シンガポールを評して、Fine Countryという言い方があります。快適な国だという意味の他に、罰金(これも"Fine")ばかりの国という皮肉が込められています。
こういった事は、観光ガイドにもよく書かれている有名な話ですが、実際に、風紀委員みたいな警官が常に取り締まっているか、と言えば、全然そんなことはありません。国造りの初期、国民の習慣を強制的に変えることで早く一流国の仲間入りをしようと、随分と厳しい取り締まりをしていたのは事実のようです。逆に言えば、それだけ、道に唾を吐く人が多かった、ということなのでしょう。そのおかげか、取り締まりが緩くなったとはいえ、今でも、道に唾を吐いたり、タバコのポイ捨てをする人はあまり見かけません(まぁ、たまにお目にかかりますけどね)。
もちろん、国家が、そんなエチケット・レベルの事まで細かく規制するのはいかがなものか、という意見もあるでしょう。強力な指導力を持つ政府が隅々までコントロールする国には、変な方向に走りだしたときの怖さもあります。それでも、翻って日本の状況を思い出してみると、人々の自発的なモラルの向上に期待するのには限界があるからなぁ、と思ってしまいます。
- New Year Lunch (99.2.24)
- オフィスの新年昼食会が大きな中華料理屋で行われた。他のテーブルも、新年を祝うローカルの人で一杯である。
通常のコース料理に入る前に、新年ならではの前菜として出されるのがLucky Raw Fish。中国語では「ローヘイ」と言うように聞いたが、字は定かでない。
料理自体は、千切りの野菜の上に、刺身を並べ、そこにスパイスとたれをかけて食べるという中国風刺身サラダである。円卓の中央に大皿が運ばれ、店員がスパイスとたれをかけた後、全員で箸を使って混ぜるのだが、このとき高く持ち上げながら混ぜると、一年の運気上昇につながる、という趣向らしい。事前に、他の日本人から、「あれは不味い」と散々吹き込まれていたのだが、実際に食べてみると、それほどひどくは無い。たれが、蜂蜜のような甘さなので、刺身としてはやや違和感があるものの、どちらかと言えばおいしい、と言える程度の味である。イベント性を加味すれば、十分、納得できるんじゃないかな。
ここの中華料理屋には、ローカルの団体だけ無く、日本人の団体ツアー客や、修学旅行ご一行様も沢山来ていた。修学旅行生は、どうも、垢抜けしているとは言い難い校風のように見受けられ、いまだに制服のズボンをずり下げている(腰履きって言うんだっけ?)男子が多い。ローカルの同僚に「あれは何だ」と笑われてしまった。
- ご覧、パレードが行くよ (99.2.27)
- パレードが楽しいか、と言われると、これは難しいところである。基本的な問題は、それが「通り」で行われる、ということだ。もちろん、パレードの醍醐味というのは、普段見慣れている風景が、突然、祝祭空間に変わってしまうというところにあるのだろうから、これをスタジアム等で開催してしまっては意味が無いのは分かる。しかし、「通り」というのは、別に、歩道に集まった人達が車道を見物する、という設計にはなっていない訳で、見やすく疲れない場所を確保するのは非常に難しい。しかも、肝心の出し物も、しょぼいフロートやダンスばかりでガッカリすることが多い。それでも、「この次は面白いのが通るかも」、「あと一つだけ」と、ついつい粘ってしまい、結局、足を棒にして帰途につく、というパターンになりがちである。と、ここまでは、ポートランドでの経験。
さて、前置きが長くなったが、シンガポールで一番賑やかな通り、Orchard RoadでChingay Paradeと銘打たれたパレードが行われていた。チンゲイと言っても珍芸の事では無い(と思う)。Lunar New Yearを締めくくる催し物のようだ。
