IN/OUT (2024.10.20)

ようやく秋になったかと油断したら、またも真夏日。本当に、冬は来るのか? という気すらしてきます。


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「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版」24.10.14

「ゲゲゲの鬼太郎」の劇場版アニメを観てきた。

邦画はあまり観ないのだが、これは、昨年の公開時の評判が良く、気になっていた作品だ。今回、327カットのリテイクと音声の再ダビングを施し、「真生版」として公開されたのを機に、観ることにした。なお、昨年公開版は、PG12指定だったのに対し、真生版はR15+指定。お子様観客を完全に切り捨てていることに、期待大である。

舞台となるのは昭和31年の僻地の村。主人公は、鬼太郎の父(幽霊族の末裔だが、目玉おやじになる前の、普通の人間の姿)と、水木(こちらは普通の人間)。この2人は、それぞれの目的を持って村を訪れたのだが、村を仕切る一族が秘める闇を前に、共闘していく。

予想通り、いや、予想以上に、お子様向け要素を排除したハードな物語だった。映画の冒頭とラストに鬼太郎と猫娘が登場するが、これが無ければ、因習にとらわれた旧家を舞台に展開する、横溝正史ばりのドロドロした連続殺人に、妖怪要素を加えた、ホラー・ミステリー&アクションだ。鬼太郎の父と水木のバディ感も熱い。そして、さすがはR15+指定。残虐描写も容赦無し。アニメにありがちな、楽屋落ち的な脱力シーンが無いのも好感。

実写で製作すれば一級のエンターテインメント作となりそうなストーリーだが、それ以上に感心したのが、映画的な映像表現だ。どのシーンも、カット割りや画角に凝っていて、本当に実写で観たくなる。

その一方で、映画のラストは、「墓場鬼太郎」の鬼太郎誕生エピソードと繋がり、ゲゲゲの鬼太郎の物語としても、きちんと成立している。水木(登場人物)が、太平洋戦争で玉砕命令を受けながらも生き延びた経験から、強烈な上昇志向を持っているという設定が、水木しげる(原作者)の戦争体験とシンクロしているのも深い。

ということで、高評価も納得の、良作だった。


「宮本美季 "ミッケナナ" JAZZ IT UP! - Birthday Bash 2024 -」@ コットンクラブ24.10.18

コットンクラブシンガーソングライター 宮本美季が、彼女が率いるプロジェクト”ミッケナナ(miki et nana)”と共に行うライヴを観に、コットンクラブに行ってきた。

ミッケナナのメンバーは
・宮本美季 (vo
・竹田麻里絵 (p
・小西佑果 (b
・西川彩織 (ds
加えて、ゲスト・プレイヤーに
・米澤美玖 (ts
・渡邉瑠菜 (as

実のところ、宮本美季についての予備知識はゼロ。私のお目当ては、The Jazz Avengersのメンバーである竹田麻里絵、米澤美玖、そして、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラでお馴染みの渡邉瑠菜である。なお、この日は、10月生まれの宮本美季と竹田麻里絵の誕生日祝いのライヴになっている(私は、竹田麻里絵と同じ誕生日なのだ)。

まずは、ゲスト・プレイヤーの2人によるサックスから演奏開始。そして、宮本美季の歌唱。確かに上手い。シンガーソングライターだけでなく、ヴォイス・トレーナーとしても活躍しているだけに、声量も、表現力も、凄い。凄いと思うのだが、私の苦手とするタイプのヴォーカリストだ(露骨なまでに”歌ウマ!”という歌手は、敬遠しがち。スイマセン)。

冒頭2曲で、ゲスト・プレイヤーは、一旦、退場。ミッケナナの4人の演奏が続く。皆、上手い。竹田麻里絵のピアノは本当に器用だし、小西佑果のベースと西川彩織のドラムスは、実に的確なプレイという感じ。結果、バンドの方ばかり見てしまう。演奏されるのは、オリジナル曲の他、Nina Simoneの”My Baby Just Cares for Me"などのスタンダード・ナンバー、服部良一の「胸の振り子」などの日本のジャズなどなど。中でも、Earth, Wind & Fireの"Fantasy"をボサノヴァ・アレンジで演奏(米澤美玖も参加)したのは、とても印象的だった。

