IN/OUT (2008.5.11) |
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たまたまですが、"King"で二題。 最近のINKaki King at Blue Note Tokyo (08.5.10)Kaki Kingのライヴを観に、ブルーノート東京に行ってきた。 Kaki Kingは、1980年、米国生まれの女性ギタリスト。5歳の時からクラシックギターを学び、その後、オルタナティブ系のロックに傾倒。ニューヨークのKnitting Factoryに出演したのをきっかけにスカウトされ、インディーズ・デビュー。…という経歴らしい。2004年にはフジ・ロック・フェスティバルにも出演したそうだが、つい最近まで、私はその存在を全く知らなかった。 先月、ブルーノート東京に行った際、開演前に流れていた前売り公演の宣伝ビデオ。そこに映っていたのは、Ovationのエレクトリック・アコースティック・ギターのあらゆる部位を使い、メロディーとリズムを同時に叩き出す華奢な女の子。ギターの奏法に詳しい訳ではないが、あんなのは見たことが無い。一台の撥弦楽器が奏でているとは思えないすさまじい演奏に度肝を抜かれ、速攻、チケットを取得したのである。 結局、そのビデオ以外の事前情報は仕入れずに観に行ったライヴ。ステージに登場したKaki Kingは、訥々とした日本語で 基本は、彼女のギター・ソロだが、何曲かは、サポートミュージシャンのDan Brantiganが、フリューゲル・ホルン等で参加。彼との共演では、ニューエイジ的なサウンドを聴かせる。また、数曲、フォーク調のギター弾き語りもあった。ギターのテクニックとは対照的に、ヴォーカルの方は十分にコントロール仕切れていないという気がするが、素朴な感じで悪くはない。 しかし、圧巻は、やはりギター・ソロ。スタイルで言うと、オルタナティブで、プログレッシブで、ネオ・アコっぽいところもあるという感じ。ループも使いながら、ソロとは思えない多層的な音を奏でていく。メロディー・ライン重視の曲調では無いのだが、時折、こちらのスイート・スポットど真ん中の、ドキッとするようなフレーズを聴かせてくれるし、魔法のような彼女の両手の動きと、そこから繰り出される多彩な音色に身を委ねていると、何とも心地よい。 勢いで取得したが、大正解のチケットだった。今後も要注目のミュージシャンだ。 最近のOUT"The Mist" (08.5.11)Stephen King原作、Frank Darabont監督の新作を観てきた。 KingとDarabontの組み合わせは、以前に"The Shawshank Redemption"と"The Green Mile"があり、どちらも高い評価を受けているのは知っている。しかし、両作品とも私は未見だ。評判を聞いていると、「涙の感動作」らしいのだが、私がStephen King原作映画に求めているのは、感動じゃなくて恐怖だ。そのため「感動した」という感想を見聞きするほど、依怙地になって、未見のままになっている。しかし、この"The Mist"は、恐怖を前面に押し出しているらしいので、観に行った次第。 映画は、かなり原作に忠実に進んでいく。謎の霧に囲まれたスーパーマーケット。霧の中には正体不明の怪物が潜んでいて、外に出た者は、無残に殺されていく。スーパーマーケット内に閉じ込められた人達は、やがて、極限状態に達し、狂気に走り出す。怪物の造形が見事だし、緊張感を持続させるカメラ・ワークが巧みだ。原作からのちょっとした改変も効果的に感じ、映画の終盤までは、これは大傑作だと思っていた。 しかし、問題はラスト。「原作と異なる衝撃のラスト」で、「Stephen Kingも大絶賛」、という宣伝文句は聞いていた。確かに、原作通りのラストにすると、娯楽映画にしてはいささか消化不良気味の幕切れになってしまいそうだし、単純なハッピーエンドもそぐわないとは思う。だからといって、この終わり方は無いだろう。観客に深刻な思索を強いるようなラストが偉い、と思っているのなら、King & Darabont組の映画は、やはり私には受け入れがたい物のようだ。 まぁ、小説家としてはともかく、私にとっての大傑作、Kubrick監督の"The Shining"を認めなかった時点で、Stephen Kingの映画観には、大いに疑問を抱いていたのだが… ブルーノートの前を流しているタクシー運転手には、やはりジャズ好きが多いのか。ジャズ・ミュージシャンの話題を振ってくる運転手に当たることが、これまでも何度かありました。今回も、熱心な語り口にいささか閉口しましたが、最後、料金をまけてくれたので、無問題。 |