IN/OUT (2019.4.14)

冬物を今出せば 15%引き。というクリーニング屋の惹句に釣られて、コートやマフラーをまとめて出してしまった直後の週に、まさかの寒さ到来。春の天候の気まぐれさを甘く見ていました。


in最近のIN

「The Nature Rules 自然国家:Dreaming of Earth Project」@原美術館19.4.13

原美術館1953年、朝鮮戦争の停戦時に設定された北緯38度線付近の軍事境界線。その南北2Kmずつの帯状の非武装地帯(DMZ)は、その後、65年間、人が立ち入らなかったことで、皮肉にも、101種類の絶滅危惧種を含む5,057種の生物種を育む豊かな生態系となっている。その生態系を守り、生きとし生けるもの全ての共生を願って、韓国出身のアーティスト崔在銀が立ち上げた「Dreaming of Earth Project(大地の夢プロジェクト)」の構想を可視化するという展覧会を観に、原美術館に行ってきた。

崔在銀は、2010年に原美術館で開催された「崔在銀 展 - アショカの森」が好印象だった。ただし、今回の展覧会は、多くのアーティストや建築家が参加し、DMZ内に建てようとしている、空中庭園や、鳥の修道院(渡り鳥が羽を休める塔)、生命と知識の地下貯蔵庫(種子と知識を保存する貯蔵庫)といった、コンセプト重視の建造物の構想を見せるという、いささか分かりづらい展示である。

分かり難さを予想したので、展覧会初日に企画された「アーティスト・トーク」に申し込み、参加してきた。崔在銀が構想の全体像を、チョウ ミンスクが「生命と知識の地下貯蔵庫」について、スン ヒョサンが「鳥の修道院」について、スライド付きで説明してくれる。崔在銀の情熱のこもった日本語でのプレゼンテーションの熱さが印象的だが、「宮島達男さんに、設置する水タンクのデザインを考えてもらったとき、数字を入れないでと言ったのに、結局、このように数字が入った物になっちゃった(宮島達夫は、原美術館の常設展示にもある、デジタル・カウンターを使ったインスタレーションで有名)」といった、現代美術ジョークで会場が和む一幕も。一方、韓国建築界の重鎮 スン ヒョサンの、ベネディクト派修道院の歴史から延々と思索を積み重ねていき、鳥の修道院に辿り着く説明には、「こんなに深い背景がある建築構想を、あの展示で感じ取れと言われても無理だよなぁ」と思ったり。いずれにせよ、このトークショーに参加しなければ、展示の1/3も理解できなかっただろうな。

という訳で、必ずしも万人にお薦めできる「美術展」ではないのだが、背景を分かった上で鑑賞すると、色々と思うところの多い、深い展示会だ。


"Halloween"19.4.14

1978年のJohn Carpenterの出世作、"Halloween"の続編を観てきた。

"Halloween"は、1978年の第一作のヒット後、8作目までシリーズ化されたのだが、今回は心機一転、2作目以降を無かったことにした第一作の続編という位置付けである。舞台は、Michael Myers = Boogeymanが惨殺事件を起こしてから40年後の2018年。収監されていた精神病棟から別の施設へ移送される途中で脱走したMichael Myersが、再び、惨劇の舞台となった町に戻ってくる。一方、そこには、40年前に彼に狙われながらも生き延びたLaurie Strodeが、彼が再び襲ってくることを予期し、今度は確実に彼を殺すことを準備し続けて40年間、過ごしてきたのだ。果たして、両者の宿命の対決の行方は?というお話。

オリジナル作が切り開いたスラッシャー映画というジャンルの作品としては、極めてオーソドックス。客観的な評価は、普通に良く出来たB級ホラー映画ということになるだろう。しかし、この映画には、オリジナル作を好きだった者のハートをググッと掴む要素が満ちている。

まず、主役のLaurie Strodeを演じるのが、オリジナル作と同じJamie Lee Curtis! 40年前はスクリーミング・クイーンとして存在感を放った彼女も、今や還暦。今作では、不死身の殺人鬼 Michael Myersに真っ向から勝負を挑む。そのハードボイルドな立ち居振る舞いに熱くなる。

そして、音楽は、John Carpenter自らが手掛けたオリジナルのテーマが使われている。これが嬉しい。監督こそ、David Gordon Greenに委ねているが、あのサウンドが流れれば、John Carpenter作品の雰囲気になるのだ。因みに、John CarpenterとJamie Lee Curtisは、今作のエグゼクティヴ・プロデューサーにも名前を連ねている。

そして、オリジナル作を知っている者をニヤリとさせるシーンがあちこちに仕込まれているのが楽しい。特に、倒したと思ったのに、もう一度見直すと、あるべき死体が消えている。というシーンが、捻った形で再現されている場面にはニヤニヤしてしまう。

ということで、予想以上の快作。John Carpenter好きには、外せない一作だと思う。



気がつけば、大型連休まで2週間。コート無しで先週を乗り切れたのだから、さすがにもう大丈夫。のはずだと自分に言い聞かせる今日この頃です。