IN/OUT (2023.6.25)

今週は、1週間に2人の90代ミュージシャンのライヴを堪能ということになりました。お二人とも、全くボケ知らず。ライヴ活動を続けることが若さを保つ秘訣となっているようで、素晴らしいと思う一方で、自分も健康に気をつけないと、好きな年上ミュージシャン達よりも、自分が先に倒れそうだと心配にもなる今日この頃です。


in最近のIN

「穐吉敏子 Solo Live」@ヤマハホール23.6.19

ヤマハホール93歳にして、日本全国8カ所のライブ・ツアーを敢行したジャズ・ピアニスト 穐吉敏子。その最終公演を観に、銀座ヤマハホールに行ってきた。

小学校1年からピアノを習い始め、10代で駐留軍キャンプでの演奏を開始。1956年、26歳で渡米。バークリー音楽院で日本人初の奨学生として学び、米国での演奏活動開始。夫のLew Tabackinと共に結成した「秋吉敏子=ルー・タバキンビッグバンド」が、米国のジャズ専門誌で5年連続で批評家投票の1位を獲得。彼女自身も、ビッグ・バンドの作編曲者として高い評価を受けてきた。海外で、自らの実力だけで道を切り開いた日本女性の先駆者とも言える、

舞台に登場した穐吉敏子。さすがに足取りは頼りないが、彼女自身の作品「Long Yellow Road」で始まった演奏はお見事。超絶技巧やド迫力の演奏と言うわけでは無いが、一音一音を的確に自信を持って奏でているという印象。そして、意外にも右足のキックが力強く、ハッとするフレーズがしばしば顔を出す。これが、70年以上ライヴを続けてきたことで醸成された迫力だ。そして、曲の終わりは、毎回、チャーミングな表情で演奏を締めるお茶目さも併せ持つ。合間のMCで、米国ジャズ・ミュージシャンの裏話を超自然体で話す姿には、ジャズの歴史の生き証人という風情もある。まさに彼女自身が、ジャズ・レジェンドだ。

途中に20分の休憩を挟んだ二部構成。自作曲だけでなく、バッハの「2声のインヴェンション」なども披露。本編最後は、平和へのメッセージを込めた組曲「ヒロシマ〜そして終焉から」の第3楽章をもとにした「Hope」。アンコールは「月の沙漠」。最後まで、しっかりしたプレイだ。

ということで、演奏のクオリティは、予想以上。そして、何よりも彼女の存在感に圧倒されたライヴだった。


「落語とJAZZのSpecial Night 春風亭小朝と寺井尚子 & 特別ゲスト北村英治」@ティアラこうとう23.6.23

ティアラこうとう春風亭小朝がプロデュースする、落語とジャズを楽しもうというイベントを観に、江東区江東公会堂(ティアラこうとう)に行ってきた。

第一部は落語の部。前説を兼ねて登場したのは、のだゆき。鍵盤ハーモニカを使った音楽漫談。東京音楽大学大学院修了という異色の経歴を持つ芸人だが、んー、爆笑とは行かないか…。そして、春風亭小朝の落語「猫の茶碗」~「千両みかん」。

15分間の休憩後、私のお目当て、ジャズの部。まず、前座として春風亭小朝が登場。北島直樹のピアノをバックに、横笛演奏。「Over the Rainbow」と「ウサギ to the Moon(童謡「うさぎ」とスタンダード「Fly Me to the Moon」を合体)」。中々に器用な人だ。

そして、寺井尚子登場。北島直樹(ピアノ)、仲石裕介(ベース)、荒山諒(ドラムス)のレギュラー・メンバーによるカルテットだ。Richard Gallianoの「Tango Pour Claude」で演奏開始。私の大好物、Pat Methenyの「James」、さらに、メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」は、クラシック調のスタイルから始まり、ジャズ・アレンジに突入する見事な演奏。そして、ミュージカル「エリザベート」から「私だけに」。

ここから、特別ゲスト 北村英治が参加。月曜日に観た穐吉敏子と同じ1929年生まれだが、。誕生日が12月の穐吉敏子が93歳だったのに対し、4月生まれの北村英治は94歳!しかし、見た目の若々しさは北村英治の圧勝だ。かなり以前から、白髪の紳士という感じだったが、その印象が全く変わっていない。足取りも、喋りも、しっかりしたものだ。「Memories of You」で始まった演奏も素晴らしい。そして、本編ラストは「Sing, Sing, Sing (With a Swing)」。寺井尚子と北村英治のアドリブの掛け合いが楽しい。寺井尚子は、終始、北村英治の表情や指使いに注意を払って、彼に気持ち良く演奏して貰うことに気を配っている様子だし、それに応える北村英治の楽しそうな表情が素敵だ。

アンコールも、寺井尚子カルテット&北村英治で「On the Sunny Side of the Street」。これで全編修了。

古き良きスタンダード・ナンバーを、ベテランの凄みを見せつけながらも嬉しそうに演奏する北村英治と、彼に寄り添いつつ、しっかり盛り上げる手練れの寺井尚子カルテット。楽しく、かつ、高い音楽性のライヴを堪能、落語家としてはあまり私の好みではない春風亭小朝だが、彼のプロデュース力には、大感謝である。


”The Flash”23.6.24

DC Extended Universeの新作を観てきた。今回は The Flashをメインに据えたスーパーヒーロー映画である。

物語には、マルチバースとタイム・ループという、今どきのアメコミ系映画で散々使い回されている設定が深く関わっている。それも、先週観た”Spider-Man: Across the Spider-Verse”のような斬新さは無く、はいはい、またこのパターンですか、と言いたくなる陳腐な設定だ。ただ、主人公が最後に下す決断の重さは、結構、胸に迫るものはあるのだが。

タイトルだけ観ると、The Flashが単独で活躍する作品のようだが、実際にはBatman(懐かしのMichael KeatonがBruce Wayne役に復帰!)や、Supergirlも大活躍。マルチバースとタイム・ループの陳腐さに目をつぶれば、ストーリーは分かりやすい胸熱展開ではある。

しかし、一番の見所は、マルチバースでの可能性として提示される様々なDCヒーロー達だろう。George Reeves(1951年のTVシリーズのSuperman役)、Christopher Reeve(1978年からの映画化シリーズのSuperman役)、さらにはNicolas Cageが演じるSupermanも画面に登場。Helen SlaterのSupergirlの姿も拝めるのだ。古くからのアメコミ映像化作品好きには堪らない。

ライバル MCUに大きく後れを取ったDC Extended Universeだが、ここにきて、これまでの迷走ぶりから脱却。大河ドラマ路線が明らかになってきたと思う。頑張っていただきたいところだ。個人的には、カメオ出演の扱いではあるが、Gal Gadot様のWonder Womanのお美しいお姿を観ることが出来ただけで、もう、この作品も傑作認定なのである。



とは言え、健康重視に振った生活習慣を根付かせる努力が、中々続かないのですよねぇ…