IN/OUT (2008.10.26)

久々、矢野顕子の新アルバムが発売。以前であれば、発売日の数日前からレコード屋を覗いては、一刻も早い入手を! と気合いが入っていたものですが、今では、通販で予約してゆったり構えるだけ。これもまた歳を取ったということかなぁ、と思うと、我ながら寂しい気も…


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寺井尚子 ライヴ at november eleventh 111108.10.23

ジャズ・バイオリニスト、寺井尚子の演奏を、赤坂のライヴ&レストラン、november eleventh 1111で観てきた。

寺井尚子については、これまで、名前ぐらいしか知らなかったのだが、先日の「東京JAZZ」での演奏で興味を持ち、今回のライヴを観てみることにしたのだ。

会場の、november eleventh 1111も、初めて訪れる店だ。赤坂の一ツ木通り、ビルの二階にあり、食事とライヴ(毎日 2セット)を楽しむというコンセプトは、ブルーノート東京などと同じだが、もっと、カジュアルな雰囲気。一見、普通のビストロ風の店内中央に小さなステージがあるだけで、キャパとしては、立ち見も入れて50人ぐらいじゃないだろうか。出てくる料理も、一番の名物がキャベツ・ステーキ(キャベツにチーズを挟んで、コンソメで煮た後、オーブンで焼いた料理)という庶民派。今時、禁煙どころか分煙もしていないという店だが、居心地は良い。何より驚いたのが、その音響。どう見ても、まともな響きの期待できないフロアなのだが、なかなかどうして、クリアな音が響いている(スピーカーは、壁面に埋め込まれた、L-Acousticsの12XT)。やはり、オーナーがミュージシャンだけに、こだわりがあるのだろう。

運良く、ステージかぶりつきの席をゲット。ミュージシャンとの距離、約1メートル。まさに目の前で、ノースリーブの寺井嬢がバイオリンを弾く訳で、擦弦楽器を弾き倒す女性に弱く、かつ、二の腕フェチの私には、夢のような席である。バックは、北島直樹(ピアノ)、店網邦雄(ベース)、中沢剛(ドラム)の各氏。

さて、演奏開始。一曲目の途中でバイオリンの弦が切れるハプニングがあったが、バック・バンドの間奏中に、フロアに降りて弦を張り直して、そのまま演奏継続。これもまた、ライヴの醍醐味だ。その後も、素晴らしい演奏が続き、バックも的確なサポートをしているのだが、完全にのめり込むには、何か毒気が足りないかなぁ、という感じもしていた。

と、寺井嬢、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」の印象的なフレーズを軽く弾いて、サプライズ・ゲストを呼び込む。登場したのは、この店のオーナー、宇崎竜童氏。これまでも、彼女のライヴでは、しばしば呼び出されてステージに上がっているらしい。ブルース二曲を共演。これが、カッコ良かった。これまで、宇崎氏の音楽については、特別な印象は無かったのだが、極至近距離で、そのパワフルな歌声を聴くと、グッと来る。そこに絡む寺井嬢のバイオリンも、実に良い感じ。リハーサル無しで演っているということだが、ステージでの二人の駆け引きは、スリリングで、観ていて本当に楽しい。宇崎氏退場後、それまで淡々としたMCしかしていなかった寺井嬢が、「スバラシー! ライヴ、サイコー!」と、ほとんど素のまま、感極まったように口走っていたが、こちらも全くの同感だ。

その後、チック・コリアの曲と、アンコールに「星に願いを」で終了。良い空間で良い時間を過ごせた夜だった。



とはいえ、届いた新アルバム「akiko」が、近年にない力作にして大傑作。進化し続けるミュージシャンの音楽をリアルタイムで聴き続けられる幸せを感じる今日この頃です。