IN/OUT (2023.7.16) |
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今のままでは、近い将来、キレる高齢者になりそうな(と言うか、なりつつある)自覚が増してきた今日この頃。加齢の影響だから仕方ないと開き直らず、6秒ルールを意識しなければ… 最近のIN"60th Birth Celebration of ERIC MIYASHIRO" with BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA @ ブルーノート東京 (23.7.13)ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラのリーダー兼音楽監督、エリック・ミヤシロ。彼の60歳の誕生日を自ら祝うライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。 メンバーは エリック・ミヤシロ(トランペット)、本田雅人(サックス)、小池修(サックス)、鈴木圭(サックス)、庵原良司(サックス)、渡邉瑠菜(サックス)、小澤篤士(トランペット)、川上鉄平(トランペット)、具志堅創(トランペット)、松井秀太郎(トランペット)、半田信英(トロンボーン)、高井天音(トロンボーン)、藤村尚輝(トロンボーン)、小椋瑞季(トロンボーン)、宮本貴奈(ピアノ)、川村竜(ベース)、川口千里(ドラムス)。今回も、まさにオールスターである。 エリック・ミヤシロは、ハワイ生まれの日系三世。1989年に来日し、スタジオ・ミュージシャンとして、また、ビッグ・バンドのリーダーとして活動を続けている。ブルーノート東京で何度も演奏を観ているが、力強い高音を特長とするトランペッターとして、また、ビッグ・バンドのアレンジャーとして優れているだけでなく、ステージ上での振る舞いからは、その人柄の良さも伝わってくる。 「ロッキーのテーマ」で開演。今回は、MCでエリック・ミヤシロが自身の生い立ちをたっぷり語りながら、思い入れを持っている曲を演奏していくという趣向、「Nite Sprite」、「Good News」。ここで、観客席にいたピアニスト、クリヤ・マコトを舞台に呼び、即興で演奏に参加させる。川口千里の煽るようなドラムスに応え、見事なアドリブ。楽しい! 彼自身の作曲「Pleiades」。そして、本日のサプライズ・ゲスト、石丸幹二登場!実際に間近で観ると、TVよりも遥かにイイ男。そして、イイ声。想像以上のハンサムぶりに驚いた。ビッグ・バンドをバックに「ラ・マンチャの男」を歌い上げる。 エリック・ミヤシロが、今、ハマっているというSnarky Puppyの「What about Me」。宮本貴奈のキーボードと川口千里のドラムスの掛け合いが実にスリリング。 サプライズ その2で、小野リサ登場!「Look to The Rainbow」。この人の声の優しさは、他に類を見ないなぁ。 本編最後もSnarky Puppyで「Lingus」。 アンコール。まずは、ブルーノート東京のスタッフが誕生日ケーキをステージに運んできて、エリックがロウソクを吹き消す。さらにスタッフの一人がピアノを弾いて、会場皆で「ハッピー・バースデイ」を合唱というお楽しみタイム。ブルーノート東京スタッフも、たどたどしいながらも、ちゃんとピアノ弾けるじゃないかと思っていたら、突如、超絶テクのアドリブをぶち込んで来る。驚いていると、ここで、マスクとカツラを取って正体を現したのは、ブルーノート東京スタッフに変装していた小曽根真!!これには、観客もエリック・ミヤシロもビックリ。完全なサプライズだ。しかし、そこは超一流揃いのミュージシャン達。そのまま、全員で、アドリブたっぷり「ハッピー・バースデイ」の演奏になだれ込む。さらに、小曽根真がいるなら、ということで、急遽、「Spain」を演奏。皆の表情を見る限り、これは仕込みではなくて、本当に突然の演奏曲追加のようだが、全員、見事に決めるべきところをバッチリ決めるジャズ大会。つくづくカッコ良いミュージシャン達だ。特に、自分の居場所を奪われた形の宮本貴奈が、グランドピアノを弾く小曽根真とアイコンタクトしながらキーボードを演奏する姿に痺れる。 そして、小曽根真退場後、元々用意してあったアンコール曲「Birdland」。エリック・ミヤシロの息子(音楽大学の1年生)も参加。さすがの鉄板曲。本当に楽しい演奏だ。 ということで、エリック・ミヤシロ自らが仕込んだサプライズ・ゲストに、本当のサプライズ・ゲストも乱入する、超豪華なライヴを堪能。いやはや、ここまで徹頭徹尾楽しいライヴは滅多に無い。これも、エリック・ミヤシロの人柄があってこそだと思う。 あと、個人的には、私の目の前が川口千里で、彼女の超高速でありながら爽やかさも感じるドラムス・プレイを目と耳で堪能出来たことも、多幸感を増し増しにしてくれた。 "Oh Marlene! Jazzn'Pop featuring Kuriya Makoto" @ ブルーノート東京 (23.7.14)マリーンは、フィリピン出身。