IN/OUT (2001.12.30)

今年もあと一日になりましたが、あまり年末という感じがしていません。例によって、季節を感じられない気候だし、元々、正月は旧暦で祝う方がメインだし。唯一、日系デパートの食品売り場の片隅にある「おせちコーナー」に年の瀬を感じる今日この頃です。


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"Vanilla Sky" (01.12.29)

今年のMy Favorite Movieの一つ、"Almost Famous"のCameron Crowe監督の新作。

Tom CruiseとPenélope Cruzの共演で話題になっているようだが、内容は、二人の組み合わせから予想されるようなロマンティックなものとは全く違う。後半になるに従い、現実と幻想の境界が曖昧になっていく展開は、David Lynch映画を分かりやすくしたような趣だ。ストーリー全体のネタは、Philip K. Dickの某長編と似ている。

いささか、Tom氏が熱演過ぎるような感じがするし、少々、だるい部分もあるのだが、冒頭のシーンとラストの鮮烈さが気に入った。ただ、Lynch監督のように観客を放り出すことをせず、きちんと説明を付けてしまうところが、良くも悪くも、Crowe監督は良心的だと思う。その分、ちょっとテンポが悪くなったように感じた。

ロック・マニアとして知られるCameron Crowe監督の趣味が溢れる小道具の使い方や、音楽が楽しい。この監督が一番凄いところは、妻がNancy Wilson(この映画でも音楽を担当)ってことかもしれない。



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"Chatterbox Coffeehouse" (01.12.30)

正月休みを利用して旅行中の友人がシンガポールに立ち寄ったので、レストランやフット・マッサージ屋などを案内していたのだが、昼食に希望されたのが「チキンライス」。これは、日本のケチャップご飯とは違い、鶏のスープで炊いたご飯に鶏肉を添えた、当地のローカル食である。彼らの宿泊先に近いこともあり、チキンライスで名高い、Chatterbox Coffeehouseに行ってみた。

ここはMandarin Singapore内にある有名な店なのだが、私自身、行くのは今回が初めてである。メニューを見ると、チキンライスの他にも、バクテーやナシゴレンなど、いわゆる「屋台メニュー」が目玉になっているようだ。ただし、フードコートで食べれば2ドルから高いところでも3.5ドルぐらいのチキンライスが、ここでは17ドル。要は、庶民的メニューを、丁寧に作り、きれいに盛りつけ、一流ホテル内のレストランで供する、というのがミソなのだ。地元の人、観光客も含め、行列が出来る盛況ぶりである。

食べてみると、確かに上品な味である。果たして、値段に見合うのかと言うと、人それぞれ感じ方は違うだろうが、おいしいのは間違いない。これなら、東南アジア初心者の観光客にも安心して勧められるだろう。ただ、気になったのが、店のコンセプトが中途半端なのだ。テーブルや椅子が、フードコートほどぼろくは無いものの、高級感も無い。何か、情けない安っぽさだ。ウェイターの接客態度もよろしくない。料理以外の部分が、何だか手抜きっぽいのである。もっと丁寧に全体の雰囲気を練り上げたなら、一流ホテルのレストランで屋台メニュー、というミス・マッチが際だって、印象深い店になると思うのだが。

もっとも、この辺の詰めの甘さがシンガポールらしいとも言えるわけで、これはこれで話の種になるのかもしれない。



観光地の乏しいシンガポールなので、たまにお客さんが来ても、いささか申し訳ないと思うことがあります。ディープな東南アジア・マニアにとっては、都市化が進み過ぎていて物足りないだろうし。まぁ、3年近く住んで、案内すべきスポットも分かってきたし、公共交通機関の発達のおかげで移動しやすいのが、にわかツアー・コンダクターにはありがたいっす。