ポケモンと工芸を掛け合わせるという異色のコラボレーション企画の展覧会を観に、麻布台ヒルズ ギャラリーに行ってきた。一瞬、キワモノっぽく感じてしまうが、2023年に石川県の国立工芸館で始まり、国内外を巡回してきたガチのアートプロジェクト。参加した工芸アーティストは、人間国宝も含む一流揃い。
例えば、吉田泰一郎による金工×「イーブイとその進化形」。伝統的な技法を惜しみなく注ぎ込んだ迫力。
迫力ということでは、葉山有樹の「森羅万象ポケモン壺」。存在感たっぷりの陶器だが、近寄って表面を凝視すると、びっしりと描き込みがなされている。どれだけの時間と労力を掛けたのか、気が遠くなる。
新實広記の「つららおとし」は、ガラスを用いたインスタレーション。これは、完全に現代美術だ。
この他、木工、漆芸、染織等々、様々な工芸技法を駆使した作品が並ぶ。
特に印象的だったのは、桝本佳子の信楽焼「ロコン」や「リザードン」など。信楽焼の素朴な質感と壺の丸みが、ポケモンの造形と不思議な調和を見せている。
と、見事な工芸作品を楽しんではいたのだが、正直、私はゲームの類いはほとんどやらない。ポケモンも、一般常識として知っているだけで、プレイしたことは無い。それでも、ピカチュウは分かる。と言うか、その程度の知識で申し訳ないという気もする。
そんな私でも目を奪われる作品が並んでいるのだから、相当凄い、とも言えるが、やはり、私ごときが鑑賞しているのは、ポケモン好きの人からしたら噴飯物かもしれないな…。
⾝体ごと⾳楽に没⼊する新感覚の⾳楽体験ミュージアム、という物を観に、虎ノ門ヒルズ ステーションタワーの高層部にあるTOKYO NODEに行ってきた。
「TOKYO NODE」と「J-WAVE」がタッグを組み、⼀流のクリエーターによる表現と最先端演出により、クラッシックから、ポップス、AIが作曲する⾳楽まで、イマーシブな⾳楽体験を提供する、という惹句からは、何のことやら全く分からないが、果たして……。
地下2階から、エレベーターとエスカレーターを乗り継いで、分かりづらさMaxの動線に辟易しながら、地上45階へ。
場内に入り、最初の空間は、天球型ドームにプロジェクションマッピングを投影し、32.2チャンネルの立体音響で、蓮沼執太による音楽を浴びるというもの。床に置かれたビーズクッションに身を沈め、ボーッとしている分には心地よい。
次の大空間は、24m×4.5mの大画面&高解像度のLEDディスプレで、ライヴ映像に没入するという趣向。
投影されるミュージシャンは、TM NETWORK、YOASOBI、THE YELLOW MONKEY、角野隼斗、nævis(ナイビス)、UVERworld。
7月に行われた角野隼斗の武道館公演は、観に行けなかったが、どんなものだったのか興味を持っていたので、この機会に映像を見ることが出来たのは、ありがたい。
それ以外だと、やはり、私の世代だと、THE YELLOW MONKEYのパフォーマンスのカッコ良さに痺れる。逆に、TM NETWORKは(もちろん、音は好きだが)ライヴ映像は、時代について行けてない感が痛い…。そして、この幅広のLEDディスプレイを最も効果的に使った編集をしていたのが、UVERworld。これまで、ほとんどチェックしていなかったミュージシャンだが、ちょっと見直してしまった。
その他、水曜日のカンパネラのメンバー、ケンモチヒデフミがプロデュースする「木曜日のカンパネラ("水曜日のカンパネラ"の世界観をAIで1日先まで拡張)」の音響と、ファイバービームによる光の演出を体験する空間など。
まぁ、全体を通して、いかにも「意識高い系の人が企画した音楽空間」という面倒くささが鼻につくイベントではある。やたらとカッコつけてる割には、展示の全てが予想の範囲内というのはキツい。
ということで、私としては微妙な評価ではあるが、流れていた素材自体はハイ・クオリティなので、退屈はしなかった。