IN/OUT (2007.5.13)

映画「スパイダーマン」の最新作を観てきた。

前二作の場面を使った、いかにもシリーズ物らしいオープニングから、予定調和でありながら、さらなる続編を期待させるラストまで、良くできた映画だった。140分はちょっと長すぎるような気もするが、三人の敵キャラの背景と、MJとの恋模様、いつもながらのPeter Parkerの悩みまで、盛り沢山の内容を、手際よく詰め込んだ演出手腕に感心する。終盤のバトルも、前二作以上に漫画っぽく、熱く盛り上がる迫力で、コミックの実写化のお手本のような仕上がりだと思う。

ただ、宣伝にも相当な力が入っているし、米国でも大ヒットとなっているこの作品だが、漫画的ご都合主義が満載だし、描かれるドラマも決して底が深い訳じゃ無い。あくまでもアメ・コミの実写版。それ以上でも以下でも無い映画だ。そういうのを承知の上で観れば、Sam Raimiのオタク心を刺激しまくる演出が、実に爽快なのである。

ガイタ奏者、Carlos Nunezの公演を観に、NHKホールに行ってきた。ガイタは、スペイン・ガリシア地方のバグパイプ。ガリシアは、スペイン北西部の海に面し、ケルト文化が伝わる自治州である。

お目当ては、ゲスト出演の矢野顕子だが、彼らは10年前のThe Chieftainsの来日公演に、ともにゲストで出演している。私が初めて観たThe Chieftainsのコンサートだったが、会場全体が大いに盛り上がった印象的な演奏だった。今回も期待大ではあるが、ジブリ映画「ゲド戦記」のDVD発売記念ということで、Carlos氏が参加した映画音楽が中心に演奏されるらしい。映画未見の私には、一抹の不安もある。果たして、会場に集まっているのは、ケルト音楽ファンが多いのか、ジブリ・ファンが多いのか、はたまたゲスト目当ての人も多いのか？

Carlos氏の他に、パーカッション、ブズーキ（ギター状の弦楽器）、フィドルを加えた4人のバンドに、日本の金子飛鳥ストリングスとハープの西山まりえさん、さらに映画音楽を担当した寺嶋民哉氏も加わり、演奏が始まった。ステージ上にはスクリーンが設置され、ゲド戦記の映像が映される。途中、主題歌を歌った手島葵嬢も登場。綺麗な旋律の曲が続くのだが、これが心には響かない。正直、退屈である。しかし、4人のバンドだけで、映画音楽から離れた曲の演奏になると、一気にヒートアップする。いささか中途半端な感じで、第一部終了。

20分の休憩後、第二部開始。矢野さんも登場し、三曲を共演。客演のためか、あまり弾けないお行儀の良い演奏だったが、Carlos氏、及びバンドとの絡みは、中々良い感じだ。他流試合でこそ、ミュージシャンの実力が発揮されるものだと実感。矢野さん退場後も、バンドのテクニックを遺憾なく発揮するケルト・ミュージックで盛り上がってきたのだが、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーの挨拶の後、再び「ゲド戦記」絡みの曲になり、個人的には盛り下がってしまった…。客席の反応を見ていても、ジブリ・ファンより、ケルト音楽ファンが多かったような気がする。

アンコール一曲目で、再び矢野さんが登場。持ち歌を、デビューしたばかりの手島葵さんとのツイン・ヴォーカルで演奏したが、ベテランの実力と貫禄を見せつけたという感じである。さらに、ラストは、ケルト・ミュージックで会場全体ダンス大会へとなだれ込んで終了。

主催者には申し訳ないが、「ゲド戦記＝ジブリ＝日テレ」が関与しないコンサートで、この出演者だったら、もっともっと楽しかっただろうと思う。矢野ファン的にも中途半端な印象ではあったが、フィドル奏者のお姉さんが、擦弦楽器を弾きまくる女性（特に金髪）に宿命的に弱い私のスイートスポットをヒットしたので、それで元は取った、という気がする。