IN/OUT (2008.6.29) |
|
靴のソールが剥がれたり、ネジが知らない間にゆるんでいて、突然、眼鏡のレンズが外れたり、ポケットティッシュを入れたままジーンズを洗濯機に放り込んでいて、えらいことになったり、鍵を持たずに外に出てしまい、集合住宅エントランスで挙動不審の人になってしまったり。小さな不幸が続く今日この頃です。 最近のIN"Eastern Promises" (08.6.20)David Cronenberg監督の新作を観てきた。邦題は、単数形になって「イースタン・プロミス」。このタイトルは、ロシア・東欧とロンドンの裏社会の間に存在する人身売買契約を意味するそうだ。 Naomi Watts演じる助産婦が、病院で出産直後に息を引き取った少女の身元を調べるうち、自分たちが暮らす日常世界のすぐそばに潜んでいる冷酷なロシアン・マフィアの裏社会に関わっていく。 ロシアン・マフィアのボスの息子に仕える運転手が、Cronenbergの前作、"A History of Violence"に続いて主役を演じるViggo Mortensen。徹底して非情なギャングに見える一方で、何か秘密を抱えていそうな謎めいた男を、熱演。話題になったサウナ風呂での全裸殺し合いなど暴力シーンの迫力はもちろん、普通のシーンでも、その所作の一つ一つに切れ味鋭いナイフのような静かな凄みが満ちていて、圧倒的な存在感だ。 リアルな肉体破壊を伴う暴力シーンが多く、18禁となった作品ということで、それなりの覚悟はしていたが、とにかく「痛い」シーンが続出。監督の暴力への拘りは、新作が出る度に、深みを増しているようだ。また、Cronenberg監督作品に私が惹きつけられる特徴の一つが、寒々とした映像なのだが、ロンドンを舞台にした今作でも、その寒々しさは全開。Cronenberg好きには満足度十分の映像が続く。 ストーリーは、淡々と進んでいくようで、後半、意外な展開が待っている。しかし、肝心なところで偶然に頼ったご都合主義が見られるのが、緊張感をはらんだ映画の中では少し残念だ。奥行きの深い映画だが、CronenbergとViggo Mortensenのコンビ、今後も続くとしたら、バイオレンスの極北まで行ってしまいそうで、楽しみであり、怖くもあり。 来週は、出張のため、おそらく更新不可だと思われます。旅の途中の小さな不幸は、何卒勘弁願いたい。 |