IN/OUT (2023.3.5) |
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冬物のコートを羽織って出かけて、すっかり後悔するような、春めいた週末でした。 最近のIN"THE MANHATTAN TRANSFER 50th Anniversary & Final World Tour with Big Band" @ ブルーノート東京 (23.3.3)The Manhattan Transferの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。 彼らのライヴは、一度は観たいと思いながら、チャンスが無いままだったのだが、今回、結成50周年を迎え、ファイナル・ワールド・ツアーの一環で来日。これが最初で最後のチャンスかもしれない。行かねばの娘である。 残念ながら、創設時のリーダー Tim Hauserは亡くなってしまったが、オリジナル・メンバーのJanis SiegelとAlan Paulは(二人とも70歳オーバーだが)健在。1979年に加入したCheryl Bentyneと、2014年に加入したTrist Curlessの4人で活動中である。 今回の公演は、バックも豪華だ。Yaron Gershovsky(p)、Pete McCann(g)、Boris Kozlov(b)、Ross Pederson(ds)の来日組に加え、日本からブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラのホーン・セクションも参加。サックスの本田雅人、鈴木圭、竹村直哉、庵原良司、渡邉瑠菜。トランペットのエリック・ミヤシロ、小澤篤士、山崎千裕、具志堅創。トロンボーンの半田信英、藤村尚輝、小椋瑞季。超豪華メンバー。超期待大である。 開演前。いつもなら場内のモニターに、今後、出演するミュージシャンのプロモーション映像が流れるところ、今回は、The Manhattan Transferの50周年記念ビデオが上映される。懐かしのヴィデオ・クリップ("Twilight Zone/Twilight Tone"など)の他に、昔の米国のTVショーや、日本で出演したCM(サントリーのVSOP、AKAIのオーディオ)など。既に楽しい。 私は、幸いにもステージの超至近席。スタッフが、ステージの床にカンペ(セットリストと、一部の曲の歌詞カード)を貼ったので、しっかり撮影させていただいた。 いよいよ、演奏が始まる。歌い出した瞬間から、圧倒的な説得力のエンターテインメント!正直、最年少のTrist Curless(それでも51歳だが)を除くと、全盛期の声の艶は無いと思う。が、フォーメーションを次々と変えながら、表情たっぷりにお馴染みの曲を連発する様子は、ただただ楽しい。 そして、中盤の"SIDEWINDER"での、Janis Siegelのアクロバティックなまでの早口歌唱と、エリック・ミヤシロのトランペット・ソロの絡みが、とにかく熱くて、カッコ良い。ここから、全員、一気にギアを上げたような、さらに怒濤の演奏が続く。4人とも、声の張りもアクションも、どんどん凄くなっていく。伴奏では控え目な演奏をしているバック・バンドも、ソロが回ってくると、物凄いテクニックを繰り出す。まさに、プロフェッショナルだ。そして、お馴染み、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラの皆さんの見事なプレイに、The Manhattan Transferのメンバーが Thumbs upする姿に、嬉しくなる。 すっかり会場の熱気が高まりきったところで、満を持して!という感じで、”BIRDLAND”。歌唱・演奏はもちろん、メンバーの一挙手一投足、全てが超絶カッコ良し。様々なフュージョン系ミュージシャンの演奏で聴いてきた名曲だが、私はThe Manhattan Transferのバージョンが特に好きなのだ。しかも、ビッグ・バンドをバックにしたライヴ。もう、最強である。演奏後、当然のスタンディング・オベーション。 アンコールは、会場、総立ちのまま、”CHOO CHOO”、そして”TEQUILA”。会場、声を揃えて「テキーラ!」。最高に盛り上がったまま、全編、終了。 