IN/OUT (2018.1.28) |
|
先週月曜の大雪以降、非常に寒い日が続いています。 最近のIN"Jupiter holdja" (18.1.27)ハンガリーとドイツの合作映画を観てきた。監督はハンガリーのKornél Mundruczó。英語タイトルは"Jupiter's Moon" タイトルは、木星の衛星という意味だが、ここでは第二衛星であるエウロパの事を指している。Arthur C. ClarkeのSF小説で、そこに存在する生命体が重要な意味を持つ有名作があることでもお馴染みだが、その名前(ギリシャ神話から名付けられている)"Europa"は、ドイツ語で「ヨーロッパ」の意味でもある。 ハンガリー入国を目指すシリア難民の青年が主人公の一人。彼は、ハンガリー国境で父とはぐれ、国境警備隊に銃撃される。もう一人の主人公は、ハンガリーの中年医師。医療ミスで患者を死亡させ、その賠償金の金策に悩まされている。この医師の目の前で、銃撃され瀕死の重傷だったはずの青年は、何故か傷が癒えただけでなく、重力を操り空中に浮揚する能力を獲得する。この奇跡の青年を使って賠償金を稼ごうと、中年医師は青年を連れて難民キャンプを逃げ出す。という、奇想のストーリー。 重力をコントロールできる超能力を獲得した青年という設定は、SF的に発展することは無い。この能力は、初めは金儲けの手段として利用され、やがて、天使の奇跡のような、宗教的寓意に満ちたものとして描かれていく。 ということで、ヨーロッパにおける難民問題と、キリスト教的寓意という、日本人にはピンと来ない二大要素が主題の映画で、一般受けはしないと思われる。また、主人公の二人、どちらにも感情移入しづらいし、物語のテンポも、商業娯楽作とはかけ離れたものだ。それでも、映画を貫く異様な骨太感に圧倒される作品でもある。 その力強さの根源は、監督の独特の映像感覚だ。青年が超能力を獲得し空を飛べるといっても、それは飛翔ではなく浮遊なのだが、不器用に重力をコントロールし空中に浮かぶ彼を、カメラ自体も立体方向に回転しつつ捉える映像の不安定感。あるいは、カー・チェイス・シーンでの、思い切ったローアングルの追跡車視線のカメラ・ワークが煽り立てるスピード感と不安感。これらの映像が、異常な緊張感をもたらすのだ。 他人には勧めづらい映画だし、私も手放しで誉める事は出来ないのだが、悪夢的な印象だけはしっかり残る作品だった。 「EPO×佐橋佳幸×清水信之 "My Generation, Your Generation" おとな文化祭」@ビルボードライブ東京 (18.1.28)シンガーソングライターのEPO、キーボード・プレイヤーの清水信之、ギタリストの佐橋佳幸を中心にした公演を観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。この三人は同じ時期に東京都立松原高等学校に在籍していたのだ。EPOを中心に、清水信之が二つ上の先輩。佐橋佳幸が一つ下の後輩という間柄。 三人に加え、キーボードの柴田俊文(佐橋佳幸と同学年。松原高校の同級生に友達がいた関係で、在学中に佐橋佳幸と知り合い、音楽活動を共にするようになったそうだ)、ドラムスの玉田豊夢、コーラスにハルナとENA、ベースに松原秀樹(元ジャニーズのアイドルからスタジオ・ミュージシャンになった異色の経歴。今回は、「松原」という名字が理由で参加?)が、バックを務める。 私は、この企画を知ったとき、林立夫らのAFTER SCHOOL HANGOUTのような、彼らが学生時代に熱中していた曲をカヴァーするのかと思っていた。しかし、一曲目の「音楽のような風」から、ずっと、EPOの曲ばかり。結局、EPOの公演のバックを同窓生主体のバンドがやるというノリで、ちょっと期待が外れてしまった。 しかし、このプレイヤー達の演奏がつまらない訳が無い。特に、佐橋佳幸のギター職人ぶりをたっぷり楽しませていただいた。ほぼ一曲毎に異なるギターを使い分け、様々な奏法と音色を繰り出す様は、つくづく凄い。そして、自分でも驚いたのだが、ファンということは無かったはずなのに、演奏されたEPOの曲、ほとんどが耳に馴染みのあるものだった。やはり、この年代のクオリティの高い楽曲は、どこかで覚えているものだ。 曲間のEPOを中心にしたおしゃべりも、デビュー前のデモ・テープ録音に、当時17歳の佐橋佳幸が参加していたなど、興味深い昔話がたっぷりで楽しい。EPOが、佐橋佳幸の事を「佐橋」と呼び捨てにしているところも、なんだか良い感じだ。 ライヴの終盤は、「VITAMIN E・P・O」、「DOWN TOWN」、「土曜の夜はパラダイス」、「う、ふ、ふ、ふ、」という鉄板の盛り上がり曲、連打。そして、アンコール。三人だけで登場し、荒井由実の「12月の雨」。そして、バンド全員を呼び込んでEPOの「語愛」。これで全編終了かと思いきや、三人だけが残って松原高校の校歌を歌って、おしまい。 期待していたものとは違う公演ではあったが、結局、十分に楽しんでしまった。 冬なので、寒いのは仕方ないとして、例年以上の寒さがこれ以上続くと、(某大統領のような)地球温暖化を認めない人達を勢いづかせてしまわないかと気になってしまう今日この頃です。 |