IN/OUT (2014.11.9)

六本木ヒルズ森タワーなど、観光名所の高層エレベーターに乗っていると、必ずと言って良いほど、「耳がキーンとなった」という会話が聞こえてきます。そういう会話を交わしている人達のほとんどは、それまでも何度か「耳がキーン」体験をしているにも関わらず、「お約束として」口にしてしまっているのではないか、と愚考する今日この頃です。


in最近のIN

"The Double"14.11.8

ドストエフスキーの小説「分身(「二重人格」というタイトルでの翻訳も有り)」の映画化作品を観てきた。邦題は「嗤う分身」。

冴えない小心者の主人公の前に、ある日、自分と全く同じ姿形の男が同僚として現れる。しかし、その男、中身の方は主人公とは正反対。快活でずる賢い彼は、主人公から、仕事の手柄も、憧れの女性も、次々と奪っていく。というお話。

不条理なストーリーを、さらに悪夢めいたものにしているのが、時代も場所も定かでは無い、その舞台設定だ。主人公が働いているのは、「情報処理」を行っている企業らしいのだが、その職場風景にハイテクな要素は無い。ちょっと、Terry Gilliamの「Brazil」を思わせる雰囲気だ。他に、通勤電車や主人公が暮らすアパートなどが舞台となるのだが、どこも日の光は当たらず、ディストピア的な感じが強い。さらに、劇中に流れる音楽も、坂本九の「上を向いて歩こう」、ブルーコメッツの「ブルー・シャトウ」「草原の輝き」「さよならのあとで」「雨の赤坂」、さらに韓国のKim Jung Miや、アメリカのThe Islandersの曲と、ゴッタ煮状態(どの曲も、昭和歌謡臭がぷんぷん)。これぞ不条理劇の映画化。

主演は、Jesse Eisenberg。対照的な二人を演じ分けつつ、徐々に狂気に陥っていくところは、本当に見事な演技だ。ヒロインのMia Wasikowskaも、好演。

爽快感とは無縁の映画だが、ひねくれた笑いの要素もあり、なんとも奇妙な後味の映画だ。


「ティム・バートンの世界」14.11.9

森アーツセンターギャラリーで開催中の、映画監督 Tim Burtonの作品展を観に行ってきた。

入場待ちの行列が出来ていて、中も大混雑。さすが、人気監督。主催にフジテレビが名を連ねていることから、もっと軽めの展示かと油断していたが、中々どうして、「アーティスト」としてのTim Burtonの全体像を伝える、質・量ともに充実した展覧会になっていた。私自身は、「Big Fish」が大好きな映画ではあるが、必ずしも、彼の映画全部がお気に入りという訳では無く、彼の特徴である、「縫い目」のついた異形のもの達がずらっと並ぶ展示には、いささか疲れてしまった。それでも、映画好きとしては観ておくべき展覧会だと思う。

因みに、森美術館の方では、「リー・ミンウェイとその関係展」と題した、台湾出身のアーティスト、リー・ミンウェイの個展が開催されていて、そっちも覗いてきた。観客が参加することで完成する作品が多い。たとえば、アーティストと差し向かいで食事をするという「プロジェクト・ともに食す」や、観客が持ち込んだ衣類を、アーティストがその場でコミュニケーションを交わしながら繕うという「プロジェクト・繕う」など。どれも、着想は面白いと思うのだが、ちょっと苦手なタイプの「現代美術」だった。



森タワーのエレベーターでは、最上階に着く直前、「下かご乗降中」という謎のアナウンスが流れて、ちょっと止まるということがあります。調べてみたら、ここのエレベーターは二階建てになっていて、自分が乗っているエレベーターの下側では、まだ人が乗降中、という意味らしいのですが、いきなり「下かご乗降中」って言われて、意味が分かる人っていないと思う。アナウンスする必要性、あるのかなぁ?