IN/OUT (2025.10.12)

ようやく、朝晩はちゃんと涼しいと言える気候になりました。久しぶりに、集中豪雨じゃないシトシト雨も降ったし。ただ、まだまだ日中は蒸し暑いですね。


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「開館50周年記念 おいでよ!松岡動物園」@ 松岡美術館25.10.11

松岡美術館松岡美術館の開館50周年記念の展覧会(全3会期の第2弾)を観てきた。

1975年に、実業家にして美術品コレクターだった松岡清次郎が、そのコレクションを一般に公開するため、新橋のビル内にオープン。彼の死後、1996年に私邸跡地に建設されたのが、現在の建物だ。港区白金台、国立科学博物館附属自然教育園の裏にひっそりと佇む小規模な美術館、私は、今回が初訪問である。雨の土曜日、意外にも観覧者はそれなりに入っている。

美術展のタイトル通り、古代エジプトの動物神像 、昔の工芸品、近代の絵画作品などから、動物がモチーフになった物が並ぶ。松岡美術館での展覧会は、全て、自前の収蔵品で構成されているのが特徴だそうだ。

しかし、この制約のせいで、(興味深い物もそれなりにあるのだが)動物園と銘打つ割には、いまひとつワクワク感が乏しかったのは残念なところではある。また、クメール彫刻など、本来、その作品が在るべき遺跡から略奪された後、美術市場に流れた物を購入したと思われる展示には、コレクターの不遜さも感じてしまった。

ただ、自前の収蔵品に拘るのは、私立美術館として一つの見識だろう。自らに課した制約の中で、このような企画展を仕立てて、来場者の興味を引くという努力には、好感が持てる。また、コレクションを成した松岡清次郎の趣味がそのまま展示品に現れているため、古代エジプトから近代絵画まで、展示の幅は広いのに、どこか一貫した美意識が感じられるのも、家族経営の私立美術館らしいと思う。

なお、「シャッター音の出る携帯電話での撮影は禁止」というルールのため、作品撮影は遠慮した。こういう頑固なところも含め、頑張ってほしい美術館だ。


「体を成す からだをなす – FRAC Grand Large収蔵作品セレクション展」@ 銀座メゾンエルメス ル ・フォーラム25.10.11

銀座メゾンエルメス・フォーラム「『社会的身体』のあり方をアートを通じて紐解く」、という展覧会を観に、銀座メゾンエルメスの8Fにあるギャラリー「LE FORUM」に行ってきた。こちらも、今回、初めて行くギャラリーだ。

フランス、ダンケルクにある文化機関「FRAC Grand Large」が所蔵するコレクションをもとに、ヨーロッパやアメリカ、日本の作家計13人、Åbäke、André Cadere、Helen Chadwick、Jesse Darling、Christine Deknuydt、Jessica Diamond、Pauline Esparon、Tarek Lakhrissi、Paul Maheke、Bruno Munari、Nefeli Papadimouli、笹原晃平、Ana Torfsの作品が紹介されてる。

銀座メゾンエルメス・フォーラム規模は小さいが、さすがエルメス。極めてセンスの良い展示空間だ。絵画やインスタレーション、パフォーマンスのヴィデオ映像など、様々なタイプの現代アート作品が並んでいるが、どれも、見応えがある。写真は、笹原晃平の「サニー」

しかも、それらの作品が、過剰な解説無しで、さらっと展示されている。観る側のセンスが問われているようで、緊張する展覧会だと感じた。

緊張を覚えたのは、私には馴染みが無い、ハイブランド=エルメスの旗艦店というロケーションのせいでもある。会場に到達するまでのエレベーターが、既に緊張ポイントだし、会場内にいるスタッフの方々も、美術館の職員とは雰囲気が違う。(当たり前だが)ハイブランド・ショップの店員という風情なのだ。

これだけのクオリティの展覧会でありながら、入場料は無料。エルメス、恐るべし。というか、こうした、極めてハイセンスな文化活動を行うための原資が、エルメス商品の価格に転嫁されているのだろうと考えると、それらを購入している富裕層の皆さんに感謝せざる得ない。というか、今後も、積極的に、その"おこぼれ"に預かろうと思ってしまうのである。


”Tron: Ares”25.10.12

松岡美術館1982年の”TRON”から始まるシリーズの3作目を観てきた。前作、2010年の"TRON: Legacy"は、薄っぺらな駄作だったのだが、果たして。

このシリーズでの敵役、ゲーム会社のDillinger社が、AIプログラムを実体化し、兵士や兵器にする。という発明を発表する。しかし、実際には、実体化できるのは29分間だけ。永続性を持たせるためのプログラムを発見したのは、ライバル会社 ENCOMの経営者。そのプログラムを奪うべく、Dillinger社のAI戦士 Aresが、ENCOMの経営者狙う…、というお話。

残念ながら今回も、駄作と言わざるを得ない…。2作目よりもマシな気はしたが、やはり、コンピューター・プログラムを擬人化するのは、無理がある。

とは言え、生成AIの急速な進化で、擬人化にも、それなりに(あくまでも、それなりに)説得力は無くはない。が、Chat GPT君の先に、Jared Letoが演じたような感情を持ったナイス・ガイが現れるのは、可能になったとしても、まだまだ先の事だろう。結局、この映画は、ご都合主義満載のお子様向け絵空事の域を脱していないと思う。

それでも、律儀にこのシリーズに出演を続けるJeff Bridgesや、元祖のCGの再現、そして、Depeche Modeへの賛辞(AI戦士 Jared Letoは、80年代ポップ・ロックが好きなのだ!)など、オールドファンへの訴えかけと、最新VFXによる新規ファンへのアピールが、上手く噛み合っているのは、評価ポイント。

そして、この映画を観ることにした一番の動機である、音楽をNine Inch Nailsが手掛けている点は、期待通り。つまり、これは、劇映画として観ては駄目。派手なVFXと豪華出演者による、Nine Inch Nailsのミュージック・ヴィデオとして鑑賞すれば、十分、評価に値する作品だ。



このまま、徐々に涼しさが増して、秋を長く楽しめれば良いのですが。最近の意地悪天気だと、秋をすっ飛ばして、いきなり冬になるリスクも高いような気もする、今日この頃です。