IN/OUT (2018.3.4) |
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急に暖かくなった週末。汗ばむほどの陽気と、大量のスギ花粉。個人的不快指数は最大限です。 最近のIN"The Shape of Water" (18.3.3)Guillermo del Toro監督の新作を観てきた。 舞台は1962年。米ソの冷戦が激しかった時代だ。米国政府の秘密研究施設で清掃婦として働く主人公が、研究対象として運び込まれた「半魚人」と心を通わせるようになるという、いかにも監督らしいダーク・ファンタジー。 主人公の女性は、耳は聞こえるが、声を出せない。他者とのコミュニケーションは手話を使う。そんな彼女の側に付くのは、同僚の黒人女性。初老のゲイの画家、善良な心を持ったロシア人スパイと、分かりやすいほどのマイノリティ揃い。そして、その極めつけが、大アマゾンの半魚人。一方、敵対するのは、分かりやすいまでに世俗的な欲望に支配され暴力性に満ちた白人アメリカ人男性。寓話と言うには、あまりにもあからさまな配役である。トランプ政権下のアメリカで活動するメキシコ出身の監督が気概を見せた作品とも言えそうだ。 主人公と半魚人が恋に落ちるところが、いささか唐突という感じもしたが、言葉を介さない、真のコミュニケーションが両者の間に瞬間的に起こったということだろう。 弱者への優しさと、怪獣など異形の物への愛が詰まった物語。画面を覆うノスタルジックな雰囲気の色彩設計と、ほぼ全編にわたって流れる当時のポピュラー音楽の数々。映画的高揚感のある幻想的なシーン。まさに、Guillermo del Toro監督の全てが詰まった傑作だ。2006年の"El Laberinto del fauno(Pan's Labyrinth)"と同じ、ダークな寓話だが、あのようなトラウマ映画という感じでは無いのも嬉しい。 "The 15:17 to Paris" (18.3.4)Clint Eastwood監督の新作を観てきた。 2015年、アムステルダム発パリ行きの高速列車で起きた「タリス銃乱射事件」を描いた「実話物」だが、特異なのは、テロリストに立ち向かった三人の米国人を、本人達が演じていること。さらに、車内の乗客役の多くも、実際にその事件に居合わせた人を集めたという、究極の再現ドラマである。これは、とんでもない珍作になる恐れの有る企画だと思う。 しかし、そこは円熟のEastwood演出。ただのテロ事件再現フィルムにはなっていない。主人公三人の生い立ち、そして、この列車に乗り合わせることになったヨーロッパ旅行の様子を延々と見せることで、ごく普通の若者達が、突然、危機に立ち向かわざるを得なくなった時、何故、あのような英雄的な行動が取れたのかを説得力を持って語るとともに、テロが横行する現代、我々もまた、そのような危機に見舞われ、どう行動するべきか決断を迫られる可能性があることを突きつける。 主人公達は、素人だが、本人の力量なのか、Eastwoodの演技指導の賜なのか、中々の役者ぶりだ。当然、リアリティーも高いし、Eastwoodの手練れの演出は楽しめる。ただ、テロを描いた作品としては、弱いと言わざるを得ないとは思う。それでも、87歳にして、この企画を成立させ、立派な映画に仕上げた手腕に、Eastwood好きは、喝采を送るのである。 これだけ、毎年、多くの人が苦しんでいるのに、抜本的なスギ花粉症対策が進まないのは、有力政治家に重度の花粉症の人が少ないのか、はたまた、花粉症対策薬で儲かっている製薬会社の陰謀か、などと勘ぐってしまう今日この頃です。 |