IN/OUT (2024.7.7)

某定食屋で、冷や汁が付いた定食を頼んだのですが、サバの塩焼き、冷たい味噌汁、ご飯が、それぞれ別に盛られている。自分でサバをほぐせ、ということのようです…。期待していたのとは全然違う。農林水産省 お墨付きのレシピに準拠していただきたかったと思う、今日この頃です。


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「大西順子トリオ with JOHN PATITUCCI & ERIC HARLAND」@ブルーノート東京24.7.2

ブルーノート東京大西順子トリオの公演を観に、ブルーノート東京に行ってきた。

今回のトリオは、John Patitucci(Bass)とEric Harland(Drums)という布陣。先日の「村上JAM vol.3 ~熱く優しい、フュージョンナイト~」のリズム隊だ。村上JAMのミュージック・チャージが高価だったので、大西順子トリオの公演はパスしようと思っていたのだが、そこで聴いた彼らのプレイにとんでもない衝撃を受けてしまい、いてもたってもいられなくなり、公演前日に駆け込みでチケット取得。

ステージ向かって左にピアノ。中央にベース。右にドラムス。直前でチケットを取ったので、私はやや後方の席だが、全体が俯瞰できる(というか、ホール公演に比べれば、ステージまでの距離は圧倒的に近い訳だが)。

演奏開始。リズム隊が静謐な雰囲気かつ複雑な土台を築き、その上を大西順子の選び抜いた音のピアノが舞う。村上JAMのご陽気フュージョンとは全く違う演奏だ。因みに、John Patitucciは、6弦ベースではなく、ウッドベースをプレイ。これだけ複雑に構築されているのに、3人は特にアイ・コンタクトを交わす訳でも無く、すごい集中力で演奏していく。それでいて、タイミングがバッチリ合うのが気持ち良い。

今回のセットリストの白眉は、3曲目 ”Woman from Rajasthan”。作者である大西順子自身が「複雑な曲」と言っていたが、確かに難しい。分かり易さと取っつきやすさはゼロ。それなのに、3人が繰り出す音が、異様な迫力で迫ってくる。何なんだ、このカッコ良さは! もっとも、ご本人は、まだまだ納得していないようで、演奏後、「明日は、もっと良くなるはず」とのこと(2日間 4ステージの内、私が参戦したのは 初日の2nd)。

4曲目は、大西順子の別プロジェクト、セクステットのトランペッター 広瀬未来の作品「Remembering Spring」。本編最後は「Wind Rose」。そして、アンコールは、John Patitucciの作品「Samba Sachi」(サチさんは、ご夫人のお名前)。もちろん、このトリオだから、一筋縄では行かないサンバだ。これで、全編終了。

Eric Harlandの他に類を見ない複雑なドラムス。流れるようなJohn Patitucciのベース。そして、ストイックな探求者という雰囲気の大西順子のピアノ。とにかくスリリングで、ジワジワとカッコ良いトリオだ。チケットを取って大正解だった。


「大貫妙子コンサート『ピーターと仲間たち 2024』」@恵比寿ガーデンホール24.7.3

恵比寿ガーデンホール大貫妙子のコンサートを観に、恵比寿ガーデンホールに行ってきた。

バック・バンドは、
・フェビアン・レザ・パネ(Piano
・鈴木 正人(Bass
・坂田 学(Drums
・伏見 蛍(Guitar
・網守 将平(Keyboards
・toshi808(Sequencer

最近は、しっとりしたアコースティックのイメージが強い大貫妙子のコンサートだが、今回は、このメンバーから想像が付く通り、彼女の幅広いレパートリーの中で「ポップな曲」を集め、シンセサイザーやシークェンサーを駆使して演奏するという趣向。因みに、今年、フジロックに初参加する大貫妙子。中身はロックな人なのである。

開演。バンド・メンバーが先に登場し、「カイエ(II)」を奏で。大貫妙子登場。そして、
・ LULU
・ ピーターラビットとわたし
・ テディ・ベア
と、冒頭から私の好きな曲が続く。何よりも嬉しいのが、そのサウンドだ。大貫妙子のポップな作品とくれば、その多くが坂本龍一のアレンジ。それを、見事に再現しているのだ。特に、教授がこだわった「音色」が、そのままに蘇っているのが嬉しい。オリジナル・マルチトラックからのサウンドも一部、そのまま使っているそうだ。