終盤は、ゲストの2人も参加し、サックスを吹き倒す。カッコ良し。これが観られただけで、チケット取得の価値は十分だ。

コットンクラブアンコールはミッケナナの4人だけで演奏し、最後の挨拶のところで、米澤美玖が”Happy Birthday to You”を吹きながら登場。ファンの方が手配したという誕生日ケーキと花束が贈呈され、にこやかに大団円。中々に興味深いライヴだった。


"JOYCE MORENO with special guest EDMAR CASTANEDA" @ ブルーノート東京24.10.19

ブルーノート東京ブラジリアン・ミュージックの女王と称されるJoyce Morenoのライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。上原ひろみとの共演で強烈な印象を残したEdmar Castaneda(ハープ)がゲスト・プレイヤーとして参加しているのだ。

メンバーは
・Joyce Moreno(vo,g
・Tutty Moreno(ds
・Rodolfo Stroeter(b
・Helio Alves(p
そして、スペシャルゲストに
・Edmar Castaneda(harp
という布陣。

まずは、4人で演奏開始。ベテラン揃いらしい、なんとも余裕のある贅沢な音だ。特に、Tutty Moreno(プライベートでもJoyceのパートナー)のドラムスは、機材の数は最小限。バスドラも小さく、手数も少ない。それなのに、見事にバンド・サウンド全体を支えている。常ににこやかな表情のRodolfo Stroeterのベースも、派手さは無いが堅実なプレイ。一方、Helio Alvesのピアノは流麗なテクニック。このバンドに乗っかるJoyceのギターとヴォーカルはどこまでも軽やか。

中盤から、Edmar Castanedaが参加。まずは、バック・バンドの一員としてプレイするが、早速、ハープの概念を覆す超絶技巧が炸裂。Joyceのギター&ヴォーカルとの相性も良い。そして、他のメンバーが退場し、テクニックを見せつけるようなソロを1曲。さらに、もう1曲、Helio Alvesのピアノとの共演。ステージの左端のピアノと右端のハープ。距離は離れているが、アイ・コンタクトを交わしながらグングン盛り上がっていく即興の応酬。実にカッコ良い。左手でベース・ラインを、右手で高速メロディを紡ぎ、時には弦や胴体を打楽器のように叩き、エフェクターも駆使する。Edmar Castaneda、唯一無二のハープ奏者だ。

そこからは、Edmarを加えた5人での演奏が、アンコールも含め、最後まで続く。Edmar目当てで来た私としては嬉しいが、彼以外も、全員のプレイが加速度的に盛り上がっていく。もちろん、Joyceのスキャットも、その軽快な味わいを増していく。大人のおしゃれ感満載のライヴだった。


"Voltes V: Legacy - The Cinematic Experience"24.10.20

T-Joyプリンスシネマ1977年のアニメ「超電磁マシーン ボルテスV」の、実写化フィリピン映画を観てきた。

このアニメ、当時、フィリピンでもオンエアされ、大人気となった(マルコス大統領による放送禁止など紆余曲折はあったらしいが、最高視聴率 58%を記録。1999年の再放送時にも40%以上の視聴率)。そして、2023年になって、まさかの実写化。TVシリーズが製作・放映され、さらに、映画化もされた。その作品が、ついに日本で凱旋公開である(個人的には、前作「超電磁ロボ コン・バトラーV」の方が好みなのだが…)。

驚くほど、オリジナルのアニメ・シリーズに忠実な実写化だ。ストーリー、キャラクター、そして、カット割りなど細部まで、丁寧に再現している。ただし、映画としては、駄作と言わざるを得ない。TVシリーズのダイジェスト版(物語初期の、剛三兄弟 - この映画では、Armstrong兄弟 - の母親が特攻で犠牲になるところまでが描かれている)という情状酌量要素はあるが、ストーリー、キャラクター設定、演出、全てが、大スクリーンで観るには耐えられない。

ただし、オリジナルに忠実に実写化された「超電磁ストリング」&「超電磁ゴマ」、そして、必殺の「天空剣・Vの字斬り」は、見応え有り。

そして、なんと言っても、「ボルテスVの歌」をバックにボルトマシンが合体するシーンが熱い。もう、このシーンを大スクリーンで観せていただいただけで、実写化してくれてありがとう、なのである。これで、「ボルテスVの歌」が、オリジナルの堀江美都子によるものだったら、言うこと無かったのだが…。さすがに、Julie Anne San Joseがカヴァーした新録音(ただし、歌詞は日本語のまま)ではあるが、原曲の素晴らしさは損なわれていない。名曲!



一方で、北海道では例年より早い初雪を観測したようで、いよいよ、訳が分からない……