IN/OUT (2021.10.10)

7日の夜、東京23区で東日本大震災以来となる震度5の地震がありました。が、ちょうどその時、会社からの帰宅途中、人通りの少ない道をヘッドフォンで音楽を聴きながら歩いていた私は、揺れに全く気づかず。携帯電話に緊急地震速報が着信したのですが、誤作動かとぼんやり考えた程度でした。この危機意識の無さは、我ながら如何なものか。


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「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」@東京都庭園美術館21.10.9

東京都庭園美術館世界最大級の植物園、英国の「Kew Gardens」。そこで、18~19世紀に制作された ボタニカルアートを集めた美術展を観に、東京都庭園美術館に行ってきた。

ボタニカルアートは、この時代の啓蒙思想とも関連し、何よりも植物学的な正確さを重視した絵画である。写実的なそのスタイルが、独特の雰囲気を醸し出す。さらに、この植物園の設立・拡張に深く関わったシャーロット王妃(George IIIの王妃、Sophia Charlotte of Mecklenburg-Strelitz)が愛し、王室御用達となったウェッジウッドの陶磁器も多数展示されている。ボタニカルアートとウェッジウッドの陶磁器。これが、立派な庭園を併設する東京都庭園美術館=旧朝香宮邸と見事な相性の良さを見せている。

東京都庭園美術館 元々、この建物は、窓、壁、天井、柱、階段の手すり、照明、暖炉の鉄柵などなど、内装だけでも見応え十分。そこに並ぶ、雰囲気にマッチした展示物。原則、写真撮影禁止なのが残念だが、なまじ撮影を許可したら、人の流れがとんでもなく滞留してしまうかもしれない。撮影可の場所で撮った写真を上げておくが、実際の雰囲気の良さは、こんなものでは無い。

一方、隣の新館には、広い空間を活かして、大量のボタニカルアートが並べられていて、こちらも圧巻。作品によっては、解説文の他に、隣の庭園で撮影された近縁種の写真が付いているのも庭園美術館らしい。

併設された庭園を散策するのにも適したこの時期、とても良い企画だと思う。


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"Stardust"21.10.9

若き日のDavid Bowieを描いた映画を観てきた。Bowieを演じるのは、ミュージシャンでもあるJohnny Flynn。

メインで描かれるのは、1971年、3枚目のアルバム ”The Man Who Sold the World(世界を売った男)”発売直後、アメリカで行ったプロモーション・ツアーだ。既に、名盤 ”Space Oddity”発売後ではあるが、知名度は低く、特に米国ではほぼ無名の存在として描かれるDavid Bowie。レコード会社の扱いも雑で、米国側のマネージャーと二人、地方都市を車で巡る。そもそもが、レコード会社の書類準備不足で、ちゃんとした演奏をする機会は与えられず、掃除機のセールスマンの集会で余興として歌ったり、パッとしない地元FM曲に出演したり…。売れない演歌歌手のような扱いである。どこまでが史実なのかは、良く分からない。

いずれにしても、この映画で描かれるDavid Bowieは、自信無げな一方で歪んだ自己顕示欲を見せたり、家族に引き継がれている遺伝的な精神疾患が自身にも顕在化することを恐れたり、エキセントリックな妻の尻に敷かれたりと、まったくもってかっこ悪いのだ。感情移入できない、

そもそも、この映画が何を描こうとしているのか、全く見えないのが困ったところだ。好意的に解釈すれば、BowieがZiggy Stardustとしてグラム・ロックの頂点を極める直前の魂の彷徨を描きたかったのかもしれない。しかし、そうだとしても、その試みは失敗に終わっている。彼がアメリカでのプロモーション・ツアーで何を得たのかが伝わってこないのだ。

Mick Ronson、Tony Visconti、Marc Bolanなど、Bowie周辺の人物も登場するが、彼らを出しておけば、観客は喜ぶだろうという程度の描き方なのもつまらない。。

ロック・ミュージシャンの伝記映画は、"Bohemian Rhapsody"が、その基準をすっかり引き上げしまったのだ。あの映画を観た者が、この手の作品に当然期待する終盤のライヴシーンでのカタルシスが弱いのが致命的だと思う。



しかし、自宅の集合住宅に到着するとエレベーターが止まっていて、ようやく、さっきの緊急地震速報が誤報では無かったことに気づきました。そして、東日本大震災以来10年ぶりに、テクテクと階段を上る羽目に。まあ、大きな被害が無くて何よりでした。