いやはや、ベテラン・エンターテイナーの底力にすっかりやられてしまった。これだけ、徹頭徹尾、楽しいライヴ体験は滅多に無い。大満足である。 「交歓するモダン 機能と装飾のポリフォニー」@東京都庭園美術館 (23.3.4)1910年代から30年代、世界各地で盛り上がった「モダン・デザイン」をテーマにした展覧会を観に、東京都庭園美術館に行ってきた。 先週観た「マリー・ローランサンとモード」と同時代を扱う展覧会だが、あちらが絵画とファッション中心だったのに対し、この展覧会は、(ファッションも重要な要素になっているが)工業デザインなどを通して、当時の生活空間に溢れるようになった「モダン」を俯瞰的に示すものだ。家具、食器、テキスタイル、ファッション、壁紙、室内装飾などなど、約400点が展示されている。第一次世界大戦を挟むこの時期、デザインというものが、日本を含む世界中に一気に伝搬するようになったことが良く分かる。同名のロックバンドがあることで名前だけは知っていたBauhaus(1919年、ドイツに設立された美術工芸や建築に関する教育を行い、「モダン」な製品デザインの基礎を作り上げた学校)についての知見を得られたことも個人的な収穫だ。 ただ、門外漢には、「美術」の展覧会という感じは受けない。むしろ、全ての展示品が、庭園美術館の建物(1933年竣工の旧朝香宮邸)の元々の調度品と言われても全く違和感が無いハマりぶりなのが素晴らしい。恐らく、この建物を知り尽くした学芸員の方々が、それぞれの部屋にピッタリくる展示品と、その見せ方を考え抜いたのだろう。いつもと違う巡回ルートが設定されていたことからも、その工夫ぶりが忍ばれる。 と言うことで、この建物自体が好きな人には大いに楽しめる展覧会になっていると思う。そして、次回、4月1日からは、毎年一度のお楽しみ、建物公開展が予定されている。こちらも楽しみだ。 ”Everything Everywhere All at Once” (23.3.4)Michelle Yeoh主演の映画を観てきた。今年の賞レースで、作品自体の評価が高いだけでなく、主演のMichelle Yeoh姐さん、助演のJamie Lee Curtis大姐さん、さらに、Ke Huy Quan(”Indiana Jones and the Temple of Doom”のShort Round役だった男の子!)も、高評価を受けているという話題作である。監督はDaniels(Daniel KwanとDaniel Scheinertのコンビ)。あの奇想の映画、”Swiss Army Man”の監督だけに、今回も、とことんぶっ飛んだ作品だ。 Michelle Yeoh姐さんが演じるのは、米国でコイン・ランドリーを営む中国移民。税務申告(担当する監査官がJamie Lee Curtis大姐さん)に追われながら、頼りない夫、反抗期の娘、そして、中国から出てきたばかりの老父にも手を焼く、一杯一杯の暮らしを送るくたびれたおばさんだ。しかし、彼女こそ、邪悪な存在に滅ぼされようとしているマルチバース(多元宇宙)を救うことが出来るキー・パーソンだったのだ!というお話。 多元宇宙には、この宇宙でのMichelle Yeoh姐さんとは人生の岐路で違う選択をし、分岐した宇宙を生きる別のYeoh姐さんが存在する。カンフー・スターになっていたり(これは現実の姿だな)、歌手として成功していたり、鉄板焼きレストランのシェフになっていたり。邪悪な存在と戦う羽目になったこの宇宙のYeoh姐さんは、別の宇宙のYeoh姐さんの能力を召喚(バース・ジャンプ)するのだ!ただし、バース・ジャンプを発動するには、何か思いっきり馬鹿なことをする必要があるという人を喰った設定が、いかにもDaniels映画。 全編、Michelle Yeoh姐さんの七変化が炸裂。お得意のカンフー・アクションもたっぷり。動きの隅々まで美しく、つくづく、良い俳優だと思う。もう、彼女のファンには堪らない映像だ。さらに、それ以上の怪演を見せるJamie Lee Curtis大姐さんもお見事。 ただ、映画の前半は意表を突く展開がテンポ良く続くのに対し、後半は失速気味に感じた。主人公一家がマルチ・バースの命運を握るというところは、なんとなく、セカイ系アニメっぽい気もする。米国映画の家族の絆を描くのが大好きな(とういか、それを重視しすぎな)ところが、私は苦手なのだ。 |