IN/OUT (2023.1.15)

Jeff Beck、高橋幸宏と、ミュージシャンの訃報が続きました。


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「150年後の国宝展―ワタシの宝物、ミライの宝物」@東京国立博物館23.1.9

東京国立博物館明治5年の開館から150年を記念した東京国立博物館としては初めての公募型展覧会「150年後の国宝展」を観てきた。

展示は、「ワタシの宝物、ミライの宝物」というテーマで一般公募を行い、東京国立博物館のスタッフの他、山中俊治(デザインエンジニア・東京大学教授)、ヤマザキマリ(漫画家)、ミッツ・マングローブ(タレント)らの選考委員会が選んだ「150年後の国宝候補」と、出展協力した企業からの出展品である。

東京国立博物館会場は、東京国立博物館の中の表慶館。1909年に開館した重要文化財指定の建物である。私は初めて入館したが、中央のドームは吹き抜けになっていて、貫禄十分。館内の階段や照明など、それだけで見応えのある建築だ。

東京国立博物館初代ゴジラが出迎える展示は、企業の部から。しかし、ゴジラと同じ部屋に展示されているのが、公益財団法人 JKAの「日本が生んだ世界のスポーツ - 競輪」。ギャンブル対象で異形の進化を遂げたスポーツが国宝候補? やや不安な出だしである。

東京国立博物館ガンダムとプリキュアが並ぶ展示室は、いわゆるクール・ジャパン系。プリキュアが、初期の白黒二人組だったのは、個人的に好印象ではある。

東京国立博物館HELLO KITTYは、1974年の誕生の翌年に発売されたぬいぐるみの第1号とのこと。これは、国宝候補として納得。

他に、本田技研工業の「スーパーカブC100」など、なるほど国宝候補という感じの展示もあるが、八海醸造株式会社の「魚沼が育んだ麹と八海山」、JRAの「人と馬の物語」、東急グループの「まちづくりのDNA」など、大半の企業展示は、単なる企業広告だ。かなり、興醒めである。

東京国立博物館一方、一般公募の部は、「旅客機 ボーイング747」や「マツダ コスモスポーツと世界初の量産型ロータリーエンジン」、「ファミリーコンピューター」など、国宝候補という視点で考えられた物もあるが、それらよりも、「日本各地で集めた煮干しのコレクション」を筆頭に、父親が出張先でお土産に買ってきてくれた「思い出のキーホルダー」や、「おばあちゃんの白いハヤシライスレシピ」など、個人の思い入れが詰まった収集物が目立つ。なんだか、昭和のサブカル系雑誌の匂いを感じ取ってしまった。嫌いじゃ無いけど、なんだかあざとい気もする。

面白い企画だし、それなりに楽しんで観覧出来たが、なにかもう一押しが足りない、という消化不良感も残ったかな。


「本田雅人バンド with Strings」@ブルーノート東京23.1.9

ブルーノート東京サックス奏者 本田雅人が自身のバンドにストリング・カルテットを加えた編成で行う公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。上原ひろみ ザ・ピアノクインテットの素晴らしいパフォーマンスが印象深かっただけに、ジャズ系ミュージシャンと弦楽四重奏の組み合わせに興味津々なのである。

メンバーは、本田雅人(サックス)に、則竹裕之(ドラムス)、川村竜(ベース)、中川就登(ピアノ、キーボード)。そして、藤堂昌彦(ヴァイオリン)、漆原直美(ヴァイオリン)、亀田夏絵(ヴィオラ)、稲本有彩(チェロ)の弦楽四重奏。

このうち、中川就登は、祖父がトランペット奏者の中川喜弘。父が作編曲家の中川幸太郎。叔父(孝太郎の弟)がトロンボーン奏者の中川英二郎という、中川家の一員。若干 22歳にして作編曲家として、また、ピアニストとしても活動しており、今回のストリングス・アレンジも一手に引き受けたとのこと。

なお、三連休の最終日の2nd Showということで、客の入りは控え目(しかし、本田雅人曰く、このステージが、2days 4公演の中で一番盛り上がったとのこと)。ただし、生配信有り。

還暦ということで、真っ赤な帽子・ジャケット・ネクタイを着用した本田雅人とストリングス組の5人でパフォーマンス開始。 「Ciao!!」、「Twilight in Upper West」。サックスと弦の絡み、中々に良い感じだ。

ベースが参加し「Trela Alegre」。そして、ドラムスとピアノ、全員揃って「Heart of Zipangu」、「Orange」、「Just Like A Woman」。ここまで、出番が無かった則竹裕之、いきなり全開である。通常のパートでも、ソロのような手数で攻めまくる。ここまで強烈なリズムが入ってくると、弦楽四重奏の存在感は薄くなってしまうかな。

ここで、ドラムスは抜けて、ハイドンの「トランペット・コンチェルト」。トランペットの代わりに、ソプラノ・サックス。弦楽四重奏の美しい音色と本田雅人の力強いサックスの重なりが心地よい。やはり、クラシック寄りの演奏の方がハマる編成だ。

再び、全員揃って、パワフルに「君はエスパー」、「Megalith」で本編終了。舞台から捌けることはせず、そのままアンコール曲「Tomorrow Is Another Day」で全編終了。

ジャズ・ピアニストと弦楽四重奏ががっぷり組んだ上原ひろみ ザ・ピアノクインテットとは方向性が違い、あくまでも弦楽四重奏はバック・バンドという感じ。ストリングスのアドリブ・プレイが無いのは面白味が無いと感じてしまったが、それは、あのクインテットが特殊過ぎたのだ。ビッグ・バンドのホーンをストリングスに置き換えることで、どこか涼やかな印象も加わって、一味違う心地よい音を楽しめたのは間違い無し。



Jeff Beckの「Blow by Blow」は1975年。サディスティック・ミカ・バンドの「黒船」は1974年。自分が若い時から聴いていた=自分より年上のミュージシャンの訃報が増えるのは仕方ないとは分かっていても、喪失感は大きい。