沢山作りすぎるのも面倒くさいので、あまり種類は持っておらず、無愛想に首を横に振ることが多いのですが、今日訊かれたのは、「ポイントカードはお持ちじゃないんですか?」
サダム・フセインの長男、ウダイの影武者を描いた映画を観てきた。実際にウダイの影武者を4年間務めていたいうラティフ・ヤヒアの自伝の映画化である。
ウダイは、成果を上げられなかったスポーツ選手への拷問や、乱れた私生活で悪名高い人物だった。映画でもその非道ぶりが描写されているが、ラティフ氏曰く「映画の70%は真実」ということだ。
フセイン家の絶対的な権力に守られ、自らの欲望のままに暴走するウダイと、自分と家族の命を守るためには、その権力に屈するしか無いラティフ。この二人を演じるDominic Cooperの演技が見事だ。容貌は似ていても(影武者なのだから当たり前だ)、中身が全く違う二人、狂気溢れるウダイと、自らの正義感を押し殺すしかないラティフを、的確に演じ分け、映画に説得力を持たせている。
Lee Tamahori監督は、シーン毎に光や色調を変える演出を施していて、特に、ウダイの狂気に満ちた行為を描く際の、ギラギラした色彩が効果的。ただ、扇情的な描写にならないよう抑制されてもいるようで、エクスプロイテーション映画とは一線を画す作品になっていると思う。また、製作国がベルギーとオランダ。米国製映画では無いためか、サダム・フセインを必ずしも絶対的な悪としては描いていないところも興味深い。
良い映画だとは思うのだが、もう少し、奥行きが欲しかったような気もする。この辺は、自伝の映画化ということで、どうしても主人公の主観が強調されてしまうため、限界があるのだろう。