IN/OUT (2023.8.6) |
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恐らく、今夏で一番暑かった週に、一週間の夏休みでした。 最近のINNIFREL (23.8.3)千里万博公園内にある「生きているミュージアム」、NIFRELに行ってきた。コンセプトの「感性にふれる」から名付けられた施設で、大阪の「海遊館」が展示プロデュースをしているという。2015年の開館以来、興味はあったのだが、ようやく行くことができた。 館内は、いくつかのゾーンに分かれている。最初は、「いろにふれる」。水槽毎に、色合いを統一させた展示である。最近の、大型の水槽で迫力ある展示という水族館のトレンドとは真逆の、小型の水槽が、壁際ではなくフロア内に配置されている。確かに「ふれる」というコンセプト通りだ(もちろん、物理的に接触できる訳では無い)。これはこれで良い見せ方だと思うのだが、水槽が円筒形なのが、ちょっと嫌。観察対象が歪んで見えてしまうのは好きでは無いな。 「わざにふれる」はテッポウウオ、キンチャクガニ、モンハナシャコなど、一芸に秀でた生物の展示。ヒラメが砂に潜るのだって、立派なわざなのである。 次の「およぎにふれる」は、照明を落とし、魚の泳ぐ姿と水の波紋を美しく見せようというコーナー。面白い見せ方だとは思うが、ちょっと凝りすぎだと思う。暗いというだけで怖がっているお子様も多数… 「かくれるにふれる」のコーナーは、タツノオトシゴやウツボなどの魚類の他に、カエルやカメレオン、ナナフシなど、異形の生物が多数。 次の「みずべにふれる」から、いよいよNIFRELの本領発揮という感じ。外光を取り入れた開放的な大空間に、水辺に暮らす生き物が展示されている。檻では無く透明のアクリル板で仕切られているので、ホワイトタイガーも間近だ。 さらに、「うごきにふれる」のコーナーになると、アクリル板の仕切りも無く、小動物達と同じ空間で、彼らが自由に動き回るのを体感できるという趣向。コツメカワウソ、パルマワラビー、ゾウガメなどなど。 中でも、一番目立っているのは、ワオキツネザル。 オニオオハシ、オウギバト、クジャクなど、鳥類も多数。他の施設だと、人気No.1になりそうなケープペンギンもいたが、ここでは目立たないな。 マイ・ペースのカピバラと、傍若無人なワオキツネザル。観客と身近に接している割には、動物たちはリラックスして暮らしているようだ。 6月2日にビーバーの双子が産まれたそうなのだが、小屋の中に入っていて、視認できなかったのは残念。 規模の巨大さを追うことなく、小さな生物の見せ方を工夫し、水辺の動物も展示しているところなど、雰囲気としては川崎水族館に近いと感じたが、それ以上に洗練された施設だと思う。説明パネルに、俳諧調のフレーズが付いている(監修は、夏井いつき)のも、気が利いている。アート空間「WONDER MOMENTS」など、ややコンセプト先行過ぎると感じるところもあったし、生物の飼育環境としては狭すぎるのではないかという心配もあるのだが、全体的には好印象。再訪したいと思う。 「フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン」@ 東京都庭園美術館 (23.8.4)フィンランドのグラスアートの展覧会を観に、夕方の東京都庭園美術館に行ってきた。都立の文化施設(東京都美術館・東京都写真美術館・東京都現代美術館・東京都渋谷公園通りギャラリー・東京都庭園美術館)で、7月20日~8月31日の間の毎週金曜の夜に行われている「サマーナイトミュージアム 2023」の一環として、通常 18時閉館のところ、17時~21時まで割引料金で入場できるのである。併設の庭園も同じ時間帯に観覧可。夏の夜にピッタリの好企画だ。 今回の展覧会は、フィンランドのデザイナーが「アートグラス」としてデザインし、職人との協働作業によって製作された作品、約140点が展示されている。1917年のロシアからの独立後、国民のアイデンティティ確立のために推進されたモダニズムの中、芸術性の高いガラス製品が作られるようになったという。確かに、この国には、iittala、NOKIA、marimekko、Artekなど、デザイン性の高いプロダクツで有名な企業が多数存在している。さらに、周辺の国々も含めた北欧デザイン人気を考えると、豊かで幸福度が高いと言われる北欧の国々の人々が持つ美意識とは、大したものだと思う(IKEAブームの結果、逆に有り難みが減ったような気もするが…)。 旧朝香宮邸の中に置かれた美しいガラス器の数々。素晴らしい雰囲気なのは言うまでも無い。トナカイなど、北欧らしい模様が描かれている物も多い。 展示品の多くには、ガラス工芸の展示では一般的な転倒防止のテグスが貼られていないし、ガラスケースにも入れられていない。これによって、雰囲気がさらに高まっている。主催者の英断だ。 18時過ぎの、日が沈みかける頃に訪れたのだが、外が真っ暗になる時間帯の雰囲気も良かったかもしれないとも思う。 こちらの展示も見応えはあるのだが、やはり、東京都庭園美術館の魅力は、アールデコの本館と、そこに展示される作品との相乗効果だと、つくづく思ったし、毎回、その効果を最大限に発揮させているキュレーター氏、素晴らしい手腕だと思う。 酷暑の中、涼やかさを感じられる、良い展覧会だった。 「若葉台 夕涼みジャズライブ 桑原あい Solo Piano Live」@ 稲城市立iプラザ (23.8.5)稲城市立iプラザは、京王電鉄相模原線 若葉台駅(駅の住所は、神奈川県川崎市だが、東京都との県境に当たり、北口側は東京都稲城市)近くにある施設。ぱっと見は、地方都市にありがちな複合施設で、図書館と市役所の出張所、そしてホールがある。しかし、キャパ 410席のホールに入ると、木材を多用した雰囲気の良い空間で、音響も中々優れている。 関東でのソロ・ライヴは久しぶりという桑原あい。1曲目「Over the Rainbow」からライヴ・スタート。たっぷりとアレンジを加えた演奏だ。Egberto Gismontiの「Loro」、Bill Evansの「Waltz for Debby」、Ennio Morriconeの「New Cinema Paradise」、Michel Legrandの「Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)」、そしてDuke Ellington楽団でお馴染み「Take the 'A' Train」と、途中に1曲だけオリジナル作「Somehow It's Been a Rough Day」を演奏した以外は、スタンダードで攻める。あまり、コアな客層では無いことを予想しての選曲かもしれないが、演奏自体は、独自のアレンジとテクニックをしっかり聴かせる。特に「A列車で行こう」は、実際にニューヨークで乗った地下鉄A系統の、臭さ、汚さ、運行のいい加減さに衝撃を受けてアレンジを思いついたというワイルドなプレイ。楽しい。 本編ラストは、Joni Mitchellの「Both Sides now」。アンコールは、The Beatlesの「Here, There and Everywhere」とThe Monkeesの「Daydream Believer」をつなげて演奏。90分間ほどの短めのステージだったが満足度高し。 どうしても「若手」という印象を持ってしまう桑原あいだが、1991年生まれで、ファースト・アルバムは2012年に発売ということで、しっかり中堅の域に達してきている。とても器用な人だと思うが、演奏の緩急・迫力は、ライヴを観る度にレベル・アップしているように感じ、今後も楽しみなミュージシャンだ。 これだけ暑いと、外出しても、ベンチに座っていたり、喫茶店に入ったりで、稼働時間は短い。まあ、一般的なお盆休みとはズレているので、そこまでの人混みに遭遇せずに済むのはありがたいですが。 |