15歳でプロ・デビューし、1979年、19歳で日本デビュー。実力派のジャズ・フュージョン系の歌手として活躍を続けている。私の世代だと、カメリア・ダイアモンドのCM曲「ザンジバル・ナイト」の印象が強かったりするのだが、ライヴを観るのはこれが初めてだ。 バックは、前日のステージにサプライズで登場していたクリヤ・マコト(ピアノ、キーボード)。さらに、友田ジュン(キーボード)、高橋佳輝(ベース)、守真人(ドラムス)、MARU(コーラス)、DAISUKE(コーラス)。因みに、クリヤ・マコトは、2013年のアルバム「マリーン・シングス・ドナ・サマー」のプロデューサーである。 パフォーマンスは、Donna Summerの「Hot Stuff 」でスタート。1970年代後半から1980年代にかけての、Giorgio MoroderプロデュースのDonna Summerの一連のヒット曲は、私の大好物だ。というか、これを目当てに来たライヴなので、1曲目から嬉しい。歌い終わったマリーンは「この歳になるとキツい!」と言っていたが、声質も声量も衰え知らず。この後、本人曰く「ちゃんこ鍋のようなセットリスト」ということで、Chaka Khan、Tina Turner、Dionne Warwick、Whitney Houstonらの名曲の数々を歌いまくる。硬質な声で、繊細さよりもパワーで魅せるタイプだと思うが、曲の途中、オフ・マイク(それでも会場中に届く声量!)で聴かせる表現力は、素晴らしいと思う。 そんな中、個人的には、中盤に披露してくれた極私的偏愛曲、Donna Summerの「MacArthur Park」に大興奮である。マリーンの歌声だけでなく、クリヤ・マコトのアレンジ&キーボード・プレイも実にツボを突いてくる。本当に名曲だよなぁ。 本編ラストもDonna Summer「Last Dance」。そして、アンコールは、マリーン最大のヒット曲「マジック」(THE SQUAREの「It's Magic」のカバー。1983年発売)。盛り上がる事必至の鉄板曲に、会場に詰めかけている多くの同年代女性達が踊りまくる姿も壮観だ…。こういうファン層だったのか…(個人的には、苦手…) バンド・メンバー全員が挨拶し、ステージを去りかけるが、止まらない拍手に、マリーンとクリヤ・マコトの二人が残り、ダブル・アンコール。これは予定外だったようだが、そこは名コンビ。「Left Alone」(1986年の角川映画「キャバレー」の挿入歌。オリジナルはBillie Holiday)でしっとりと締める。その前が盛り上がりすぎてカオス状態になっていたので、丁度良いクールダウンになったと思う。 最近のOUT”Rangasthalam” (23.7.15)”RRR”でお馴染みRam Charanが主演した2018年の映画を観てきた。邦題は、そのままカタカナで「ランガスタラム」。 舞台は、1985年、インドの田舎の村。その村は、金貸し兼地主の男の支配下に置かれている。彼が持つ権力の強さのため、他に村長に立候補する人が現れず、30年以上、地主のやりたい放題になっているのだ。Ram Charanが演じる主人公は、難聴という障碍は抱えているが、その村で陽気に暮らしている若者だ。主人公が一目惚れした女性との恋の駆け引きと並行して、主人公の兄が、地主の強欲な振る舞いに反旗を翻し、村長選挙に立候補する様が描かれる。 が、そこはインド映画。ストーリーの時系列を敢えて複雑に編集し、様々なサイド・ストーリーが絡み合う。さらに、ラストで意外な犯人が暴かれるミステリー映画でもあり、カースト制度に対する批判という社会派メッセージも含まれるという、雑多な要素がてんこ盛りの174分間。もちろん、要所要所で、ご陽気ミュージカル・シーン(最近のインド映画ではかなり「ベタ」な部類だ)。まあ、これらの要素は、インド映画好きの私としては望むところだ。 問題は、主人公のキャラクターだ。普段は明るい人なのに、キレると徹底的に暴力的になる。殆どの村人にはバレているのに、難聴を隠そうとし、他人の言っていることが聞こえていなくても聞こえているかのように振る舞って、さまざまなトラブルを引き起こす。それが分かっているのに、まったく反省しない姿にイライラする。兄が補聴器を買ってくれたのに、当初は「難聴がバレるから」という理由で着用を拒否するのだ。因みに、この難聴設定が、最後のミステリーの謎解きで生きてくるというのも、中々の無理矢理ぶり。 ということで、私には全く感情移入できない主人公が駄目だった。”RRR”の大ヒットで、二匹目のドジョウを狙った公開だと思うが、この映画は逆にブームに水を差さないか、心配になってくる。 加齢の影響は、存在感の希薄化にも表れているのか、ブルーノート東京に行くと、かなりの確率で、オーダーを忘れられてしまいます。延々待って、周囲のお客さんのところに二巡目のオーダーが運ばれる頃、しびれを切らしてホール・スタッフに確認してみる、というパターン多し。ここで、キレたり嫌みな言い方にならないように気を付けるのが、良い修行になっていると捉えるべきかな。 |