IN/OUT (2023.4.23)

暑くも無く、寒くも無く、ヒノキ花粉も減ってきて、投票日日和という感じの週末でした。


in最近のIN

"Une belle cours"23.4.22

フランスの高名な歌手、Line Renaud(御年94歳!)と、コメディアンのDany Boonが主演した映画を観てきた。邦題は「パリタクシー」。酷いタイトルだが、配給会社は、フランス本国では有名なお二人が出演しているので、シンプルな「美しいコース」という原題でもOKだが、日本では伝わらないと考えたのだろう。

Line Renaudが演じるのは、階段から落ちて脚を怪我したことから、独り暮らしを諦めることになった92歳の女性。彼女を施設まで乗せることになったのが、Dany Boonが演じる、冴えない中年のタクシー運転手。道中、彼女の思い出話を聞かされ、寄り道を重ねる内に、二人の心は通じ合っていく。

ある意味、予定調和的な人情話だが、二人の存在感に説得力があり、すんなり話に入っていける。そこで語られる彼女の人生は、予想以上にハードなものだが、苦境をくぐり抜けたからこそ身についたであろう大らかさが、金欠で免停寸前で家庭生活も危機に瀕しているタクシー運転手の無愛想な態度を溶かしていく様が、しみじみと味わい深い。

唯一の難点は、オチかな。これはこれで、ストーリー上、当然の着地点だとは思うのだが、やや興醒めな気がする。1日だけのお伽噺で徹底しても良かったのではないだろうか。


「東京国立近代美術館70周年記念展 『重要文化財の秘密』」@東京国立近代美術館23.4.22

東京国立近代美術館開館70周年を迎えた東京国立近代美術館で開催中の展覧会を観てきた。明治以降の絵画・彫刻・工芸のうち、重要文化財に指定された作品だけで構成された展覧会である。

重要文化財に指定された美術工芸品は全部で10,820件。しかし、明治以降の作品は68件しかない。そのうち、51件が展示されるという貴重な機会である。同様の展覧会として、昨年、「国宝 東京国立博物館のすべて」があった。なんとなく、企画が被っている気もするし、国宝89点を一挙公開した東京国立博物館に対し、重文51件と、やや見劣りする感じもあるが、果たして…

展示されているのは、高橋由一の「鮭」、岸田劉生の「麗子微笑」、黒田清輝の「湖畔」、高村光雲の「老猿」などなど、さすが、重要文化財。教科書でお馴染みの名品オールスターという感じだ。ある意味、渋すぎる国宝よりもむしろ分かりやすいかもしれない。一方で、どのような作品がどんな経緯で重要文化財に指定されたのかという美術史的観点での解説が充実しているのも、中々に興味深い。

特に、横山大観の「生々流転」が凄かった。山奥の霧が水滴に。そして、渓流となり、大河となり、海へ注ぎ、最後には龍となって天に帰るという壮大な水墨絵巻。全長40m!これが、ドドーンと広げて展示されているのは、壮観。描いた横山大観が凄いのは当然として、これを保存し、展示する美術館スタッフも大したものだ。

なお、同時開催中の常設展「所蔵作品展 MOMATコレクション」もまた、見応えがある。全12室の展示室毎に、小テーマを掲げているのだが、例えば、第2室では「重文作家の秘密」と題して、重要文化財作家の重文に指定されなかった作品を展示。作家の評価をさらに深掘りしていくという趣向。あるいは、第4室「<熱国之巻>の半年前」は、「重要文化財の秘密」に出品されている今村紫紅の「熱国之巻」(1914年、インドを旅した今村紫紅が描いた2巻構成の絵巻物)の取材記とも言えそうな、今村紫紅による印度旅行スケッチ帳。

特別展に因んでいない展示では、第10室「春の屏風まつり」が、桜や花にちなんだ屏風がずらっと並んだ空間で居心地良し。どの展示室にも、学芸員の方々の熱意が溢れているようで、お目当てだった「重要文化財の秘密」以上のヴォリューム感でお腹一杯である。



我が自治体の議員候補者の顔ぶれを見るにつけ、ポピュリズムの面倒くささに頭が痛くなったりもする今日この頃です。多分、日本中、どこの選挙区でもこういうタイプの候補者がいて、それなりに得票するのだろうと思うと、何だかなぁ…