IN/OUT (2019.11.3) |
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気がつけば、年末も近づく11月。ということは、学生以上にご近所の家族連れの集客力に定評のある、東京海洋大学品川キャンパスの学園祭「海鷹祭」の季節です。 最近のIN"It Chapter Two" (19.11.1)ホラーの王様 Stephen King原作の映画を観てきた。"It"の続編である。 子供達に恐怖心を与えた上で殺害し捕食する、ピエロの格好をした怪物=Pennywise。前作で、主人公の少年少女達に倒されたかと思われたが、27年後に再び現れる。大人になった主人公達は、故郷の街に再集結し、Pennywiseに最後の戦いを挑む、というお話。 169分間の長尺に、Kingらしい過剰なホラー要素が詰め込まれている。赤い風船。子供にだけ見えるピエロ。恐怖心が生み出す幻影といった視覚効果と、残虐シーン。さらには、「The Thing(遊星からの物体X)」や「Aliens」を彷彿とさせる暴走ぶりも見せる。一方で、前作からの引用も多く、多くの大人が忘れてしまう「少年時代の記憶」が真のテーマとして浮かび上がり、甘酸っぱい感傷が画面に溢れる。Kingの特徴が良く出ている原作を、その持ち味を見事に活かして映像化していると思う。 ただ、Pennywiseを倒す切り札には、ちょっとご都合主義も感じる。あと、肥満男子は、どんなに心がキレイでも、肥満のままでは女性にもてないというのも、どうだろう… 因みに、古物屋の店主役でStephen King自身が出演している。それも、単なるカメオ出演ではなく、嬉々として、しっかり演技しているところは、ご愛敬。 「尾崎亜美 Concert 2019」@渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール (19.11.2)尾崎亜美のライヴを観に、渋谷区文化総合センター大和田に行ってきた。 これまで、何度かイベントで観た事はあるが、ソロ公演はこれが初めてだ。バック・バンドが、林立夫(ドラムス)、小原礼(ベース)、鈴木茂(ギター)、是永巧一(ギター)、佐藤準(キーボード)、Aisa(コーラスとアコースティック・ギター。因みに、ブレッド&バターの岩沢幸矢とMANNAの娘さん)という豪華版。特に、林立夫と小原礼のリズム隊は、来月の矢野顕子さとがえるコンサートのメンバーでもあるということで、参戦してみたのである。 尾崎亜美は、グランド・ピアノとエレキ・ピアノの間を行ったり来たり。たまにスタンディングで歌うというスタイル。コンサートの前半は、割に初期の作品が多い。私が、彼女の作品で最も印象深い(どちらも、資生堂のCMソングだった)「マイピュアレディ」と「春の予感」が続けて演奏されたところでは、懐かしさがこみ上げてくる。 バンドは、勿論、超凄腕ミュージシャン揃いなのだが、やはり、歌手とその伴奏という感じになってしまう。超高性能エンジンを搭載した高級車が、低速で市街地を走っているようなもので、なんとも贅沢。と思っていたら、メンバーを絞って演奏するコーナーがあり、林立夫・小原礼・鈴木茂の三人(学生時代から「SKYE」というバンドを組んでいる)と共に演奏した「BENGAL BABOO BABE~It`s My Turn」(尾崎亜美・小原礼・鈴木茂の三人が結成した「The DELTA-WING」の曲)が、見事なバンド・サウンドで、実にカッコ良い。 後半には、アイドルに提供した楽曲なども多数披露された。中でも、松田聖子に提供された「天使のウィンク」は、本当に良く出来たプロダクトだと、改めて感心。 本編ラストは、小原礼と二人で「オリビアを聴きながら」。名曲。そして、良き夫婦だなぁ。 アンコールで、全員で1曲、さらに、小原礼と二人で、Simon & Garfunkelの「明日に架ける橋(歌詞に出てくる"I'm on your side"が、今回のツアーTシャツにプリントされていた)」。