IN/OUT (2019.11.24)

リニューアル・オープンした渋谷PARCOに、オープン初日に出かけてきました。お目当ては、8Fのスペースで開催されている「アッコちゃんとイトイ。」。糸井重里・矢野顕子コンビによる楽曲をイメージして、10人のアーティストが作品を提供するという展覧会。仕掛けているのは、ほぼ日刊イトイ新聞。

そもそも、矢野顕子の作品世界を、音楽性以外の所であーだこーだ言っても仕方ないという思いもありますが、とにかく、この展覧会、良くも悪くも「ほぼ日」色が強い。その初期には、それこそ、ほぼ毎日アクセスしていたサイトでしたが、最近では、その雰囲気が苦手というか、反感すら覚えてしまうようになっているので、展覧会も、あまり自分には響きませんでした。とは言え、「OUT」にはしたく無いしなぁ…


in最近のIN

CANDY DULFER "A celebration: 50 years saxy" @ブルーノート東京19.11.19

サックス奏者 Candy Dulferの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。今年は、彼女の50歳記念。当初は、父親のサックス奏者 Hans Dulferとの共演が企画されていたのだが、来日直前に体調を崩し、手術を受けたという事で、Hansの参加はキャンセルとなってしまった。

バックは、ギター、ベース、ドラムス、キーボード×2、ヴォーカル ×2の、7人。1曲目は、彼女がヴォーカルも担当する”DO WATCHU LIKE”。演奏後、Hans Dulferの近況を報告。今は退院し、自宅療養中との事。来年こそは、80歳になる父親と、ここに戻ってくると言ってくれた。是非、楽しみに待ちたい。そして、2曲目は、その Hans Dulferの代表曲”MICKEY MOUTH”。

5日間10公演続いたブルーノート東京の、これが最終公演。そのためか、Candyだけでなく、観客のノリが非常に良い。4曲目 ”WHAT U DO”で、早くも、会場総立ち。「一つのスタイルに止まるのは、自分のスタイルじゃ無い」と語り、ジャズ、ファンク、ハウス、ロックなど、ジャンルの垣根を越えたプレイが続く。Candy姐さん、サックスも、歌唱も、MCも、ステージ上の所作も、観客の煽り方も、全てにおいて、カッコ良し。

今回は、アンコールは無しで、本編だけで完全燃焼パターン。終盤のAverage White Bandの"PICK UP THE PIECES"から、初期の代表曲 "SAX-A-GO-GO"への盛り上がりは、最高。例によって、フロアに降りて、観客の間をサックスを吹き倒しながら練り歩くCandy姐さん。そして、ラストは、バンドが演奏を続ける中、ワイヤレスマイクのトランスミッターを腰から外し、PAスタッフに渡した後、観客達とハグを交わしながら退場していく。その姿に、また痺れる。これまでも、来日公演があれば、極力、参戦するようにしてきたが、今回は、特にカッコ良さが際立ったステージだった。観ているこちらも、完全燃焼だ。


「富野由悠季の世界」@ 兵庫県立美術館19.11.24

兵庫県立美術館後述する上原ひろみ公演の遠征のついでに、兵庫県立美術館で、ガンダム・シリーズで名高いアニメ監督 富野由悠季の作品世界を回顧・検証する展覧会を観てきた。この展覧会は、2019年6月~2020年11月まで、福岡市美術館、兵庫県立美術館、島根県立石見美術館、青森県立美術館、富山県美術館、静岡県立美術館の6会場を巡回することになっている。東京近郊では開催されないので、良い機会なのだ。

虫プロダクションに入社し「鉄腕アトム」の制作に関わった頃から、初監督を務めた1972年の「海のトリトン」、1979年の「機動戦士ガンダム」、そして、2014年「ガンダム Gのレコンギスタ」まで、55年間にわたる彼の仕事を通覧し、その映像的特質を検証するという企画である。