出だしの30分ほど眺めて、あまりパッとしないようなので、近くのビルの地下で食事をしたのだが、再び通りに出てみたら、なんだか、凄い人手で大変なことになっていた。この時点でようやく気付いたのだが、通りの数カ所に、観覧席やPA・照明の足場が組まれていて、そこでは、派手な音楽と賑やかな踊りが繰り広げられている。しかし、その一部の区域だけに重点が置かれているので、途中の区間は、手を振って通り過ぎるだけ、と随分な落差になってしまっているのだ。まだ空いていた早い時間に、飯なんか食わずに、観覧席近くに陣取っておけば、様々な民族衣装有り、テクノの大音響で踊る中華獅子舞有り、西洋風ロケンロール有り、の、予想以上に派手で楽しそうなパレードを満喫できたはずである。
どこか良い観覧ポイントは無いものか、と歩き回っても、時、既に遅く、結局、足を棒にして帰途につく、ということになってしまった。
- 荷物到着 (99.2.22)
- ポートランドから送った船便が入港したとの連絡が、運送業者から入った。通関に必要なパスポートとEmployment Passのコピーを送る。
- アパート契約 (99.2.26)
- アパートを決定し、契約を済ませた。引き渡しは3月8日。
ここ数年、オフィスの日本人スタッフは前任者のアパートをそのまま引き継ぐというパターンが続いていたらしい。私の場合は、前任者とオーバーラップする期間が長いため、久々の新規アパート開拓、ということになったようで、庶務の女性が随分と張り切ってくれたみたいだ.....幸か不幸か。
確かに、
という、私の要望は全て満たしてくれたのだが、そこにさらに
- MRTの駅に近く
- 買い物に便利で
- 綺麗な物件
という条件が加えられてしまった。他のスタッフが、もっと街の中心部の方が良いのでは、と助言してくれても、結局、案内されるのは東の端か西の端。その中で、比較的気に入った物件があっても、「高いから止めましょう」......。どうも彼女は、いかに安く、自分自身が住んでみたい所を選べるか、を目標に部屋選びに臨んでいたような気がする。結果、日本人スタッフ中、最低家賃と最遠距離通勤の二冠を達成する羽目になってしまった。もちろん、日本の住環境に比べれば圧倒的に恵まれているので、彼女が案内してくれた中で、第三希望の所になってしまったとはいえ、大きな不満は無いのだが。
- 家賃の安いところ(何故か、社内で承認されていた予算枠より1000ドル低い水準を彼女は死守していた...)
部屋が決まるや否や、彼女は、オーナーに要求する家具リストを作成。この辺も、自分が楽しんでいるようにしか見えない.....。いや、ありがたいんだけどね。ソファ、ダイニングセット、マスター・ベッド、ゲスト用ベッド、テレビ、ビデオ、電子レンジ、洗濯機、掃除機等を揃えてくれることになった。中国人オーナーが室内装飾についてどのような趣味をしているのか、出たとこ勝負というのが怖いところではある。
電気、ガス、水道(この三つはPUBという公益法人が一括して取り扱っている)、電話の申し込みは全てオーナーが代行してくれた。
この国は、エチケット面での規制だけでなく、雑誌やビデオの検閲というのも厳しいそうです。日本の週刊誌は、紀伊国屋や丸善に並んでいますが、ヌード系のページは全て切り取られているとのこと。まぁ、一般週刊誌にああいうページがあることの方が恥ずかしい、という気もしますが。輸入ビデオでも、検閲されて、いかがわしいシーンは消去されてしまうことがあるそうです。
テレビでBasic Instinct(氷の微笑)を放映していたんだけど、そういうシーンはきっちり削除されていました。でも、あれは、削除されたシーンがあってこそ、の映画で、そういうところをカットしちゃうと、気の抜けた犯罪映画にしかならないんですよね。そういう意味では、引っ越し荷物に入っているDavid CronenbergのCrashの事が心配な今日この頃です。
前のIn/Out | 次のIn/Out |
In/Out一覧 | |
Index of JK-ism |