IN/OUT (2022.8.21)

矢野顕子強化月間のメイン・イベント、夏の矢野顕子祭@ブルーノート東京の真っ最中です。


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「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」 @ 東京都現代美術館22.8.20

東京都現代美術館フランスの建築家・デザイナー Jean Prouvé(1901 - 1984)の展覧会を観に、東京都現代美術館に行ってきた。

東京都現代美術館彼は、金属工芸家からキャリアをスタートし、スチール家具、さらにはプレファブ住宅などのデザイン・設計・製造、そして会社経営まで手掛け、20世紀の建築や工業デザインの世界に多大な影響を与えた人物である。

東京都現代美術館会場には、シンプルで機能的でありつつ大量生産も考慮した机や椅子がずらっと並ぶ。美術館というより、大型家具店のショールームのようでもある。

東京都現代美術館彼の発言を見ていると、一流の芸術家であると同時に、ものづくりのプロとしてのこだわりが凄い。結果、大量生産を前提としたプロダクトであっても、機能美に溢れた自己主張を感じる物になっている。

東京都現代美術館後半は、この美術館の広い空間を活かした、建築関連の展示になっている。これらも、解体・移設が可能な、機能的なプロダクトだ。アフリカで使うために作られたアルミニウム製の日除ルーバーやファサードなど、当時としては凄く未来的だったのだろうと思われるパーツが並び、プレファブ住宅建築の様子を収めたビデオが上映される。

さらに、吹き抜けの大空間には、「F 8x8 BCC組立式住宅」が丸ごと展示されている。巨大な展示には無条件にテンションが上がるものだ。私のような門外漢にも、とても興味深い、実用派の展覧会だった。


「ゲルハルト・リヒター展」@ 東京国立近代美術館22.8.20

東京国立近代美術館ドイツの現代美術界の巨匠 Gerhard Richter(1932 - )の個展を観に、東京国立近代美術館に行ってきた。現在進行形で創作を続ける彼の大規模個展は、日本では16年ぶり。東京では初めての開催である。

122点の展示品は、財団コレクションおよび本人所蔵作品を中心にしたもの。つまり、彼自身が手元に残しておいたお気に入りの作品群ということになる。

東京国立近代美術館目玉の展示の一つは、幅2メートル、高さ2.6メートルの作品4点で構成される抽象画「ビルケナウ」。単なる巨大な抽象画ではなく、この絵の具の下には、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真をキャンバスに描き写したものが潜んでいる。展示室には、「ビルケナウ」の他に、その元になった写真と、「グレイの鏡」という鏡(これも作品)、さらに、ビルケナウの対面に、同じ大きさでビルケナウを写した写真が設置されている。創作と現実と複写が相互に作用し合う空間は、目に見えている物だけが真実なのかを問いかけているようだ。

東京国立近代美術館他に、写真を描写した「フォト・ペインティング」のシリーズや、塗り重ねた絵の具をヘラで引き延ばしたり、削り取ったりして描かれた抽象画「アブストラクト・ペインティング」のシリーズなど、多種多様の作品が並ぶ。

東京国立近代美術館壁一面に飾られた「ストリップ」は、「アブストラクト・ペインティング」からサンプリングした色をカラープリンターで印刷するというデジタル技術を駆使した作品。やはり、巨大な展示には無条件にテンションが上がる。

ガラスを用いた立体作品や、フィルム作品なども展示され、その広範な制作スタイルに圧倒される。

質・量共に見応え十分。展示空間も良く工夫されている。さらに、鈴木京香によるオーディオ・ガイドが秀逸。要所要所でキュレーターの解説が入り、作品への理解を深めてくれる(解説を聞いても、どこまで理解できてるのかは、我ながら怪しいが…)。とても力の入った、そして、鑑賞する側にも力を強いる展覧会だと思う。



新型コロナの感染拡大以降、様々な制約が有ったブルーノート東京も、営業が再開され、アルコール飲料の提供が再開され、来日アーティストの公演が再開され、そして、座席の間引きも撤廃と、着実に元の雰囲気に戻ってきたのは嬉しい限り。ただ、平日の公演の開始時刻が、コロナ前より30分早まったのが痛い。1st Showの開演が18時30分だったのが18時になり、行きづらくなってしまったのが悔しい、今日この頃です。