IN/OUT (2020.7.12) |
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SNSが定着したことの功罪は色々あると思いますが、最近感じるのは、自分のタイムラインが世の中の多数意見と勘違いすることの怖さです。そのせいで、勘違いを増幅させたりこじらせたりしている人、多い気がします。 最近のIN"The Invisible Man" (20.7.11)"Saw"シリーズの脚本家 Leigh Whannellの監督作を観てきた。邦題は「透明人間」。 古典的であり、かつ、現実味を出すのが難しいネタを見事に現代風にアレンジしている。従来は、透明になる力を手に入れた科学者が、徐々に理性を失う(そして、”Hollow Man”のKevin Baconのように、スケベ方面にその力を行使しがち)というのが定番の展開だが、 この作品では、透明人間になる科学者は最初からソシオパスとして登場し、彼の内面が掘り下げられることはない。自分を捨てた彼女をひたすらストーキングするという超面倒くさい奴だ。この割り切りが潔い。因みに、薬物を使って肉体を透明化するのではなく、光学迷彩を使うのも現代的アップデート。 映画の視点は、被害者となる女性側。目に見えないストーカーに襲撃されるという彼女の訴えは、被害妄想・精神障害とみなされてしまうという絶望的な状況が緊迫感を生む。シーン毎に全く違う表情を見せるElisabeth Mossの演技が鬼気迫る。典型的美人女優という枠には入らないタイプだと思うし、観客が感情移入しやすい役作りとも違う。が、その分、強い説得力を画面にもたらしている。 恐怖演出の冴えも素晴らしい。初めから、観る側は透明人間ネタというのが分かっている訳だが、それを逆手に取り、敢えて画面に余白を残すことで、そこに奴がいるかもしれないというハラハラ感を持続させる。そして、神経を逆なでするような音響設定。特に映画前半の恐怖演出は凄いレベルだ。 このレベルで恐怖が持続するとキツいなと思っていると、映画の後半はアクション・シーンが増える。少しほっとする一方で、このままモンスター・パニック映画的展開に堕するのかとガッカリしそうになるのだが、そこから、さらに一捻り・二捻り有る、実に巧みな展開。とても満足度の高いホラー映画だ。 自分のタイムラインが「世間」だったら、こんな選挙結果にはならないなどと思うこと、ままあります。 |