IN/OUT (2016.4.24)

昨年末あたりから目立つ、ロック・ミュージシャンの訃報に、先週は Princeの名前まで連なってしまいました。いささかアクが強過ぎて、日本ではマニア受けという気もするミュージシャンでしたが、米国での人気は絶大で、死去のニュースも、こちらでは想像できないような大きな取り上げられ方だったようです。私も、David BowieやKeith Emersonに比べると、思い入れは少ないものの、その音楽史に与えた(いや、死の直前まで現在進行形で与え続けていた)影響を考えると、57歳というのは早過ぎるという喪失感にとらわれます。


in最近のIN

"The Revenant"16.4.23

2016年のアカデミー、監督賞を Alejandro G. Iñárritu(2年連続受賞!)、撮影賞を Emmanuel Lubezki(3年連続受賞!!)、そして、主演男優賞をLeonardo DiCaprio(初受賞!!!)が、それぞれ受賞した作品を観てきた。

DiCaprioが演じるのは、米国開拓時代、実在の人物 Hugh Glass。彼は、1822年に、毛皮貿易を目的としたミズーリ川沿いの探検隊に参加。途中、クマに襲われ瀕死の重傷を負い、息子を目の前で殺され、仲間に見捨てられたが、不屈の意志で320Kmの道のりを進み、生還した(息子のくだりは、史実ではなく映画的脚色だと思われる)。米国では、今も、かなり有名な話らしい。

その実話を、Iñárritu監督は、徹底的なリアリティで描き出す。撮影はマイナス25度になるカナダのロケ地で、照明を用いず、自然光のみで行ったという。画面から、暴力的な自然の脅威が観客にのしかかってくるような映像は、圧倒的だ。俯瞰で観れば美しい自然も、地面に近づけば、荒々しく、不潔で、臭いという事実を突きつけるような画面。アカデミー撮影賞も納得。このカメラワークだけでも、映画好きには必見の映画と言えそうだ。

そして、DiCaprioの演技もまた、見所だ。土に埋められ、泥にまみれ、冷水の中に沈み、死んだ動物の臓物を抉り出し、死骸の中に潜って寒さを凌ぐ。これ、最近流行の4DMXで上映されたりしたら、観た人は一生トラウマになりそうだ。そういう肉体的苛酷さの中、台詞は最小限。目力と表情で、愛する息子を奪われた復讐のため、生へ執着する意思の強さを表現する。凄みに溢れた演技である。

ストーリーはシンプルながら、強烈な見応えに満ちた作品だ。ただし、監督の前作"Birdman: Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)"と同様、鑑賞後には、爽快感では無く疲労感が襲う、とういタイプの映画である。



やはり、引っかかりのあるミュージシャンのライヴは、観られるチャンスを逃してはダメだなと思うと同時に、最近、若手ミュージシャンの作品を積極的に聴いている訳では無いので、好きな(現役)ミュージシャンのラインナップがどんどん細っていきそうな気もしてきました…

【追記】上記の文章をアップしてから、2時間後、コンゴを代表するミュージシャン、Papa Wembaが、ステージの上で倒れ、そのまま亡くなったとのニュースが…。リンガラ・ポップ、良く聴いていた時期が有ったんだよなぁ…