IN/OUT (2014.5.11)

カーネーションゴールデンウィーク完全終了。期間内、社用メールへ一切アクセスせず、しっかり休みました。


in最近のIN

"Student of the Year"14.5.5

インド製の学園映画を観てきた。邦題は「スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!」

舞台は、インドの名門学園。主人公は、スポーツ万能かつ頭脳明晰なイケメン男子学生二人。一方は、大物実業家の息子だが、父親とは上手くいっておらず、ロックスターになることを夢見ている。もう一方は、早くに両親を亡くし、親戚に引き取られて暮らしている奨学金生。初めは反発し合った二人が、やがては友情を結ぶのだが、学園一の美女を巡り、さらには毎年恒例のナンバーワン学生を選ぶコンテストで、激突してしまう。そのまま行き違った彼らが10年後に再会し、そこで知った真実とは… という筋立て。

はっきり言って、ストーリーはイマイチだった。感動させようという狙いは分かるのだが、ちょっと、仕掛けが浅いかな。インド系のイケメン好きには目の保養になりそうな映像が多いが、私は嬉しくない。肝心の美女の方が、今ひとつなんだなぁ。

その辺の弱さを補うのが、たっぷりと盛り込まれた歌とダンスだ。最近のボリウッド映画はダンスシーンが少なめのものが多くなったようで不満だったが、この映画ではてんこ盛りの大サービス。やはり、インド映画はこれでなくちゃね。

最近、TVニュースで、「アナと雪の女王」の「シング・アロング」上映が取り上げられているのを見た。「新しいタイプの上映スタイルです」と語るキャスター。これには違和感が。あんなお上品なシング・アロングじゃなく、我々には、一年前から既に「マサラ上映」があるのだ(観客が、歌って、踊って、クラッカー鳴らして観るスタイル。インド映画を盛り上げるため、日本の配給元が企画したもの。実際には、本場インドでも南部の一部映画館でしか、こんな光景は無いのだが…)。この映画も、上映館 シネマライズでは、三週間予定されている上映期間内に、6回のマサラ上映が予定されているのである(ただし、紙吹雪OKなのは、3回だけ)。もう一回、観に行っとこうかなぁ。


「マーク・リボー『紐育の波止場』ライヴ」 in 第7回爆音映画祭@吉祥寺バウスシアター14.5.5

バウスシアター 2014年5月末で閉館が決まった吉祥寺の老舗映画館 バウスシアターの最後を飾るイベント「THE LAST BAUS さよならバウスシアター、最後の宴」の一環として、「第7回爆音映画祭」が開催されている。爆音映画祭とは、バウスシアターの名物企画で、爆音上映=音楽ライヴ用の音響セッティングで、思いっきりボリュームを上げて映画を上映するというものだ。そして、今回の上映作の中に二本、爆音なのに無声映画がラインナップされている。「紐育の波止場」と「キッド」。無声映画のバックで、ニューヨークのギタリスト、Marc Ribotがギターを弾くという企画だ。

Marc Ribotは、矢野顕子のライヴで共演するのを何度も観ているし、彼が率いるバンド Ceramic Dogは、矢野顕子の最新超絶傑作アルバム「飛ばしていくよ」にも参加している。その彼が、今回は、この爆音上映のためだけに来日。これは聴きに行かねばなるまいと、吉祥寺に出かけてきた。

私が観たのは、Josef von Sternberg監督の1928年の作品。"The Docks of New York(紐育の波止場)"。荒っぽい船乗りが波止場で薄幸の女と出会い、愛に目覚めるという筋立てだ。上映開始のベルが鳴り、Marc Ribotが登場。無言のままギターを抱えてスクリーン脇に座り、照明が落ち、映画の上映が始まると同時に弾き始める。

