IN/OUT (2018.3.11) |
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先週がピークかと思っていたけど、今週の花粉はさらに強力… 最近のIN"Black Panther" (18.3.10)Marvel Cinematic Universeの新作を観てきた。 非常によく出来たヒーロー映画である。主役は、これが初の単独作品となるBlack Panther。アフリカの小国ワカンダで、王位を継いだばかりの若き国王である。この国は、大昔に落下した隕石でもたらされたヴィブラニウム(Marvel Cinematic Universeで重要な役割を果たす架空の金属。Captain Americaの盾も、ヴィブラニウムと鉄の合金)を用いた超科学を発達させているのだが、その事を他国には秘密にし、貧しい農業国を装っている。そして、その秘密を守るのが、特殊な薬草で肉体を強化し、ヴィブラニウムで出来たスーツをまとった国王=Black Panther。この、いささか無理のあるマンガチックな設定を巧みに説明し納得させてしまう導入部から、じつに上手い。 さらに、特徴的なのは、美術や音楽など、画面の隅々まで黒人文化を取り入れているところ。元々、このヒーローは、米国で公民権運動が盛り上がっていた1966年に、初の黒人スーパー・ヒーローとして登場したのだ(因みに、政治組織 ブラックパンサー党とは無関係)。登場人物もほとんどが黒人で、敢えて訛りの強い英語を喋っている。舞台の大半はワカンダなのだが、超科学を発達させた黒人国家の描写が、白人に侵略されずに独自の文化を育てていたらこうなっていたかもしれないアフリカという感じだ。 敵役も、単純な悪役とは割り切れない人物造形になっていて、物語的な深味もある。Marvel作品、さすがのクオリティの高さである。 ただ、この作品のテーマ、ヴィブラニウムによる恩恵を独占し世界情勢から孤立していて良いのか、そのテクノロジーを開放し他国からの難民も受け入れるべきなのかという、主人公に突きつけられる問いかけには、居心地の悪さも感じてしまう。欧米が直面している難民問題を実感することも無く、(ニッポン凄い!みたいなテレビ番組を量産するなど)内向き志向が目立つ日本にこそ、突きつけられている問いなのではないか? ユリカモメの頭が少し黒っぽくなって来たようにも見え、これもまた春の印です。 |