やはり名曲。そして、夫婦の仲良し感がさらに伝わってくる。 最後の最後に、尾崎亜美一人で、今年亡くなったお母様への思いを込めて「Soup」。これで全編終了。 尾崎亜美は、才気溢れるソングライターで、(声は必ずしも美声ではないが)優れたパフォーマーで、でも、喋ると「昭和の不思議ちゃん女子」で、そして、夫が小原礼。(良い意味で)色々アンバランスなところが彼女の魅力だなと、再確認した。 "No Smoking" (19.11.3)細野晴臣の、音楽活動50周年を記念したドキュメンタリー映画を観てきた。 飄々とした彼の個性を活かしつつ、「エイプリル・フール」から、「はっぴいえんど」、「Yellow Magic Orchestra」、そして、現在に至る、50年間の音楽活動を要領良く振り返る。と同時に、随所に、最近行われたワールド・ツアーのライヴ映像が挿入され、彼が現在進行形のミュージシャンであることが示される。 正直、映画としては、可もなく不可もなくという評価だ。映画と言うより、むしろ、NHK特集のような雰囲気(実際、監督の佐渡岳利は、NHKエンタープライズのエグゼクティブプロデューサー)だが、ニューヨークでのライヴにゲスト出演した矢野顕子との「相合傘」ほ、矢野ファンには見逃せない映像だし、画面に登場するのが、高橋幸宏、坂本龍一、鈴木茂、大瀧詠一、松任谷正隆、吉野金次などなど、お馴染みの人たちばかりで目が離せない。なお、ナレーションは星野源(「おげんさんといっしょ」のシーンも、多数、挿入されている。さすが、NHKエンタープライズ制作)。 なお、音楽ドキュメンタリーなので、立川シネマシティの極上音響上映にて鑑賞した。古い音源のところは仕方ないとして、YMO以降の音響は、さすが極音。素晴らしいサウンドだ。特にライヴ・シーンは、観客の拍手までも、きわめてリアルに再現されていて、自分も会場にいるような感覚を味わえた。 ”Dreaming Murakami” (19.10.25)村上春樹のデンマーク語の翻訳者 Mette Holmを追ったドキュメンタリー映画を観てきた。邦題は「ドリーミング村上春樹」 Mette Holmは、「ノルウェーの森」を読んで衝撃を受け、20年近く、村上春樹の作品の翻訳を続けている。村上作品は、50以上の言語に翻訳されているが、英訳からの二次翻訳も多い。しかし、彼女は、元々日本語を学んでいたので、日本語から直接デンマーク語に翻訳している。一人の翻訳者が、長年、翻訳し続けているのは珍しい事で、2016年に、村上春樹がアンデルセン文学賞を受賞し、デンマークを訪れた際には、村上春樹の希望で、王立図書館で公開対談を行っている。なお、その公開対談の直前までの模様は、この映画に収められているが、対談自体は入っていない。 彼女は、「風の歌を聴け」を翻訳するにあたり、日本を訪れ、その舞台となる(村上春樹の出身地でもある)芦屋の街を歩き、酒場で日本人客と村上春樹論を語り合う。真摯に「村上作品」、そして「言語」に向き合う姿勢には、頭が下がる。 一般の目には触れない、翻訳者の孤独な努力と苦悩を描く作品で、それだけでも見応えはあるのだが、このドキュメンタリー自体が、村上作品のように、並行世界との境目が曖昧になっているというギミックが、村上ファンには嬉しい。東京の街を「かえるくん」が徘徊し(Inspired from "Super-Frog Saves Tokyo"と、クレジットにも表記されていた)、空に浮かぶ月は二つなのだ。 今年は、あまりゆっくり見て回る時間が取れなかったのですが、やはり「食」の充実ぶりが素晴らしい。海を愛し、研究しているからこそ、美味しく調理出来ると信じているけれど、何パーセントかは、学生らしいウケ狙いの要素もあるのかな。
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