ!」。本当にそう思う。「テクノと言うより、プログレ。色気のないPink Floydみたいだ」との評にもニヤニヤしてしまう。会場からのリクエストで、B面1~2曲目の「The Voice of Energy」と「Antenna」を、LPとDolby Atmosで改めて聴き比べ、「ヴォーカルのダイレクトな音はフロントから出し、リバーブ成分をサイドに流している」という、プロが分析するミックスの妙に、素人の私も唸る。

さらに、50周年記念でリミックスされたピクチャー・ディスクと、Blu-rayにDolby Atmosとは別に収録されている5.1サラウンドも試聴。アルバム自体は、38分弱の収録時間なのだが、たっぷり1時間45分、盛り上がった。ただし、予定されていたBlu-rayとピクチャーディスクLPの即売は、商品が会場では無く、事務所の方に届いてしまったことが判明し、中止になってしまったのは、ご愛敬(散財せずに済んだとも言える)。

ということで、予想よりも遥かに興味深いイベントだった。これまで、オーディオは2chだと頑なに信じていた私だが、立体音響の凄さに、考えを改めざるを得ない。とはいえ、自宅にDolby Atmosを導入するのは、さすがにToo Much。イベント会場で聴くべきものだと、自らに言い聞かせるのである。


「ごほうびクラシック 第17回 村治佳織ギター」 @ 第一生命ホール26.5.16

第一生命ホール第一生命ホールを拠点として活動する認定NPO法人、トリトン・アーツ・ネットワークが主催するシリーズ企画「ごほうびクラシック」に村治佳織が出演するのを観てきた。

この日は2公演。やのとあがつまでお馴染み、三味線奏者の上妻宏光と、ピアニストの加藤昌則がゲスト出演する昼の部と、ソロの夕方の部。私は、両方参戦である。

【昼の部】「ゲストと共に:スペインと日本~ロドリーゴ生誕125周年~」
・タレガ:アルハンブラの思い出(村治)
・ロドリーゴ(加藤昌則編):アランフェス協奏曲(村治、加藤)
・上妻宏光(小関佳宏編):紙の舞(村治、上妻)
・上妻宏光:セゴビアの夜(村治、上妻)
・【アンコール】マイヤーズ(ジョン・ウィリアムズ編):映画『ディア・ハンター』より「カヴァティーナ」

ステージ上は、Steinwayのグランドピアノと、村治佳織用の椅子。そして、Eclipseのスピーカーが1つ、置かれている。極力アコースティックの響きを活かしつつ、最低限のPAをするためだと思われるが、インテリアのようにも見える卵形のスピーカーが、ちょっと面白い(実際、とても自然に鳴っていた。小型のEclipseスピーカーを使っている私としては、ちょっと嬉しい)。

スペインをテーマに、まずはお馴染みの「アルハンブラの思い出」を村治佳織の流麗なソロで。そして、オーケストラとの共演で演奏されることが多い「アランフェス協奏曲」を、加藤昌則のピアノと共に演奏。2人の演奏とは思えないほどのスケール感で聴かせる(3つの楽章を全て演奏したが、やはり、第2楽章を聴くと、「Spain」に展開しないの?という気になってしまうな)。

演奏後、村治佳織&加藤昌則でトークの後、和服姿の上妻宏光が登場。しばしトークの後、上妻宏光と村治佳織で「紙の舞」。先日のやのとあがつまのツアーでは上妻宏光のソロで披露された曲だが、今回は、三味線とクラシックギター、全く個性の違う弦楽器が絶妙にハモる、秀逸なアレンジだ。

「セゴビアの夜」は、10年以上前、上妻宏光がスペインのセゴビアでコンサートをした時の印象を元に書かれた曲。そのコンサートを、当時、スペインに長期滞在していた村治佳織が聴きに行っていたという縁があるそうだ。この共演が、本日の白眉。上妻宏光のソロ曲をデュオ用にアレンジした「紙の舞」とは違い、最初からギターとのデュオ曲として書かれているため、2人それぞれの見せ場がたっぷり。お互いのテクニックの相乗効果に圧倒される。

アンコールは、村治佳織1人で、彼女のお馴染みのレパートリー「Cavatina (映画:The Deer Hunter)」をしっとりとキメる。

【夕方の部】「ソロ・リサイタル:日本の作曲家の作品を集めて」
・渡辺香津美:「アストラル・フレイクス」より第1番・第4番
・坂本龍一(佐藤弘和編):戦場のメリークリスマス
・坂本龍一(村治佳織編):映画『ラストエンペラー』より「テーマ」
・久石譲(小関佳宏編):映画『ハウルの動く城』より「人生のメリーゴーランド」
・武満徹:「すべては薄明のなかで」より第1曲
・レノン/マッカートニー(武満徹編):イエスタデイ
・植松伸夫(小関佳宏編):ティファのテーマ(ファイナルファンタジーVII)
・植松伸夫(村治奏一編):ザナルカンドにて(ファイナルファンタジーX)
・【アンコール】鴫原ローラ(オエス編):エブリシング・オールライト(『To the Moon』より)
・【Wアンコール】村治佳織:エターナル・ファンタジア