無声映画の伴奏と言えば、アコーディオン等の、ノスタルジックな音色の楽器が思い浮かぶところだが、Marc Ribotの奏でる音は正反対。鋭角的で歪みを効かせた音でガンガン攻めてくる。一方、画面の方は、いかにも昔のフィルムらしく、周囲が光量落ちしたモノクロ映像。無邪気に合っているとは言い難いコラボレーションだが、これが中々。

無声映画をちゃんと観た記憶はあまり無いのだが、このSternberg作品、台詞に頼れないこともあってか、とても丁寧な、情感溢れる映像になっていることに驚いた。柔らかい光と影が、一夜の夢物語をロマンチックに語る一方で、むせ返るような船の機関室の描写で主人公の男臭さを雄弁に描く。90年近く前の物語だけに、今となっては陳腐なところもあるが、主人公の行動がハードボイルドで泣かせるのだ。

それに対するMarc Ribotのギターは、画面にべったり寄り添う訳では無く、あくまでも自分の個性を貫いた尖鋭的なサウンド。それが、時代がかったモノクロの物語に掛け合わされると、1920年代の紐育の波止場が、レトロ・フューチャー感溢れる時空に変容するようだ。主人公が働く船の機関室も、なんだかスチームパンクのように見えてくる。結果、この映画が持つ、ノワール風、あるいは、ハードボイルド風な味わいが引き立つという寸法。面白い試みだ。

中央線サブカルチャーを代表する拠点の一つ、バウスシアターが無くなるのは残念だが、最後に、Marc Ribotのソロ・インストゥルメンタルを90分間ぶっ通しで聴くという希有な機会を与えてくれ、感謝。


「ニコラ ビュフ:ポリフィーロの夢」@原美術館14.5.6

原美術館で開催中の展覧会に行ってきた。1978年 パリ生まれ、東京在住のアーティスト、Nicolas Buffeの個展である。

原美術館 原美術館の構造を活かし、徹底的に作り込まれた展示は、楽しいの一言。まずは、美術館の入り口が、
← これだ。狼の口の中に入っていくと、さらに、いつもの入り口とは全然違う仕掛けが施してあって、期待が高まる。

原美術館 中に入る。紙芝居ビデオで説明されるこの展覧会の世界観=少年ポリフィーロが、愛する少女ポーリアを探して冒険するという、ロールプレイング・ゲーム的な設定を頭に入れ、いよいよ二階展示室へ。階段の踊り場の窓も、ステンドグラス調に装飾される芸の細かさ。
原美術館 ここで目にするのは、コンバットスーツを蒸着したスーパーポリフィーロ!Nicolas Buffeは日本のアニメや特撮に大きな影響を受けており、このスーパーポリフィーロは、16世紀のヘンリー二世の甲冑と「宇宙刑事ギャバン」の二つを組み合わせて構想された物。制作には「宇宙刑事ギャバン」の甲冑を制作したレインボー造形企画が協力したという。次の部屋では、さらに、この甲冑が大活劇を繰り広げるインスタレーションが楽しめるなど、工夫がたっぷり。

原美術館 最後、一階の一番大きな展示室に行くと、細部までぎっしりと作り込まれた空間に圧倒される。さらに、要所要所にいる監視スタッフも、特製の衣装を身につけているというこだわりよう。

写真撮影自由というのも楽しく、この空間に身を置くだけでワクワクしてくる。深みとかは、あまり感じられないのだが、最初から最後まで、楽しくて、口元が緩みっぱなしの展覧会。単に壁に絵画をぶら下げるような展示では無く、美術館の建物自体を作品にしてしまうのが、いかにも原美術館。連休ラストに、充実した体験だった。なお、近く、美術館メンバーを対象にしたアーティスト本人によるガイドがあるということなので、早速申し込み。



ホスティングサービスを替えた結果、使えるディスク容量が増えたので、一回り大きいサイズの画像も表示するように変えてみました。JAVA Scriptを深く理解せずに使っているので、もし、表示に問題があれば、ご指摘いただきたく。