IN/OUT (2023.7.30)

毎年毎年、今年は暑い、と言い続けているような気がしますが、それでも、今年は暑い。そろそろ、東京の夏を生きていくのは、生物として限界に近づいているのではないかしらん。


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「~寺井尚子35周年スペシャル~ 寺井尚子カルテット “ザ・プレシャス・ナイト 2023” at ブルーノート東京」23.7.28

ブルーノート東京今年でデビュー35周年となる寺井尚子のライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。北島直樹(ピアノ)、仲石裕介(ベース)、荒山諒(ドラムス)を従えた、お馴染みのカルテットである。

Richard Gallianoの「Tango Pour Claude」で演奏開始。冒頭から、前回、ティアラこうとうで観たときとは、演奏の勢いが違う。もちろん、会場の大きさや、私自身とプレイヤーとの距離(今回は、1.5mぐらいの超至近距離での鑑賞)の影響も大きいと思うし、前回は、特別ゲストの北村英治を立てることにも気を配っていたというのもあるだろう。とにかく、寺井尚子の「弾き倒す」感じと、荒山諒のドラムスの熱量が、桁違いだと感じる

北島直樹や荒山諒の作品、北島直樹アレンジの「リンゴ追分」、そして、ティアラこうとうでも演った、メンデルスゾーンの「Violinkonzert e-moll Op.64(ヴァイオリン協奏曲)」。特に、この曲の中間部、ジャズ・アレンジ・パートのドラム・ソロがえげつないほどのパワー。その分、クラシック調に戻った時のしなやかさが引き立つ、ドラマチックな演奏だ。さらに、ミュージカル「エリザベート」から「私だけに」の繊細さも見事。

本編ラストは「Spain」。様々なミュージシャンのヴァージョンで聴いてきたChick Coreaの名曲だが、寺井尚子カルテット版、かなり、と言うか、とても好きである。

アンコールは、「Albinoni - Adagio in G minor(アルビノーニのアダージョ)」を情感たっぷりに。そして、「Fascination(魅惑のワルツ)」を軽やかに披露して、全編終了。寺井尚子の弾き倒す様を堪能した。


"De uskyldige / The Innocents"23.7.29

ノルウェー製のスリラー映画を観てきた。邦題は「イノセンツ」

舞台は、オスロ郊外の団地。そこで暮らす9歳前後の4人の子供達が、不思議な力に目覚める。「団地」と「子供」と「超能力」。そう、これらのキーワードから想像される通り、監督のEskil Vogtは、大友克洋の「童夢」からインスピレーションを得たということだ。そう聞くと、観ない訳にはいかない。

観てビックリ。これは、大傑作だ。夏休み期間で、ほとんどの住人はヴァケイションを取ってサマーハウスなどに出かけ、閑散とした団地で、主要登場人物の4人の少年・少女が出会う。その子供達のキャラクター設定が巧み。軽い念動力を持った少年。テレパシーを持った少女。そして、主人公の姉は自閉症で、自分の感情を他者に伝えることが出来ないのだが、やはり、何らかの能力を持っているらしい。唯一、主人公の少女だけが、特殊能力は持っていない。夏休み期間、ヴァケイションに出かけず、団地に残っている時点で、少年・少女達の家庭が何らかの問題を抱えていることが暗示されている(主人公の家庭は、姉の自閉症がそれに当たる)。そして、彼らが出会い、交流を重ねる中、(主人公以外の)超能力は増幅していく。恐らく他者のパワーを増幅させるのは、自閉症の姉が秘めた超能力の一つなのだ。そして、強まった能力を邪悪な方向に使う者が現れ…、という物語。

子供が持つ無邪気な残酷さが容赦なく描かれ、次に何が起きるのか、全く予想が付かないのが、とにかく怖い。直接的なスプラッター描写は殆ど無いが、心理的に追い詰められる怖さに満ちている。

そして、終盤の、超能力に目覚めた者同士のサイキック・バトルが凄い。ヴァケイション・シーズンが終わりに近づき、住民と共に日常生活が戻ってきた団地で、周囲の大人達が全く気づかない中、超能力少年少女の、静かで熱い戦いが繰り広げられるのだ。ストーリーこそ違っているが、これはまさに、大友克洋が「童夢」で描いた世界そのものだ。抑制の効いた特殊効果の使い方が実にカッコ良いし、正直、それまで感情移入しづらかった主人公姉妹のキャラクター設定が見事に活きている。

久々に、見終わった後も、ずっと興奮が収まらない映画だ。これ、邦題は「シン・童夢」としても良いと思うな。上映館が限られているのが残念だが、多くの人に観てもらいたい。ただし、ハリウッド映画ではあり得ない、猫ちゃんが可愛そうな目に遭うシーンがあるので、愛猫家の方々は要注意だが。



勤務先は、来週一週間が夏期休暇。諸々リフレッシュ出来るのはありがたいけど、どこに出かけるにも暑そうなのがねぇ…