IN/OUT (2023.4.9) |
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Jeff Beck、高橋幸宏、鮎川誠と大好きなミュージシャンの訃報が続く2023年。闘病中だった坂本龍一も、ついに…。 まあ、自分が歳を重ねていけば、若い時に影響を受けた人達が去って行くのは仕方ないことではありますが、皆さん、ちょっと早すぎだと思う今日この頃です。 最近のIN"The Whale" (23.4.8)Darren Aronofsky監督の新作を観てきた。 主演は、Brendan Fraser。1990年代、コメディタッチのアクション映画で人気スターだったが、その後、出演作が減っていた。その理由が、アクションでの肉体の酷使によって何度も手術を受けることになったこと、そして、セクシャル・ハラスメントを(業界の大物男性から)受けたことにより鬱状態になったことだという。苦労人の俳優が、Darren Aronofsky監督作に出演し、復活を果たすというのは、"The Wrestler"のMickey Rourkeを思い出させる。 Brendan Fraserが演じる主人公は、体重272キロという極度の肥満。かつて、家族を捨て、恋人の男性の元に走ったが、その恋人が死んだことで、過食を繰り返し、今や、歩くこともままならない身体になっている。死期を悟った彼は、家族と別れてから会っていなかった17歳の娘を呼び寄せる。しかし、8歳の自分を捨てた彼のことを娘は許していない。というお話。人は他人を本当に救うことができるのか?という重い命題を問いかける。 舞台劇の映画化ということで、全編、アパートの居間だけで映画は進行する。しかし、脚本、カメラワーク、そして俳優陣の演技の妙で、狭苦しさを感じさせないのが秀逸。そして、限定された空間で進行してきたからこそ、ラストの圧倒的な映像が衝撃的だ。まさに映画の魔術という瞬間に、私の涙腺が決壊しただけでなく、観客席のあちこちから嗚咽が…。Darren Aronofsky監督の手腕、恐るべし。 そして、Brendan Fraserの説得力に満ちた演技も、評判通りの見事さ。 さらに、主人公の唯一の理解者である看護士を演じるHong Chauが素晴らしい。彼女には救われて欲しいな。 「エゴン・シーレ展」@東京都美術館 (23.4.8)1890年にウィーン近郊で生まれ、28歳でスペイン風邪によって死亡するまでの短い期間に鮮烈な作品を残した画家、Egon Schieleを中心にした展覧会を観に、東京都美術館に行ってきた。 ウィーンのLeopold Museumの所蔵品を中心にEgon Schieleの作品が50点。さらに、Gustav KlimtやOskar Kokoschkaなど、同時代作家の作品が70点。合計120点という大規模な展覧会である。 グロテスクなまでの異様な生命力に満ちた裸体画、ただならぬ自意識が溢れる自画像など、すさまじい迫力に満ちたEgon Schieleの作品は、見応えがある。また、同時代作家の作品群も特徴的な物が多い。ただ、展示順とかには、もう少し、工夫の余地があるような気がした。これだけの作品数だと、さすがに疲れるというか、too much感を覚える。 絵画以上に印象的だったのは、大きく引き伸ばされたEgon Schieleのポートレート写真が、場内にあちこちに掲示されていること。中々のイケメンなのだが、ナルシストっぽいカメラ目線に、その個性が現れている。この展覧会のキュレーターは、作品以上にEgon Schiele自身に入れ込んでいるのでは?という気がした。 私的には、もちろん、矢野顕子との共同作業で作り上げた1980年代の「アッコちゃんポップス」への思い入れが強いのですが、ソロ作品も、Yellow Magic Orchestraでの作品も、ずっとリアルタイムで追っかけてきたミュージシャンなので、喪失感は大きい。 |