IN/OUT (2006.3.12)

少々忙しくても、週一回は映画館に通うだけのペースを取り戻してきた今日この頃です。


in最近のIN

"A History of Violence" (06.3.11)

David Cronenberg監督の新作を観てきた。

タイトルからは、暴力についての歴史映画かと勘違いしそうだが、これは、捨て去ったはずの「暴力の前歴」から逃れられない男を描いた作品だ。Viggo Mortensenが、最初のマイホーム・パパ然とした雰囲気から、ラストの頬のこけた虚無的な表情に変わっていくまでを、見事に演じている。

先週、先々週に観た、"Hotel Rwanda"も"Munich"も重い題材の映画だったが、商業映画らしい演出や、ちょっとしたユーモアも加えられていたと思う。しかし、変態監督Cronenbergは、そのような容赦はしない。寒々とした画面に、暴力と、それにより崩壊していく家庭を、淡々と描き出していく。暴力シーンは、爽快感のあるアクション映画的演出とは無縁の、生々しい傷口を見せつけるリアルで痛々しいものだ。

嫌悪しても、逃れようのない暴力。それによって守られた平和を受け入れることができるのか。映画は一家族の物語だが、現在の世界状況とシンクロする暗喩でもあるだろう。唯一、音楽があまり好みでなかったのが難点だが、非常に印象に残る作品だった。

どうでもいいことだが、映画館で隣にいた観客が、大学生らしき息子とその両親の三人連れだったのが気になった。私には、家族連れでは絶対に観たくないタイプの作品である。



映画館の予告編上映で流れていたのが「サウンド・オブ・サンダー」。「2055年、人類絶滅」だとか「SF界の巨匠 レイ・ブラッドベリの世界を完全映画化」などの惹句が躍っていますが、どう見ても、ブラッドベリの原作から基本アイディアをいただいただけの、(お馬鹿B級)映画化でしょう。ディックの「追憶売ります」が、映画「トータルリコール」に化けたが如く。なにが完全映画化だか…

で、この映画の前売り特典が、砂時計。そのこころは「サンド・オブ・タイマー」という語呂合わせ。さすがに、これには苦笑。