IN/OUT (2007.5.6)

ゴールデンウィーク。山口に行ってきました。


in最近のIN

山口探訪07.04.30-07.05.02)

山口宇部空港からバスとJRを乗り継ぎ、夕刻、山口駅到着。県庁所在地の県庁最寄駅だが、非電化の山口線が走るだけの小さな駅で、駅前にも目立つビルのようなものは無い。ホテルにチェックイン後、小雨の中、周囲を歩いてみたが、本当に、こじんまりとした町だ。夕食に、どこか、山口らしい和食屋でも探そうと思っていたが、飲食店は山口駅周辺より隣駅の湯田温泉街まで行かないと、あまり数が無いようだ。結局、ホテル至近にインド料理店があり、無性に食べたくなってしまったので、旅情とは関係なくインド飯。店内に客は私だけだ。その後、同じビルの地下にあるバーに入ってみた。ここでも客は私だけ。従業員の一人は、先ほどまでインド料理屋でサリーを着て接客していた人だった。

名物の夏みかんを使ったオリジナル・カクテルを戴いたりしつつあれこれ話しているうちに、マスターが、夜10時までライトアップされている瑠璃光寺の五重塔を見せてくれるということになった。車で5分ほど。手前の池と周囲の森の黒の中、白く浮かび上がる五重塔は、まさに幽玄の趣。雨脚が結構強くなっていたが、それもまた雰囲気を増している。これだけで山口まで来た価値が充分にあると思わせる素晴らしさだ。

瑠璃光寺 五重塔翌朝、徒歩で再び瑠璃光寺へ向かう。雨は上がっている。周囲の緑の中にそびえる五重塔も美しいが、昨晩、モノクロームの世界で見たインパクトが、やはり勝っている。そこから、常栄寺雪舟庭へ移動。実際に雪舟が築造したかは定かではないらしいが、落ち着いた場所だ。常栄寺雪舟庭

山口サビエル記念聖堂山口サビエル記念聖堂てくてくと町を歩き、山口サビエル記念聖堂へ。山口は、時の領主、大内義隆が布教の許可を与えたことで、フランシスコ・ザビエル縁の地となっているそうだ。なお、この聖堂の名前は、「ザ」ではなく「サビエル」と濁らない。二本の塔と三角屋根。イタリア人のコンスタンチノ・ルッジェリ神父と建築家ルイジ・レオニ氏が担当したというデザインは、奇抜なようだが、カソリックの教えに沿ったものらしい。とはいえ、門外漢には、壁面に見えるステンド・グラスの眼など、某アニメの使徒を思い起こさせるような気が…。内部は、ザビエルの生涯に関する展示もあるが、観光スポットとしてだけでなく、宗教施設としてもちゃんと機能している荘厳さがある。

一休み後、タクシーで中原中也記念館へ。もともと、中也の詩は「サーカス」ぐらいしか知らなかったのだが、今回の山口訪問では、ここは外すことができないのである。決して大きくは無いが、展示内容は充実していて、とても良心的な記念館だと思う。道を挟んだ向かいには、期間限定の中也カフェもオープン。

山口情報芸術センター山口情報芸術センター さらに、そこから徒歩で、山口情報芸術センターに。開催中の、坂本龍一 + 高谷史郎 "LIFE - fluid, invisible, inaudible ..."を覗いてみる。真っ暗な会場内の天井に、9個の、縦横1m20cm、高さ30cmのアクリル水槽が吊るされ、各水槽の両脇にスピーカーがある。各水槽内に、超音波によって人工的な霧を生成・コントロールし、それをスクリーンとして、画像が天井から投射される。観客は、水槽の下を歩き回ったり、あるいは水槽の真下に寝転がって上を見たりして、流動する音と映像を体験するという趣向。コンテンツは、以前の坂本龍一氏のオペラ「LIFE」の素材を再構築したものが中心となっているそうだ。ノイズなのに心地よさを感じさせる音響はさすがだと思ったが、私は、この手の映像系の現代美術には疎く、それほど感銘は受けなかった。それよりも、山口という地方都市の芸術センターがこの企画を実現し、入場無料で公開していることに感心した。山口情報芸術センターは、これ以外にも、色々と充実した活動を行っているようだ。

サーカス小屋さて、その山口情報芸術センターの隣に建つ特設テントで開催されるのが、今回の山口訪問の目的、中也生誕百年記念事業の一つ「サーカス小屋でコンサート」である。開場前、テントの前では沢入マールイサーカス団とフランスから来たJulot氏のパフォーマンスが行われ、さらに開演後も、まずは沢入マールイサーカス団による曲芸が、ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん、と繰り広げられるという独特の雰囲気の中、矢野顕子さんと友部正人氏の演奏を堪能したのである。詳細は、別ページで。



山に囲まれた町並みの静かさと、山口情報芸術センターに代表される文化レベルの高さが共存する、居心地の良い町でした。