週末、シャワーを浴びて外出を、というタイミングで宅配便が到着することがたまにあります。到着と言っても、集合住宅の入り口でインターホンを鳴らすので、そこから各戸に配達が始まり、実際に自室に届くまで結構時間がかかります。この待ち時間、外出どころかシャワーを浴びるのも控える訳ですが、人生の中でも最も無駄な時間の一つだと思います。
今週も、まさにそのパターン。前回が1時間待ちだったので、それは覚悟したところ、1時間待っても来ない。結局、2時間待って、諦めて外出したところ、郵便受けには不在通知が…。玄関のベルを聞き逃したとは考えにくく、配達員が部屋を間違えたのか? いずれにしても、本当に無駄な待ち時間になってしまいました。
イタリア出身のチェリストであり作曲家でもある Giovanni Sollima。「チェロの魔王」とも「チェロのジミヘン」とも称される鬼才が、友人のチェリスト Enrico Melozziと立ち上げた企画「100 cellos」の日本公演を観に、すみだトリフォニーホールに行ってきた。
この公演は、公募した100人を超える(今回は、120人以上いたようだ)チェロ奏者に対し、SollimaとMelozzi自ら指導し、既存の譜面やパートを作り替え、その公演ならではの演奏を展開するというもの(参加者のTwitterを見たりすると、相当な熱血指導が長時間行われていたようだ)。2012年以来、世界中で、ジャンルも国籍も超えた演奏家を集め「世界を垣根なく音楽で繋ぐ」場として、公演を重ねているそうだ。日本では、これが初公演である。
ステージに並ぶのは、揃いの黒のTシャツを着た120名超のチェロ奏者。当たり前だが、全員がチェロなのである。今まで観たことものないその光景は、演奏会というより、もはや現代美術のインスタレーションのような雰囲気だ。演奏されるのは、バッハや、ヴィヴァルディ、ワーグナーなどのクラシックから、「Violoncelles, Vibrez!(チェロよ、歌え!)」などSollimaの作品(彼はポストミニマリズムの作曲家と言われている)。さらにロックから、David Bowieの"The Man Who Sold The World" 、Pink Floydの"Another Brick In The Wall"(この演奏中には、あの挑発的な歌詞がスクリーンに映写されるロックな演出)、Nirvanaの"Smells Like Teen Spirit"という、私好みのカッコ良すぎる選曲。
公募ミュージシャンが伴奏をし、SollimaとMelozziがソロパートを弾きまくるというのが基本パターン。観客を煽り、チェロを演奏しながら、観客席に降りてきて歩き回るという驚愕のパフォーマンス(チェロのネックの部分を首と肩で挟んで、歩きながら、平然と演奏を続けるのだ)を繰り広げるSollimaの姿は、確かに「チェロのジミヘン」の呼称は伊達じゃないと思わせる。一方で、ステージ上の公募に応じたチェロ奏者達の充実した雰囲気の表情も良い感じ。いやはや、凄いモノを観てしまったという印象である。