実際に、その通りの展示なのだが、とにかく資料の物量が凄い。彼自身は、「演出家」なので、絵コンテが数多く展示されているが、それらに的確な解説が付けられていて読み応え十分だし、この企画展を構成したスタッフ達の熱意にも頭が下がる。また、館内の至る所で、映像も流されている。「無敵鋼人ダイターン3」、「伝説巨神イデオン」、「聖戦士ダンバイン」、「重戦機エルガイム」など、嬉し懐かしアニメの名シーンの抜粋だけでなく、「機動戦士ガンダム」の記念すべき第1話「ガンダム大地に立つ!!」はオープニングとエンディングの曲も含め、全編上映。ザ・シンフォニーホールに向かわなければならないので、3時間弱で切り上げたが、真剣に見始めたら、丸一日かかりそうな大規模展示だ。

オーディオ・ガイドは、「ガンダム Gのレコンギスタ」の声優二人が担当しているが、展示の深い解説というより、ノリの良い富野ファンのお喋りという感じ(時には、富野由悠季にツッコミを入れる)。これはこれで、面白い。また、活動の初期に、高畑勲と仕事を共にし、大きな影響を受けたというエピソードも興味深かった。

「海のトリトン」の最終回では、明朗活劇と思って放送を楽しみに見てきた少年少女に深いトラウマを刻み、一時は「皆殺しの富野」と呼ばれるほど、登場人物達を容赦なく殺してきた富野由悠季だが、その一貫した作家性、そして、商業主義との折り合いの付け方のしたたかさに、改めて刮目する展覧会だった。何故、東京地域でやらないのだろう?


「上原ひろみ JAPAN TOUR 2019 "SPECTRUM"」 @ ザ・シンフォニーホール19.11.24

ザ・シンフォニーホール上原ひろみの公演を観に、大阪、ザ・シンフォニーホールに出かけてきた。ピアノ・ソロとしては10年ぶりにリリースされた新アルバム「Spectrum」を引っさげてのツアー。もちろん、公演もピアノ・ソロ。当然の如く、競争率は高く、東京公演のチケット争奪戦に連敗し続けた結果、遠征することにしたのだ。

ザ・シンフォニーホールを訪れるのは初めてだ。クラシック用の高級ホールだけに、ステージはフル・オーケストラが余裕で乗れる広さ。しかし、今回はその中央にぽつんとグランドピアノが置いてある。ピアノの下には、スペクトラムで彩られたピアノのシルエットが描かれている(2階席だったので、良く見える)。舞台後方にも座席があり、その上にはパイプオルガンが設置されている。

新アルバムの1曲目"Kaleidoscope"から演奏開始。2曲終わったところでMC(曲名紹介は当たり前すぎるので、日本公演前のワールドツアーでのエピソードから小噺を、というスタッフからの指示で、ミラノのブルーノートでの公演の話題=2nd showの開演が23時30分だった!など)があった他は、途中に20分間の休憩を挟んで、次々と新アルバムの曲を、順序は替えているが、全て披露(それ以外では"Firefly"も演奏)。上原ひろみのピアノと言えば、アクロバティックな超高速プレイを唸り声を上げながら繰り出す、という印象が強いが、今回は一味違う。もちろん、そういう場面もあるが、アルバム・タイトル通り、色彩感に富んだプレイという雰囲気。ピアノという楽器だけで、どれだけカラフルな音を奏でられるかに賭ける、というイメージの演奏だ。このところ、凄腕リズム隊を従えての演奏を聴く機会が多かっただけに、なおさら新鮮だ。

さらに、その曲に合った色合いの照明が当たるのだが、後ろのパイプオルガンの金属パイプが良い感じに輝いて、雰囲気も倍増。

どの演奏も素晴らしかったが、特に、本編ラストの"Rhapsody in Various Shades of Blue"は圧巻。ダイナミックでカラフルでドラマチックな、アイディアの詰まった演奏に、場内の喝采も最高潮。

ツアーTシャツに着替えて登場したアンコール(かなりの早変わり)は、やはり新アルバムから"Sepia Effect"。

遠出する価値の十二分にあるパフォーマンスに大満足。あと数回、今回のツアーには参戦する予定だが、今から楽しみだ。



渋谷PARCO自体は、中々個性的な店作りになっているようです。「公園通り」の名称の由来になり、かつて「セゾン文化」発信の中心地でもあった、尖っていたPARCOが帰ってきた、という印象です(糸井重里色が復活したとも言えるのか…)。