1時間ほど間が空いて、夕方の部は村治佳織のソロ。日本人作曲家の作品集(あえて1曲、武満徹アレンジによるLennon-McCartneyの曲)。ソロということで、かなりリラックスした雰囲気で、曲間の喋りもたっぷり。闘病中の渡辺香津美への言及が多かったことに、グッときてしまう。ただ、最新アルバムに収められているゲーム音楽も含め、聴きやすい名曲揃いのため、【昼の部】で感じたようなスリリングさは希薄。これだったら、夕方と言わず、夜にアルコール片手に聴きたかったかも。

それぞれの部、本編1時間+アンコールというのも気楽に聴ける感じで、「ごほうびクラシック」、なかなか良いシリーズ企画だと思う。村治佳織は、5年前の第1回の出演者で、その後も毎年出演しているという。今後も、要チェックのシリーズだな。


「ジェフ・ミルズ presents 火の鳥 - エレクトロニック・シンフォニカ - Special Guests 上原ひろみ and LEO」 @ MoN Takanawa BOX100026.5.17

MoN Takanawa BOX1000米国、デトロイト出身のテクノミュージシャン、Jeff Millsが、手塚治虫の「火の鳥 未来編」に着想を得て製作した公演を観に、MoN Takanawa(The Museum of Narratives)に行ってきた。正直、Jeff Millsは、名前を知っている程度だし、手塚治虫のファンという訳でも無い。お目当ては、ゲストの、上原ひろみとLEOである。

MoN Takanawaは、TAKANAWA GATEWAY CITYに開館した実験的ミュージアム。その開館記念特別公演として、漫画をライヴ空間で体験する新しいライヴ・パフォーマンス「MANGALOGUE:火の鳥」が2026年4月22日~5月16日まで公演中だ。。Jeff Millsの公演は、それと連携した、一日限りの企画。会場となるBox1000は、MoN TakanawaのB3FからB1Fにある、ステージ全面にLEDが設置されたシアター空間。着席仕様で最大1,048席のキャパだが、今回は1階席がスタンディングで、2階席の248席が着席というレイアウト。私は、2階席での観覧。

ステージ上は、向かって左にグランドピアノとNordのキーボード、中央に箏、右にJeff Millsの機材群。背面のスクリーンに画像が投影されるが、ステージ前面にも半透明のスクリーンが降り、これによって映像の中でパフォーマンスしているように見えるという寸法。

まずは、Jeff Millsが登場し、ベース音の効いたテクノ・サウンドを轟かせる。また、要所要所でパーカッションも叩く。スクリーンには、火の鳥の映像が投影されるが、ストーリーを追うというより、イメージ重視という感じ。音響は悪くはないのだが、一昨日、御茶ノ水 RITTOR Baseで、テクノ・サウンドがDolby Atmosで鳴り響くのを体感したばかりなので、2chのサウンドに物足りなさを感じてしまう。

ある程度、Jeff Millsが1人で音を出した後、上原ひろみが加わる。テクノ・サウンドに差し込むようなインプロビゼイションを奏でるのだが、ちょっと物足りない。生身の人間のリズム隊との間に生じる緊張感と昂揚感がなく、テクノのリズムを攻めあぐねている印象だ。

上原ひろみが退場し、LEOが参戦。エフェクターを効かせた箏。お正月に聴くような琴や箏とは全く異なる音色。ただ、こちらも、テクノ・サウンドとの相乗効果は感じられず…。

という訳で、正直、眠い。私には、Jeff Mills、上原ひろみ、LEO、そして火の鳥の4要素がバラバラにしか感じられない。

しかし、終盤、再度、上原ひろみが登場し、ステージ前面の半透明スクリーンが無くなってからの演奏は、雰囲気が変わる。テクノ・サウンドに対する攻略法を見つけたかのように攻める上原ひろみ。ピアノの胴体に片腕突っ込んじゃう奏法も飛び出す。Jeff Millsも即興性をドンドン増しているようだ。そして、LEOも加わっての3人の演奏は、ついに一体感が醸成され、グイグイ熱量が高まっていく。これで本編終了。

アンコールは、Jeff MillsとLEOの2人の演奏 → Jeff Millsと上原ひろみの2人の演奏という構成だったが、さらに本領を発揮する上原ひろみ。気がついたら、すっかり場を攫っている。結局、最後の挨拶は、上原ひろみを真ん中に3人が並ぶフォーメーションになっていた。終わり良ければ全て良し。私も満足である。

Jeff Millsの実力は十分に伝わったし、上原ひろみとテクノの組み合わせは、さらに深掘りする機会を観てみたい。また、LEOのパフォーマンスも、ちゃんと観てみたいと思う。そういう意味では、(申し訳ないが)「火の鳥」の要素が余分だったような気もする。まぁ、本編ラストで火の鳥が飛び去っていく映像が、「科学忍法 火の鳥」のようでカッコ良かったので、良しとするか。



じめじめした梅雨は嫌だけど、かといって、いきなり猛暑・酷暑に突き進むよりは、ワン・クッション入った方が良いかなぁ。