IN/OUT (2019.1.27) |
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インフルエンザから無事回復。自宅療養(&テレワーク)が続いて、すっかり曜日感覚が狂ってしまいました。 最近のIN"Suspiria" Dario Argento版 (19.1.22)1977年公開当時、「決して ひとりでは見ないでください」のコピーで一世を風靡したホラー映画のリバイバル上映を、ひとりで観てきた。このたび、Luca Guadagnino監督がリメイクした作品の公開に先立ち、オリジナルを上映するというキネカ大森。ナイスな企画である。 久しぶりに観たのだが、ストーリーは思っていた以上に単純。ドイツの名門バレエ学校に入学したアメリカ娘が、学園に秘められた謎と恐怖に見舞われる。そして、最後に明かされるのは…(40年以上前の有名作なので、ネタバレを描いても構わないだろう。このバレエ学校は「魔女」によって運営されていたのだ)。というお話自体は、他愛も無い。Dario Argento監督が見せたかったのは、美少女が惨殺される映像だけなのだ。それが、悪趣味な駄作にならず、カルト的な人気作となったのは、音と映像への異常なまでの拘りのせいだろう。全編に流れる大音量のGoblinによるシンセ・サウンド。赤を基調にしたエキセントリックな色彩設計。雰囲気だけで怖がらせようとするハッタリの効いたカット。そして、イタリア映画らしい(ハリウッド作品に比べると)チープで手作り感すら溢れる映像。これらの要素が混じり合い、異様な磁力を放っているのだ。 結局、私も、すっかり映像と音楽が頭に染みつき、翌日も、ふと気づくと、Goblinによるテーマ曲が頭の中でリピートしていたのである。まさに、カルト的傑作オカルト映画だ。 "Suspiria" Luca Guadagnino版 (19.1.25、26)1977年に公開されたDario Argento監督のホラー映画を、Luca Guadagnino監督がリメイクした映画を、ひとりで観てきた。芸術派の印象が強いLuca Guadagninoと、ホラー映画という意外な組み合わせの結果や如何に? オリジナルと、登場人物の名前などは共通している。Dario Argentoが創造した「三姉妹の魔女」という設定も活かしている。舞台となるのは、オリジナルの公開年 1977年のドイツ。ただし、クラッシク・バレエ学校ではなく、現代舞踊のカンパニー。が、共通点はここまで。美少女が惨殺される様子を独自の映像美と音響で描写することに終始したDario Argentoが無視した要素、1977年、ドイツ赤軍のテロなどで騒然とする分断ドイツという時代背景や、ダンスシーン(オリジナル版では、バレエ学校を舞台にしながら、バレエのシーンは殆ど無い)をしっかり描いている。 そして、魔女を単なる邪悪な存在とするのでなく、キリスト教成立以前から存在した、ある種の治癒、あるいは救済を与える者として描くという大胆な思索を展開している(と私は解釈した)のが、このリメイク作の最大の特徴だろう。というか、この魔女に関する解釈をどう捉えるかで、この映画の評価は全く変わってくると思う。いずれにせよ、Argento版とは全く別の映画になっている。 主演は、アメリカから舞踊カンパニーに入団するためにやってきた若い女性を演じたDakota Johnsonということになっているが、実質的にはTilda Swintonのが最重要人物である。彼女は、舞踊団の振付師を演じると同時に、特殊メイクで男性の老人に扮し、ナチス政権下を生き延びたユダヤ系精神分析医も演じている。さらに、もっと強烈な特殊メイクで、終盤に登場するラス・ボス的な存在も演じている。彼女に、魔女とユダヤ人を演じさせることで、キリスト教文明の中で弾圧された「魔女」と、ナチス政権下で弾圧された「ユダヤ人」の共通性を浮かび上がらせるという離れ業を成し遂げたLuca Guadagnino監督と、その期待に見事に応えたTilda Swinton、まさに、鬼気迫る役作りである。 かなりグロい描写もあるのだが、ホラーの枠には収まらない映画で、とにかく情報量が多い。私は金曜日に一度観た後、翌日も観に行ったのだが、二回ぐらいでは監督の仕掛けを理解することは全く覚束ない。ドイツの現代史やキリスト教に関する深い知識も必要だ。それだけ深読みの楽しみが詰まった作品と言えるし、オリジナルとは全く別のベクトルで、これまた、ずっと印象に残り続けるカルト作だ。 これで免疫が出来て、今期はインフルエンザ感染の恐れは無くなったのであれば良いのですが、まだB型に罹る可能性はある訳で、気をつけなければ。 |