"Singapore Musicfest 2000"の一環として開催された、日本人ジャズヴォーカリスト、小林 桂のコンサートを観てきた。会場は、NUS Cultural Centre。NUS = シンガポール国立大学内のコンサートホールだ。大学の施設と言っても、なかなか立派で、音響も良いところだった。
小林桂について事前知識は無く、知人の薦めで取ったチケットだったのだが、バックバンド(ウッドベース、ドラムス、トランペット、ピアノの4人編成)の演奏も含め、なかなかに高水準だったと思う。因みに、ピアニストは小林氏のお父さん。演奏されたのは、いわゆるスタンダード・ナンバーばかりだが、とても素直な解釈で、心地よかった。逆に言えば、個性があまり感じられないのだが、彼はまだ21歳。今後キャリアを積むにつれ、どのような個性を身につけていくのかが楽しみ、ということも言えるだろう。
ということで、音楽的な技量に関しては、ジャズに詳しくない私としては文句の付けようが無い。しかし、海外で単独コンサートを開くのに値する実力の持ち主かと言われると、少なくとも、エンターテインメントの面では、21歳という年齢を差し引いても、ちょっと無理があったと思う。ステージの進行も稚拙だし、途中、タップ・ダンスを披露するサービスも見せたものの、そのステップの切れは、ほんとに「サービス」の域を出ないものだった。
特に問題なのが、歌はすべて英語で歌っているのに、MCになると、とたんに英語が駄目になってしまうこと。これじゃ、説得力が無い。で、MCの際、通訳として登場したのが、実のお兄さん。4カ国語を操る語学の才を活かして、現在、台湾でジャーナリストをしているとのこと。そして、この発言
「僕は、これまで、韓国と台湾でコンサートを開きました。海外公演では、お父さんがピアノを弾き、お母さんがマネージメント。そして、お兄ちゃんが通訳で駆けつけてくれます。こうして家族四人一緒に仕事ができて、とても幸せです」
うーん。ご両親ともジャズ・ミュージシャンという音楽一家で素直に育ったのは分かるけど、ちょっと甘くないか? せめて、父、とか、兄、とか呼びなさい。