Isabel Coixet監督の映画を観てきた。邦題は「あなたになら言える秘密のこと」という甘ったるいものになっているが、決して軽い内容の作品ではない。
過去を隠し、心を閉ざした女性が、事故によって操業を停止している海底油田の採掘基地で怪我人の看護をすることになる。閉ざされた空間で、採掘基地に残る少数の登場人物達と彼女の物語が淡々と進んでいく。
ディテールを丁寧に積み重ねて行く演出は、終盤まで派手な盛り上がりが無いストーリーなのに、観る者の集中をそらさない。採掘基地で働く一人一人にドラマがありそうだが、それを過剰に見せつけるようなセンチメンタル方向に流れないところも上手いと思う。殺風景な場所のはずなのに、採掘基地がある種の楽園のように見えてくる映像も見事だが、何より、主演 Sarah Polleyの演技、閉ざした心がすこしだけ綻びていく表情が、素晴らしい。
終盤で明かされる真実は、先日観た"Shooting Dogs"にも繋がるものだが、世界中で何度も繰り返される集団狂気による蛮行は、決して昔のこと、遠い世界のこととして無関心でいてはいけないと思う。そういうテーマをはらんだ映画に、なんで、こういう馬鹿みたいな邦題を付けるかなぁ?
ラストは、あまりにも…、という気がしたのだが、後で考えてみると、このようなオチで寓話化したことは、監督の優しさなのかもしれない。