IN/OUT (2008.12.7)

そろそろ、冬の矢野顕子強化月間突入。先週は、その前哨戦。


in最近のIN

Lisa Loeb at Billboard Live Tokyo08.12.3

Lisa Loebの公演を観に、ビルボードライブ東京に行ってきた。

彼女は、1995年デビュー。心地よいメロディー・ラインと繊細な歌声。そして、何よりも黒縁眼鏡が印象的な米国女性シンガー・ソングライターだ。女優業や声優業も行っており(アニメ版 Spider-Manで、Mary Jane Watsonの声を担当したそうだ)、米国では、なんと料理番組の司会もやっていたらしい。

ステージには、ベース、ギター、ドラムス、さらに、コーラス・パーカッション、キーボード・フルートを兼ねた女性(Daru Oda。名字からも見た目からも、日系人と思われる)の4人のバック・バンドに、アコースティック・ギターを抱えたLisa。生で彼女を見るのは初めてだが、トレードマークの黒縁眼鏡がなければ、ごく普通の白人女性という感じ。キティちゃん好きということから、かなりの日本贔屓だと思われる彼女だが、冒頭、バンド・メンバー紹介での、「知っている日本語を言ってみて」との問いかけに、ギターのAdam Levy氏「ヒツマブシ ヲ クダサイ」。どうやら、バンド全員が日本贔屓のようだ。

演奏の方は、良い意味で、極めて普通。CDから大きくアレンジを変えることもなく、シンプルで気持ちの良いギターと歌声が響く。途中、観客と「どんぐり・ころころ」を合唱する、John "YES" Andersonかっ! と突っ込みたくなる展開があり、また、アンコールでは、バンド・メンバーが各々自己主張するようなプレイの応酬があったりしたが、それ以外は、意外性や、緊張感を感じること無く、ステージが流れていく。普通に美しい曲を、普通にきれいな歌声で、普通に演じきることの心地よさを満喫した、という感じの公演だった。


「ハンバートハンバート劇場 鬼のいぬ間にべっさっそ」08.12.5

日本の男女デュオ、ハンバートハンバートの公演を観に、世田谷パブリックシアターに行ってきた。と言っても、この日は仕事が片付かず、到着したのは開演一時間後。二部構成の公演のちょうど休憩時間。残念ながら、後半だけの鑑賞になってしまった。

彼女らを知ったのは、つい最近、Fiddlers Bidのライヴにゲスト出演したのを観たときだ。妙に耳に残るサウンドで、CDも買わないまま、とりあえずライヴ参戦を決意。その即断は間違ってなかった。

森の中の花畑をイメージしたようなステージセットの中、アコースティック・ギター、フィドル、ピアノを担当する佐藤良成と、ヴォーカルとハーモニカ、縦笛などを担当する佐野遊穂の二人だけ。アコースティックなフォーク、カントリーを基調に、アイリッシュ・ミュージックや童謡の要素も感じられるサウンドと、伸びやかさと温もりが同居する佐野遊穂の歌声が、なかなか良い感じ。歌詞も、ほのぼのしたものから、ブラック・ユーモアに満ちたもの、さらに意外に大人のものと、独自の世界を築いている。

ぱっと見では、毒にも薬にもならない男女デュオのようだが、なかなかどうして、音楽的な懐の深さは相当のものだと感じる。かなり精力的にライヴを行っているようなので、今後も追っかけてみたいミュージシャンだ。


"Shine a Light"08.12.6

Martin ScorseseによるThe Rolling Stonesのライヴ・ドキュメンタリーを観てきた。

当初、Stones側からは、10万人規模の野外公演の映画化が提案されたらしいが、Scorseseが選んだのは、2006年の秋、ニューヨークのBeacon Theaterでのライヴ。キャパは2,600人。Stonesのコンサートとしては、滅多にないような小さなハコだが、それだけに会場の一体感・熱気がスクリーンを通しても伝わってくる。さすが、劇映画だけでなく、音楽の映像化手腕でも超一流の監督。的確な判断だったと思う。なお、このライヴは、Bill Clinton元大統領の60歳の誕生パーティーで、元大統領が運営する慈善財団の資金調達も兼ねていたそうだ。

映画のメインは、もちろんライヴ映像。とにかく、このおじいさん達のステージ上でのカッコ良さは尋常じゃない。まさに、現役最強のロック・バンド。それを映し出すカメラワークも見事。テレビで放映されているライヴ中継なんかとは、レベルが明らかに違う。また、映画館の音響が進化していることもあり、スクリーン越しでも、かなりの臨場感を味わえる。映画館なので、静かに座っての鑑賞だったが、特にライヴ後半の盛り上がりでは、立ち上がって一緒に叫び声を上げたいところだ。

一方、Scorsese監督は、これが自分の「作品」だと主張することも忘れていない。Stonesのメンバーが、コンサートの主催者であるBill Clinton元大統領や、そのゲストに対し、見事な社交術を見せる姿を映し出したり、70年代頃のインタビュー映像を挿入するところなど、皮肉を効かせた演出だ。さらに、映画の冒頭は、メイキング映像風になっているが、ここで一番カッコ良く映し出されているのは、Scorsese自身。特に、本番がスタートする瞬間の決めっぷりは、Stonesがかすむほどだ。

それにしても、監督もバンド・メンバーも、皆、60代。それで、この熱さ。ロックが若者文化の代名詞だったなんて、遠い過去の話になってしまったようだ。



12月のイベントのチケットを取得した時点から、社会・経済情勢が激変し、仕事も大騒ぎ。果たして今後のライヴ参戦スケジュールがどうなるのか、暗雲立ちこめる今日この頃です。