その後も
・ ぼくの叔父さん
・ 朝のパレット
・ Volcano
・ 幻惑
・ PATIO〈中庭〉
・ Rain
・ Mon doux Soleil
・ Happy-go-Lucky
・ ふたりの星をさがそう
と、見事なパフォーマンスが続く。合間のMCは、例によって、歌唱の声とは全然違う印象の、ぶっきらぼうとすら思える口調なのが面白い。「Rain」が、映画”Blade Runner”から着想したという話は、意外だった。

そして、私が偏愛しながらも、ライヴで聴くチャンスは無いだろうなと思っていた
・ CARNAVAL
これは、嬉しい!この曲が収録されたアルバム「ROMANTIQUE」が発表されたのは1980年。まさに、YMO期の教授らしいアレンジを、このライヴで見事に再現!!感涙である。演奏終盤には、一人ずつ、ソロを披露する形式のメンバー紹介を回し、網守将平のシンセ・ソロでカット・アウト。つくづく、カッコ良いパフォーマンスだった。本当に良いものを見せていただいた(因みに、網守将平は、藝大院卒で、まさに教授の後継者。最近の大貫妙子作品の多くをアレンジしている)。

本編ラストは、
・ 宇宙(コスモス)みつけた
・ 色彩都市
特に、「色彩都市」(1982年発売「Cliché」収録)は、大貫妙子&坂本龍一コンビの、一つの到達点のような完成度だと思っている作品だが、これもまた素晴らしい再現度だ。

アンコール。
・ ベジタブル
・ 地下鉄のザジ
これで全編終了。

私は、大貫妙子のポップな曲も大好きなので、とても充実したライヴ体験だった。そして、特に1980年代の彼女の作品は、自分の中にしっかり染みついているなぁと実感。最後の「地下鉄のザジ」なんて、ポップでキュートな歌なのに、なんだか涙が出てきてしまった。


「ブランクーシ 本質を象る(かたどる)」@ アーティゾン美術館24.7.6

アーティゾン美術館ルーマニア出身の20世紀を代表する彫刻家、Constantin Brâncuşiの、本邦初の大規模な展覧会を観に、アーティゾン美術館に行ってきた。

アーティゾン美術館正直、Brâncuşiの名前は分かっていなかったのだが、「The Kiss(接吻)」の画像は見たことがある。有名な美術品の「あるある」だが、この作品、高さ28cm。非常に小さいことに驚いた。

アーティゾン美術館「接吻」は、1907年~1910年の、彼のキャリアでは初期の作品。彼が本領を発揮するのは、抽象彫刻だ。「The Muse(ミューズ)」など、磨かれたブロンズで作られた作品が特徴的。周囲が映り込むのも計算されているのだろうか。ちょっと、寺沢武一風味も感じてしまう。

アーティゾン美術館そして、代表作、「The Cock(雄鶏)- 青バックの方」と「Bird in Space(空間の鳥)- 赤バックの方」は、やはり存在感がある。

それ以外にも、彼のアトリエを再現した空間(天窓から降り注ぐ太陽の光も、リアルタイムの時間と同期して変化するLED照明で再現)や、彫刻以外の絵画や写真作品も展示されている。さらに、交流があったイサム・ノグチらの作品も並んでいる。

アーティゾン美術館ただ、素人的には、もう少し、解説を充実させてもらいたかったという気がする。また、この美術館の3フロアある展示室の内、この展覧会は1フロアのみ使用。ちょっと物足りない感じがしたのも残念。あとの2フロアで開催している「石橋財団コレクション選」にも彫刻作品が多数だったが、二つの展示を組み合わせた見せ方なり解説があればなぁ。



変なアレンジをせず、無印良品のレトルトパックを、そのまま使ってくれても良いのに……。これは、レベルが高いと思うのですよ。この酷暑の時期、出番多し。